宿題、片付けなどいろいろやる気がない息子【前編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

中学1年の息子は、成績は上位のほうですが勉強は宿題しかやりません。宿題もやる気がなく、いつも寝る直前にいやいややります。今はテニスしか楽しみがないようで、帰って来るとゲームで気を晴らしています。また、お菓子ばかり好きで、なおかつ、食べたものを片付けません。やる気が付いていかず、偏食ばかりしていて、身の回りのものを片付けないのです。子どもをほったらかしにしたわけではないのですが、がみがみ言う親を煙たがってばかりいます。今後、やる気を出させ、自分のことは自分でやるようにさせるにはどうしたらよいでしょうか?(こうたん さん)

 

【親野先生のアドバイス】

こうたんさん、拝読いたしました。

成績が上位で、宿題もいやいやながらとはいえ一応やっているわけですね。
「それなら、うらやましい」と感じる親たちも多いかもしれません。
成績が上位というのは、そうそう簡単になれるわけではないですから。
それに、宿題のことで大苦労している親たちは本当にたくさんいますから。

それでも、こうたんさんのように「もっとやる気を持ってほしい」と願うのが親というものなのです。私が教えた子の親たちも、みんなそうでした。

私が教えたA君は、これ以上の「良い子」はいないと思えるほどの「良い子」で、他の親たちもうらやむほどでした。
それでも、A君の親は「もっと男らしく強くなってほしい。お姉ちゃんと反対ならよかった」と私に言いました。

親が子どもにかける願いには、「これでいい」ということはないのかもしれません。
それが親の愛というものなのかもしれません。
でも、そういう親の願いが強いと、子どもにとっても親自身にとっても大変です。
そして、その中でも最も多いものの一つが、「もっとやる気をもってほしい」というものです。このご相談の文章の中にも、「やる気」という言葉が3回も出てきます。

私は、こういう場合の「やる気」の中身をよく考えてみる必要があると思います。
「もっとやる気を」と言う時、親は子どもにどういうことを望んでいるのでしょうか?

たとえば、ご相談の文面を使って描いてみると、次のようになります。
宿題を自ら進んでやり、それ以外の勉強もどんどんやり、ゲームばかりやっていないで、お菓子ばかり食べていないで、好き嫌いしないで何でも食べて、食べたらきちんと片付けをして、身の回りの片付けをてきぱきして、自分のことを自分でしっかりやれる子……。

これは、こうたんさんだけでなく、ほとんどの親の望みと言ってもいいほど典型的なものではないかと思います。
この他にも、よく出てくるのが、お手伝いを進んでやり、言われなくても次の日の仕度をして、あいさつがきちんとできて、弟や妹の面倒をよく見て……などです。

これらの「やる気」の中身を見てみると、どれもこれも親にとって都合のいい「やる気」であることに気づかされます。
もちろん、親は、子どものために「良かれ」と思って言っているのです。親にとって都合のいい子にしよう、などと思って言っているわけではないのです。

でも、これらはすべて親の価値観の中での「良かれ」と思うことをもとにしているので、自然に親に都合のいいものになってしまうのです。
そして、親はみんなこのことに無自覚です。
それで、親の求める「やる気」を押し付けてしまうのです。

そうすると、いろいろな問題が出てきます。

まず、一つ目として、どうしても叱ることが増えてしまいます。
なぜかというと、子どもはそんなに簡単に親が思うようにはならないからです。

これは、私が口を酸っぱくして言っていることですが、何千回でも言いたいと思います。「やる気」のある子にしたい、進んでやる子にしたい、こういう子にしたい、ああいう子にしたい……と親が思っていても、子どもはそんなに簡単に思うようにはなりません。

それらは、すべて、その子の性質、性向、ライフスタイル、人生観、その他諸々、つまりその子の生き方に関わる重大事項なのです。
そういうことが、そんなに簡単に変えられるはずがありません。
一人の人間の生き方を変えることが、そんなに簡単にできるはずがありません。

大人でも、自分の生き方をほんの少しでも変えるのはものすごく大変です。
私も、いつも、ぎりぎりになるまで原稿が仕上がりません。
締め切り効果を生かした土壇場力に頼る生き方を、改めることができません。
子どものころからそうでした。私は、夏休みの最後に宿題をやる人間でしたし、いまだにそうなのです。

みなさんも、自分のここを変えたいと思ってもなかなか変えられないというところがあるはずです。
私もたくさんあります。
私は、やるべき事を後回しにする、物事をてきぱき処理できない、早起きができない、片付けができない、字が雑、などなどということがなかなか直せません。

大人でも苦手なことはなかなか直せないのです。
大人は、子どもより人生経験があり、実行力もあり、意志力もあり、工夫する力もあるのです。
そして、自分の人生を見渡して、今のうちに直しておかなければと強く思うこともできます。
つまり、強烈なモチベーションを感じることもできるのです。
でも、それでもなかなか直せないのです。

