子どもに軽く見られているようです。できたら尊敬されたいのですが……。【前編】[教えて!親野先生]

【質問】

 

自分は、どうも子どもに軽く見られているような気がしています。子どもの口の利き方や態度から、それが感じられます。そういう時、私も頭に来てつい厳しく言ってしまうのですが、それがいけないのでしょうか。小さい時から、マナーや言葉づかいや挨拶(あいさつ)などのしつけだけは厳しくしてきたつもりです。親に対する口の利き方もしつけてきたつもりです。それが、なぜこうなるのかわかりません。できたら、子どもに尊敬されたいものです。それが無理でも、せめて親としての地位(立場)を維持したいと思います。何か良い方法はないでしょうか? (チャンス さん)


子どもに軽く見られているようです。できたら尊敬されたいのですが……。【前編】[教えて!親野先生]

親野先生からのアドバイス

チャンスさん、拝読いたしました。

親ならば、誰でも、「子どもに軽く見られたくない。できたら尊敬されたい」という気持ちを持っていると思います。
程度の差こそあれ、そういう気持ちがまったくない人はいないはずです。

ところで、気になるのが「小さい時からしつけだけは厳しくしてきた」というところです。
わざわざこのように書いているくらいですから、しつけについてはかなり言ってきたのだと察せられます。

私の経験ですと、親がこのように言う時は、小さいころからかなり叱ることが多かったというケースがほとんどです。
親の中で、「しっかりしつけたい。マナーを守らせたい。人に後ろ指を指されない子にしたい。どこに出しても恥ずかしくない子にしたい。わがままな子にしたくない」などのしつけ優先主義的な気持ちが強いと、どうしても叱ることが増えてしまうのです。

たとえば、次のようになりがちです。

ことあるごとに、「ちゃんと挨拶しなきゃダメでしょ」「ちゃんと挨拶できないと、恥ずかしいよ」「なんでしっかり返事ができないの!」「その言い方はなんですか!」「先にやるべき事をやらなきゃダメでしょ」「行儀よく食べないと食べさせませんよ」「何度言ったら、靴をそろえるの!」というような否定的な言い方で叱ることが増えてしまいます。

子どもが担任の先生について愚痴を言った時は、「そんなこと言うものじゃありません。先生はあなたのために言っているんだから」と正論で答えてしまいます。
というのも、「先生の悪口を言うのは良くないことだ。それもしっかりしつけたい」という意識が強いからです。
子どもが愚痴を言いたい気持ちをわかってあげようとか、子どもの気持ちに共感しようという発想はありません。

子どもが習い事をやめたいと言った時は、「ダメダメ、始めたことはやりとおさなきゃダメでしょ。もう少しがんばって続けなさい」と門前払いと命令で答えてしまいます。
「子どもがなぜやめたいと言うのか、わかってあげよう」などという発想はありません。

子どもが「○○が欲しい」「○○がしたい」と言った時も、話をろくに聞かずに「ダメ」と答えてしまいます。
「わがままにしたくない」「がまんできるようにしつけたい」という気持ちが強いからです。

このように、しつけ優先主義は、正論型・門前払い型・命令型・ダメダメ型の対応になってしまうことが多いのです。

もちろん、私は、しつけやマナーをしなくていいと言っているわけではありません。
でも、それよりも、まず優先するべきことがあります。
それは、子どもが親の愛情を実感できるようにしてあげることです。
そして、それは、子どもが「親に自分のことをわかってもらえている」「親に自分のことを受け入れてもらえている」と感じられるようにしてあげることで初めて可能になるのです。
つまり、親が子どもの立場に立って「思いやる」ことで、初めて可能になるのです。

でも、しつけやマナーを最優先にして否定的な言い方で叱ることが増えると、子どもは「自分は、もしかしたら親に受け入れてもらえていないのではないか」「自分のことはわかってもらえていない」「自分は愛されていないのではないか」と感じるようになってしまうのです。
そして、子どもの気持ちがだんだん親から離れていきます。
つまり、親に対する不信感を持つようになってしまうのです。
いろいろなことを親に正直に話さなくなったり、親の言うことを素直に聞かなくなったりということになります。
親がやれということはやらなくなり、やるなということはやるようになります。
危険なことをあえてやったり、やってはいけないとわかっていることに手を出したりもします。

もちろん、その不信感は親に対する言葉や態度にも表れます。
それは、尊敬とは正反対のものです。不信感があるところに、尊敬など表れるはずがありません。
子どもに力がついてくるほどに、それははっきりしてきます。

このようなしつけ優先主義はやめて、まずは子どもが親の愛情を実感できるようにしてあげることが一番大切です。
それは、子どもが「親に自分のことをわかってもらえている」「親に自分のことを受け入れてもらえている」と感じられるようにしてあげることです。
つまり、親の「思いやり」を感じられるようにしてあげることです。

そのためのキーワードは、1.「共感」と2.「自己翻訳」と3.「ほめる」です。

1.
子どもが先生の愚痴を言った時、習い事をやめたいと言った時、「○○が欲しい」「○○がしたい」と言った時、まずは共感しながら聞いてあげてください。
最終的に「ノー」と言わなければならない時も、まずは「イエス、イエス……」と聞いてあげるのです。

2.
子どもになにか言う時は、「○○しなきゃダメでしょ」「なんで、○○しないの」などの否定語はやめてください。
言いたいことを実際口に出す前に、「○○するといいよ」「○○ができてきたね」などの肯定語に自己翻訳してから言うようにするといいでしょう。
または、「○○だと心配だよ」「○○してくれると、うれしいな」などのアイ・メッセージも効果的です。
アイ・メッセージとは、「アイ(I)」つまり自分を主語にして気持ちを表すことでメッセージを伝えるものです。
ですから、相手を非難する要素が入らないので素直に聞いてもらえるのです。
または、いつもいつも肯定語やアイ・メッセージで言うのが難しい場合は、「○○しなさい」「○○しよう。用意、ドン」などという単純な言い方で言ってください。
これも、否定的な言い方よりよっぽどマシです。

3.
「目につくところを叱る」というやり方を繰り返していても、良いことはひとつもありません。目につくところには目をつぶって、その分ほめられるところを見つけてほめるほうが効果的な戦略です。
ほめられることが増えれば、子どもは自分に自信が持てるようになります。
気持ちも明るく前向きになり、生活全体に張りが出てきます(それによって、目につくところが目立たなくなったり、少しずつ改善したりすることもあります)。

しつけ優先主義をやめて、1.「共感」と2.「自己翻訳」と3.「ほめる」に心がけてください。
そうすれば、子どもは「親に自分のことをわかってもらえている」「親に自分のことを受け入れてもらえている」と感じられるようになり、親の愛情を実感できるようになります。
そして、親への信頼感を持てるようになります。

子どもにとって、信頼できる人とは、自分のことをわかってくれる人であり、自分のことを受け入れてくれる人のことなのです。
その信頼感は親に対する言葉や態度にも表れます。そこには、愛情と尊敬の両方が表れます。信頼感があるところに、尊敬は自然に表れるのです。


……この続きは次回で紹介します。

「共感力」で決まる!(単行本)親野智可等(著) 講談社 ISBN-10: 4062152797【お知らせ】
こちらの親野先生のコーナーから単行本第三弾が誕生!

大人気のこちらのコーナー、[教えて! 親野先生]が、本になりました。『「共感力」で決まる!』です。子育てが激変する親子関係の新ルールが相談例をもとにわかりやすく提案されています。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

おすすめトピックス

子育て・教育Q&A