宿題や通信教材の間違いを直さない[教えて!親野先生]

【質問】

 

うちの小僧さんは、宿題や通信教材は「やればいいんでしょ」という感じで、とてもいい加減です。当然、間違いがあっても平気です。「直しなさい」と言っても素直に直さないので、どうしても叱ってしまいます。さんざん叱られてやっと直すのですが、それならはじめから素直に直せばいいのに、と思います。どうしたら、素直に直すようになるのでしょう? (スイスイママ さん:小3男子)


宿題や通信教材の間違いを直さない[教えて!親野先生]

親野先生からのアドバイス

スイスイママさん、拝読いたしました。

この年代の子どもでは、これが極めて普通の姿です。特に、男子はこれが当たり前です。遊びたい盛りであり、自分がやりたいことをやりたいという気持ちでいっぱいなのです。それが後伸びのエネルギーでもあるのです。
ちっともおもしろくない宿題や通信教材は、ただめんどうなだけでやる気になどなれるはずがないのです。進んで宿題や通信教材をがんばる子は、圧倒的に少数派です。

そして、さらに、間違いを直すというのは、大人が思っている以上に子どもにとってはたいへんなことなのです。
本人としては、「もうやった」という気持ちでホッとしている状態で、「さあ、やっと好きなことができる。のんびりできる」と思っているところへ、親がまたぞろめんどうを持ち出すのです。場合によっては、最初に宿題に取りかかるとき以上に精神的な負担が大きいとさえ言えます。
また、もともと、難しくてよくわからなかったり面倒な計算だったりするから間違えるのです。そういう問題をもう一度やるのは、かなりの苦痛なのです。
これらのことを、頭に入れておいてください。

まずは、子どもの立場に立って、その心の内を想像してみることが大切です。これは何ごとにおいても言えることです。それが相手に「思い」をやること、つまり「思いやり」です。
そのうえで、何ができるか具体的な工夫を考えていきましょう。相手を理解しないままの対応では、親だけが空回りすることになります。

先ほど書いたように、子どもは「もうやった」ということでホッとしています。つまり、スイッチがオフになっているのです。パソコンで言えばシャットダウンした状態です。また立ち上げて作業するというのは、かなりのエネルギーを必要とすることです。ですから、シャットダウンする前のメモリーが残っている状態で直させるのが得策です。
つまり、できるだけ早くマルつけをして、できるだけ早く直させるのです。そうすれば、また最初から立ち上げて作業を始めるという余分なエネルギーと時間が要りません。

これは、心理学用語で即時確認の原理と言います。やった直後にマルつけをしてもらって(または自分でマルつけをして)、マルがつくとうれしいものです。やってから時間が経てば経つほど、そのうれしさは少なくなっていきます。
直後なら、たとえ間違えたところがあっても、まだメモリーが残っているので再チャレンジしやすいのです。問題の意味をつかんだり解いたりするにも、ゼロからではなくある程度の理解はできています。この状態でもう一度やれば、ちょっとした勘違いに気付いてすぐ直せることもよくあることです。

もちろん、親の仕事や家庭の事情などで、このようにいかない場合も多いと思います。
そのときは、「できるだけ」ということでやってみてください。

さて、それと同時に大切なのは子どもをほめることです。子どもが宿題や通信教材をやったら、「まずほめる」「取り敢えずほめる」ということを徹底してください。
多くの親たちはこの反対で、子どものやったものを見て「まず小言」「まず叱る」「取り敢えず叱る」ということをやっています。「なに、この字は! もっとしっかり書きなさい」「もっとしっかり計算しなきゃダメでしょ」という具合です。そして、「ほら、ここ間違ってるでしょ。やり直しなさい」とやってしまいます。
でも、これでは、子どもが素直にやる気になるはずがありません。
しかも、これが続くと、子どもの中で「宿題や通信教材をやったあとは叱られる」という認識ができあがってしまいます。
こうなると、宿題や通信教材へのマイナスイメージがさらに強くなります。
そして、ますます取り掛かりに時間がかかるようになり、ますますいい加減にやるようになります。
そして、親はますます叱ることになります。

