自分の気持ちを相手に伝える力を育てよう[ソーシャルスキル]

偏った視点ではなく、相手の気持ちをイメージさせる練習を

前回、子ども同士のトラブルの原因は多くの場合、「子どもの性格」にあるのではなく行動にあり、これは相手の気持ちをイメージしたちょっとした取り組みで解決することができるとお話しさせていただきました。
今回は、子ども同士のトラブルについて、保護者のかたの相談にお答えしながら、ソーシャルスキルをどのように親子で身に付けていけばよいか、お話ししたいと思います。

(相談)
小学3年生の息子は、同じマンションの友達と遊んでいるのですが、ある日その友達と遊んで帰ってくるなり、大泣きして、友達のことをとても怒っていました。理由を聞いてみると、一緒にマンションまで帰ろうとした時、息子は「待って」と言ったようなのですが、友達は一人でエレベーターに乗って帰ってしまったそうです。毎日遊んでいるので仲は良いみたいなのですが……。実は今までにもこんなことが度々起こっていて、どうすれば良いのか悩んでいます。

怒りやすい子というのは、自分の周りに起こっている出来事を「偏った視点」で見てしまうことがあります。息子さんは「お友達がいじわるして先に帰ってしまったんじゃないか」と悪いほうにとってしまったのかもしれません。もしかしたら、お友達は息子さんがエレベーターに乗っていると思っていた、もしくは、用事があって急いでいたのかもしれません。保護者のかたは、子どもの話をじっくりと聞いたうえで、子どもに友達の気持ちもイメージさせてあげてほしいと思います。大人でもこれはとても難しいことですが、徐々に子どもにトラブルの原因はいろんなところにあると教えてあげる必要があります。


自分の気持ちを伝える話し方を身に付ける

そして、子どもに「怒っているだけではなく『昨日先に帰っちゃうからびっくりしたよ』って友達に言ってみたらどうかな」などと、「自分の気持ちを伝えてみたら?」とアドバイスしてあげてください。子ども同士のトラブルの場合は、自分の気持ちを相手に伝えずに勝手にひとりで怒っていても、問題は解決しません。すぐ相手を責めず、まず自分の考えや気持ちを伝えると、早く仲直りができることを伝えましょう。また、お友達にとっても、自分の行動が友達に与える影響について気が付くことができます。こういった小さなトラブルから、子どもたちはそれぞれソーシャルスキルを学ぶことができるのです。

これは、保護者が子どもを注意する時にも言えることです。「部屋を片付けなさい!」と一方的に怒るよりも、「あなたが部屋を片付けないと、お母さんは掃除ができなくて困っちゃうわ」と言ったほうが、きっと子どもは親の言うことに聞く耳を持つはずです。自分の気持ちを伝える話し方を身に付けることも、ソーシャルスキルの一つなのです。


一人で悩まず、時にはプロに学びましょう

早速ソーシャルスキルを子どもに身に付けさせようと取り組んでくれている保護者もいると思います。しかし、中には「なかなか身に付かない」「私の言うことを理解してくれない」と悩むかたもいるかもしれません。そんな時は、保育園や幼稚園、学校の先生に相談してはいかがでしょうか。保育園や幼稚園、学校の先生は、子どもの発達を理解したうえでの指導法を身に付けています。子どもの「心」に届くような注意のしかたや工夫をしているはずです。ある園長先生は、たとえば、「静かにしなさい」ではなく、「ボリューム0ね」と、子どもたちを静かにさせるそうです。

また、最近では各地域に「子育て支援センター」などの機関もありますので、住んでいる地域の役所に問い合わせたり、インターネットで調べてみたりしてください。一人で悩まず、時には第三者の助けも借りながら楽しく子育てをしてほしいですね。


プロフィール


渡辺弥生

法政大学文学部心理学科教授。教育学博士。発達心理学、発達臨床心理学、学校心理学が専門で、子どもの社会性や感情の発達などについて研究し、対人関係のトラブルなどを予防する実践を学校で実施。著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か?—乗り越えるための発達心理学』(光文社)、『感情の正体—発達心理学で気持ちをマネジメントする』(筑摩書房)、『まんがでわかる発達心理学』(講談社)、『子どもに大切なことが伝わる親の言い方』(フォレスト出版)など多数。

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