家庭だからできるキャリア教育【前編】スタートラインは保護者から

キャリア教育というと、学校で行う職場体験や仕事調べをイメージしがちです。しかし、子育ての中にこそ、キャリア教育はあるのです。今回は家庭だからこそできるキャリア教育について、法政大学の宮城まり子教授に伺いました。



家庭だからできるキャリア教育【前編】スタートラインは保護者から


キャリア教育のゴールは「仕事につく」ことではありません

従来のキャリア教育は、職業観や勤労観を教えることでした。ところが、現在は社会情勢の変化などに伴い、自分らしい学び方・働き方・生き方を考え、その人の「一生」をどうデザインするかという意味で使われるようになっています。つまり、「どう働くか」から「一度しかない人生(ライフ)をどう生きるか」を考えることに、キャリア教育の定義がシフトしているのです。
とはいうものの、保護者のかたはまだ従来のキャリア教育観をお持ちのかたが多く、お子さんが「仕事につくこと(就職)」がキャリア教育のゴールだと考えがちです。しかし実際には、就職はお子さんの社会人人生のスタートラインでしかありません。ここでは、お子さんが働くことに夢を持ち、生きることに楽しさを感じる、そんなキャリア教育の在り方について述べたいと思います。



大学生になるまでキャリアの話をする親子は少ない!?

わたしは、主に大学2年生を対象にした生涯発達心理学の講義で、中年期の心理を扱っています。その一環で、学生に保護者インタビューをしてもらっているのですが、そのレポートが非常に興味深いのです。
ある学生は「自分が子どものころ、父は土曜日の日中、ほとんど家にいなかった。パチンコでもしていたのだろうとずっと思っていたが、今回話を聞いたところ、当時の父は、土曜日は仕事に関する勉強や調べ物をする時間にしていて、図書館にこもっていたとのこと。そんな父を改めて尊敬するとともに、いかに自分が父の仕事のことを何も知らなかったかを実感した」と書いていました。ほかにも多くの学生が「今回のインタビューで、親がどのように仕事と向き合ってきたかを初めて知った」というレポートを提出しています。
ここからわかることは、日本の親子は子どものころはもちろんのこと、大人になっても、キャリアについてほとんど語り合わないということです。これでは、働くことに夢を持つことはおろか、職業観を養うこともできません。
保護者は、子どもにとって最も身近な社会人のモデル。働くことの喜びや大変さ、仕事を続けることの意味、働くまでにつけておきたい力などは、お子さんが小さいうちから積極的に語ることをおすすめします。



保護者が「働く喜び」を語ることからスタートしよう

保護者のかたは、「今日、こんな人に会って楽しかった」「みんなで打ち合わせしていたら、こんな発見があった」「上司にほめられちゃった」など、仕事を通して感じた喜びや楽しさを語ってください。今は仕事をされていないかたも、以前の仕事の体験談や、これからやってみたい仕事についてなど、語れることはたくさんあります。こういった会話から、お子さんも「働くって楽しいことなんだ」と感じ、「自分はどんな仕事につけば、親のような喜びを感じられるのだろう」「そのためにはどんな勉強をすればよいのだろう」と、自然と考えるようになります。

もちろん、働くことは楽しいことばかりではありません。だからといって、仕事の愚痴や同僚の批判など、ネガティブなことを語るのはやめましょう。また、「ニートになんかならないでよ」のように、保護者の不安を言うのもよくありません。このような保護者の心情は子どもにすぐ伝わり、働くことはつまらないと、自分の将来を否定的にとらえるようになってしまいます。
保護者の「働くって楽しいよ」というスタンスは、結果として「生きるって楽しいこと」というメッセージにつながります。これは、お子さんがその子らしい人生を送るきっかけとなる、大切なメッセージにもつながっていますので、ぜひ気を付けていただきたいと思います。

次回は家庭で培うことのできるキャリア教育において、社会から求められる「社会人基礎力」について伺います。


プロフィール

宮城まり子

宮城まり子

法政大学キャリアデザイン学部教授。慶応義塾大学文学部心理学科卒。早稲田大学大学院心理学専攻修士課程修了。臨床心理士として東邦医科大学病院、聖母病院などで臨床活動に従事。2008年より現職。主な著書に『キャリアカウンセリング』(駿河台出版社)などがある。

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