過保護だと言われます【後編】[教えて!親野先生]

質問

 

子どもの教育やしつけに関して周囲から過保護だと言われます。日中は仕事をしていますが、家に帰ってからは子どもの塾や習い事の送迎、宿題を見たり遊び相手になったりで忙しい毎日です。学校のPTA活動や地域の児童クラブなどの行事にも積極的に参加しています。父親は忙しいし両親とも同居ではないので、子どものことはほぼ一人でこなしており、子どもも私にべったりという状態で、家族や友人にも手をかけすぎていると指摘されます。私が心配性なところからもそう評価されるようです。「このままでは子どもが自立できないのでは?」「うまく子離れできないのでは?」「子育て後に燃え尽き症候群になるのでは?」と思う時があります。でも今が子どもに手をかけてやる大切な時だとも思います。子どもとの距離をうまくとって見守る心がけはありますか?(ゆうはは さん)

 


過保護だと言われます【後編】[教えて!親野先生]

【親野先生のアドバイス】



ところで、つい先日、あるお母さんが言っていました。
中学2年生の娘の部屋が散らかり放題で困る。
「片付けなさい」と言ってもなかなか片付けない。
たまには素直にやることもあるけど、何もしないことが多い。

掃除もしないので、ほこりもたまって不健康だ。
それで、娘がいない時に自分が掃除機をかけることもある。
「これでいいのか? 私がやっていいのか? やらないほうがいいのでは?」
心の中で葛藤しつつも、やらずにはいられない。

この話を聞いて、私は言いました。
「これでいいのかな?」と思いつつも部屋の掃除をするのが親というものだ、と。

もちろん、私がいつも言っている「叱らなくても自然にできる環境やシステム」の工夫とか、取り敢えずほめてその気にさせるなどの努力も必要です。
でも、それでもなかなかできないことはあります。
そういう時は、親が一緒にやったり、またはやってやったりすればいいのです。
子どもがイヤと言わない限りは、やってやればいいのです。

それが親としての素直な愛情表現なのです。
子どもは、そういう親に対してありがたく思うものです。
ここにこそ、理屈を越えた親子のきずながあるのです。

それに、この場合、親が掃除をしてやることで、子どもは掃除をした状態の気持ちよさを味わうことができます。
これだけでも、効果はあるのです。

もし、放っておいたら、掃除をした状態の気持ちよさを味わうことすらできなくなります。
親がやってやって、あるべき状態のイメージを持たせるだけでも、効果はあるのです。

親もやらずにいてひどい状態のままでは、あるべき状態のイメージを持つことすらできません。
これこそ、大きな問題です。

あるべき状態のイメージを持っていれば、それが何年後かに効果を発揮します。
たとえば、この娘さんが恋をした時や、結婚を意識した時などです。
本人のモチベーションが高まってやる気になった時、あるべき状態のイメージを持っていれば実際に行動に移すことができるのです。

自立の問題にしても同じです。
子どもが甘えたい時にたっぷり甘えさせたほうが、かえってうまく自立できるのです。

これは、児童心理学の研究者がみんな認めていることです。
早く自立させようと急ぐ親は、子どもの甘えを抑えようとしがちです。
そうすると、子どもは十分満たされないまま次に進むことになります。

それは、その時々の発達課題を十分こなさずに、その土台をしっかり踏み固めないうちに次に進むということです。
そして、満たされない部分ややり残した発達課題はその子の内側に残ります。
外からは見えないので、うまく次に進めたように見えるかもしれません。
でも、その部分は消えることなく残っていて、あとになっていろいろな形で出てくるのです。

佐々木正美先生の『「育てにくい子」と感じたときに読む本』(主婦の友社)に、次のような事例が出ています。
とても参考になる事例なので、引用させてもらいます。

児童養護施設の子どもたちは、幼いころからすべて一人でできるように教えられます。けれど、どんなに身の回りのことができるよう訓練されても、施設の子は一般家庭の子よりも生活自立が遅いのです。それで、ある施設の先生たちが『一人ひとりをえこひいきしよう』『甘やかそう』とやり方を変えたのです。そうしたら、それまでは一人でできなかった子たちが、どんどんできるようになったといいます。
 つまり、甘やかされ、ひいきされることで、子どもたちは「自分は大事にされているんだ」と思えたのでしょう。その自信が「一人でやってみよう」という自立の原動力になったのだと、わたしは思います。

私は、子育て中の親たちがもっと自然に子どもをかわいがったり、甘えさせたり、手をかけたりできるようになるといいと思います。
親としての素直な愛情表現に、もっと自信を持ってほしいと思います。
大人による上から目線の理屈を優先する意見に惑わされたり、しつけ優先のしつけ主義に走ったりしないでほしいと思います。

どうか、親としての素直な愛情表現で、子どもに一番大事なことを伝えてください。
これこそが、子育ての肝心かなめな点です。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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