心身のバランスを良くして入園、入学を迎えよう

前回、「身体と脳のバランスのとれた成長のために、幼年期に身体の左右両方を使うことが良い」という話をしました。人と違うことを好まない文化が根強かった日本では、親が、左利きの子を右利きに矯正してきた歴史があり、欧米に比べて左利きが少ないと言われています。実際に、欧米では左利き用の道具などを日本よりはるかに多く見ることができます。どちらかというと、日本は「個」の主張を抑えて、「全体」に合わせるという考え方が主流でしたが、近年特に、個性が重要視されているスポーツの世界で、左右両方を使うことが大きなメリットであるという認識が定着してきています。

たとえば、野球では左打ちだと多数の右投げ投手のボールの投げる位置が見やすいことと、左打席の方が1塁ベースに近いことから、左打席での打撃練習をする右利きの選手が増えています。イチロー選手が、右利きですが左打ち、というのは誰でも知っていることと思います。またサッカーの世界でも、左右両足を使えることが、どのポジションもできて、どんな体勢でも、どんなタイミングでもボールが蹴(け)れるということから、近年では、幼年期から左右両足で蹴る指導をしています。小野伸二選手は、左右の足でまったく同じようにボールを扱えますし、ワールドカップで活躍した本田圭佑選手は、右利きですが、世界有数の左足シュートで有名です。
このように、左右両方を使えることは、身体と脳のバランス良い成長につながるだけでなく、お子さんが入園入学後スポーツをするうえでも、非常にメリットがあるということが言えるのです。


身体の左右両方をバランスよく使うことは、子どもの今後に大きなメリットが!

ここまで左右両方を使うメリットについて触れてきましたが、「そうは言っても、なかなかうまくいかない」「実際どうやってやればいいのか、よくわからない」という方々に、簡単なドリルを紹介したいと思います。
ここで大切なことは、保護者のかたがお子さんと一緒にやるということです。最近よくファミリーレストランなどで、食事中、子どもにゲームをやらせている家族を見かけます。実際「ゲームをやらせておけば子どもはおとなしくしているから」という声を聞いたこともあります。こんな光景を見ると「このお母さん達は、家で子どもと一緒に遊んだり、運動したりしているんだろうか?」と心配になってしまいます。
幼年期の子ども達に大切なのは、スキンシップです。ぜひお子さんのために時間を作ってあげてほしいと思います。

簡単ドリル(1)左右の交互ジャンケン

さて、左右両方を使うための簡単ドリルですが、まずは「左右の交互ジャンケン」です。右手と左手で交互に5回ずつ、合計10回ジャンケンしてください。そして、右手と左手それぞれで何回ずつ勝って、かつ左右合わせて合計で何回勝ったかを競うのです。保護者のかたが右手の合計では勝ったけれども、左手の合計ではお子さんが勝った、というように、2つの尺度で勝ち数を競うことで、単純に右手だけでやるより、ゲーム的要素を高めて楽しくやることができます。最初のうちは、左右交互にゆっくりと、慣れてきたら交互にジャンケンするスピードを速くすると、より器用さと脳の活性化につながります。

簡単ドリル(2)両手ジャンケン

これに慣れてきたら、次は「同時に両手ジャンケン」。ジャンケンポン、で左右同時にジャンケンをします。右は勝ったけど、左は負け、というようにこれも10回やって左右と合計の勝ち数を競います。たとえば、左手があいこになったら、右手はそのままで左手だけでもう一度ジャンケンする、というようにバリエーションをつけてください。「同時に両手ジャンケン」は、ちょっと難しいですが、さらに器用さと脳の活性化をはかることができます。

簡単ドリル(3)左手であっち向いてホイ!

もうひとつ、「左手であっち向いてホイ」もよいでしょう。もちろん、利き手ではないほうの手だけでやるのもよいですし、交互ジャンケンのように利き手と交互にやるのもOKです。

その他、最近はすたれてしまっていますが、メンコやビー玉を左手でやることも、器用さを伸ばすうえで効果的です。メンコやビー玉が身近にないという場合は、「ボール投げボウリング」「ボール蹴りボウリング」をやってみてください。1メートルくらい離れたところにペットボトルを置きます。このペットボトルをボウリングのピンに見立てて、ゴムボールを左手で投げて、ペットボトルを倒してください。同様にゴムボールを左足で蹴ってペットボトルを倒すのが「ボール蹴りボウリング」です。ペットボトルの数はいくつでもOKです。倒した数を競い合ってください。

以上、いくつか両手と両脚を使うドリルをご紹介しました。この他にも、左手だけ使ってトランプをするなど、工夫しだいでいろいろなバリエーションがありますので、日常生活の中でいろいろ見つけてください。続けるコツは、数を競うなどゲーム感覚でやってみることです。ぜひ、お子さんと一緒に楽しみながらトライしてください。


プロフィール


深代千之

東京大学大学院 総合文化研究科 教授。(社)日本体育学会理事、日本バイオメカニクス学会理事長、日本陸上競技連盟元科学委員。文部科学省の冊子や保健体育教科書の作成にも関わる。*主な著書:「運動会で1番になる方法」「運脳神経のつくり方」など

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