この悪循環を断ち切る方法は、ただ一つです。
それは、「まずほめる」「取り敢えずほめる」ということです。

「子どもがしっかりやれるようになったらほめよう」と思っていると、永久にほめられません。そして、永久に悪循環から抜け出せません。
悪循環から抜け出すには、まずほめることから始めるほかないのです。
「できたらほめる」のではなく、「ほめたらできる」という発想にするのです。
まず、宿題や通信教材をやったこと自体をほめてください。次に、「ほめることを見つけ出そう」という意識で見るようにしてください。その意識さえあれば、必ずほめるところを見つけ出すことができます。
全体的にはお粗末でも、部分に注目すればほめられます。たとえば、「この『春』という字が上手だね」「会話が生き生き書けたね」「ちゃんと繰り上がりを書いてるのがいいね」「問題番号をきちんと書けたね」などなどです。

もう一度言いますが、ほめようという意識さえあれば、どんなものでも必ずほめるところを見つけることができます。

また、マルつけをするときは、マルつけでほめるという気持ちを持ってください。
そして、マルはできるだけ華やかにつけてあげてください。赤いボールペンでつけたマルはさみしくて味気ないものです。もっと太く書けて色が鮮やかな筆記具で、もっときれいに華やかにマルをつけてあげてください。一重マルでなく、三重マルや花マルをたくさんつけてあげてください。
間違えたところは、控えめなバツか小さなレ点にします。バツが目立つと子どものやる気が削がれます。家でやる場合は、テストではないのでバツやレ点がなくてもいいのです。「ここが惜しい」などと口で言えばいいのですから。

とにかく、マルつけのあとで全体を見たときの印象が大事です。華やかなマルが目立って、うれしくなる感じがいいのです。同じように10問中7つマルで3つバツだったとしても、マルつけのやり方によって、受ける印象はまったく違ってきます。
「マルがいっぱいだ。ぼく、なかなかできるじゃん。うれしいな」と感じられるようにしてあげてください。それが、次のやる気につながります。

このように、「まずほめる」「取り敢えずほめる」「マルつけでほめる」を実行してください。直させたいところがあるときは、そのあとで、直させるようにしてください。そうすれば、子どもは素直に直します。
うれしい気持ちでいるので、素直になれるのです。親に認めてもらえたという気持ちでいるので、素直になれるのです。
そして、こういうことを続けていると、勉強をやるときの取り掛かりが早くなりますし、丁寧にやるようにもなります。ですから、直し自体も減ってきます。

また、子どもに直させるときは、次のように言い方を工夫するのもいいでしょう。
「惜しい、惜しいなあ、すごーく惜しい! あと2つで満点だったのにね」(心から残念がってあげましょう)
「さあ、リベンジテストでこのステージクリアしよう。1こ50点として2こで100点満点」(ゲーム的にするのもおすすめです)
「惜しい、1つ難しかったね。これ難しいから1問で100点満点」(そして、正解したら「100点満点」と書いてあげます)
このように、子どもが乗ってくるような言い方を工夫してください。
また、たくさん間違いがあるときは、全部やり直すことにこだわりすぎなくてもいいでしょう。もちろん、間違いの質や子どもの実情にもよりますが。
ぜひとも自分でやり直させたいものはやらせるにしても、残りは答えを写すとか親が薄く書いたものをなぞらせるという方法があってもいいのです。写したりなぞったりするのも勉強のうちですから。

また、間違いを減らすためには、子どもが勉強を始める前にひと声かけると効果的です。やったあとでいろいろ言うよりも、やる前に言って予防するほうが良いわけです。
たとえば、次のように言います。
「昨日はすごーく惜しくて、ちょっとした計算ミスで1つ間違えちゃったね。今日は落ち着いてやろうね」
「満点連続が3日続いたね。今日は新記録できるかな?」
「1問ミスが2日続いたね。今日は1問の壁を乗り越えられるかな?」
また、「今日学校でやった漢字テストいい点だったね。おめでとう。がんばってるね」と別のことをほめてから、「算数の宿題も、この調子この調子」と言ってあげるのもいいでしょう。

ところで、先に書いた「即時確認の原理」のほうは、家庭の事情で思うに任せない場合もあるかもしれません。でも、今書いた「ほめる」のほうは、意識さえしていれば必ずできます。これに徹すれば大丈夫です。必ずいい方向に進みます。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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