人生経験が少なく、実行力も意志力も工夫する力も弱い子どもにおいては、なおさらです。それに、子どもは、自分の人生を見渡して今のうちに直しておかなければと強く思うこともできません。
このようなわけで、子どもは大人以上に苦手なことを直せないのです。

もし直ることがあるとしたら、それはかえって大人になってからのほうが多いのです。大人になって、実行力、意志力、工夫する力、モチベーション、これらが備わった時、直ることもあるのです。

このことを頭に入れておいてほしいと思います。
それでないと、親の価値観で「良かれ」と思うことを子どもに押し付けて、親の求める「やる気」を押し付けて、そして、毎日毎日叱ることが増えてしまいます。

次に、二つ目です。
親の求める「やる気」を押し付けてしまうと、子どもが今現在好んでよくやっていること、やりたいと思っていること、興味を持っていることに価値を認めてやることができなくなります。

泥遊びが大好き、四六時中わけのわからない絵を描いている、ゴミみたいなものを寄せ集めて意味不明のがらくたを作っている、魚の図鑑ばかり見ている、暇さえあれば釣りに行く……。
ここにこそ、その子のやる気がみなぎっているのです。
でも、親にはそのやる気が見えません。
勉強しない、片付けをしない、やる気がない……となってしまうのです。

本当は、そのやる気がみなぎっているところに最大の支援をしてやればいいのです。
そうすれば、それがどんどん得意になります。
親も、それをネタにたくさんほめることができます。
そうすれば、ますます自信が付いてきます。

一つのことに自信が付いてくると、自分自身に自信が付いてきます。
そうすれば、他のことにも意欲が出てきます。
そして、生活全般に張りが出てきます。
そうすれば、だらだらしたり、お菓子ばかり食べたり、ゲームばかりやったりということもなくなります。

この、自分に自信を持つことと生活に張りがあることは、とても大切です。
それがあれば、たいがいのことはうまくいきます。
親は、これを最初に目指すべきです。
そうすれば、良い循環を作り出すことができるのです。

でも、ほとんどの親は順番が逆です。
まずてきぱきさせよう、まずできないことを直させよう、まず○○を……となっています。そして、それはすべて自分の価値観に基づくものなのです。
さらに、ほとんどの場合その子が苦手なものなのです。
これでは、決して良い循環を作り出すことはできません。

良い循環を作り出すためには、スタート地点を変えることです。
親の求める「やる気」ではなく、子ども自身の「やる気」からスタートしてください。


次に、三つ目です。
親の求める「やる気」を押し付けていると、その子に本当に必要なものがわからなくなるということがあります。

たとえば、親にがみがみ言われ続けた子にとって必要なのは、だらだらすることであり、休憩、ストレス解消、癒し、あるいは親への反発などです。
それは、その子の心の健康のためにも成長のためにも必要なのです。
その時、言われたとおりに勉強することがいいとは、限らないのです。
なぜなら、その時正直に出せなかったものが、あとになってより大きくなって出てくる可能性があるからです。

また、こういうこともあります
小さい時からずっといい子を演じてきた子が、疲れてしまい、急に不登校になったとします。
その時、その子にとって、必要なのは不登校なのです。不登校こそが、その子にとって必要な「やる気」なのです。引きこもりにしても同じです。

でも、親はそれを「やる気」と認めることができません。
余分なことをして、子どもの成長を遅らせてしまうことが多いのです。
親は「やる気」を押し付けることしか頭にないので、「その子に本当に必要なものは何なのか考えてみよう」という発想自体がないのです。

実は、子ども本人が、自分にとって何が必要なのかを一番よく知っているのです。
そして、ほとんどの場合、無意識的に知っているのです。
今不登校が必要だと無意識的に知って、不登校をしているのです。
今だらだらすることが必要だと無意識的に知って、だらだらしているのです。

このように、親の求める「やる気」を押し付けていると、いろいろな問題が出てきてしまうのです。
ましてや、ご相談のケースは中学1年生とのことで、反抗期の真っ最中です。
がみがみ言っても、いいことは一つもありません。

この時期に、親の言うことを素直に聞いて、宿題を進んでやり、それ以外の勉強もどんどんやり、身の回りの片付けもてきぱきして、自分のことを何でもしっかりやれるようにしようと言っても、無理な話です。
もともとそういうことができていた子でも、できなくなってくるのがこの時期です。
もともとそういうことが苦手な子をこれからそうさせようというのは、どだい無理な話です。

では、どうしたらいいのでしょうか?
それは、先ほど、一つ目、二つ目、三つ目のところで書いた通りです。

一つ目は、親のやる気を押し付けないことです。
親の価値観から出発している限り、決して子どものやる気を育てることはできません。

二つ目は、子ども自身のやる気の芽を見つけ、それを支援して伸ばしてやることです。

そうすれば、自分に自信が付いて、他のことにも意欲が出て、生活全般に張りが出て、すべてが良い方向に循環し始めます。

三つ目は、その時々で、子どもにとって必要なことは何か、と考えてやることです。



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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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