兄弟げんかにはどう対応すれば……?【前編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

兄弟げんかが多くて悩んでおります。弟(6歳・保育園)の負けん気が強いせいもあるのか、何でもお兄ちゃんと一緒のことをしたがり、おもちゃ、カード、お菓子などの取り合いほか、飼っている犬の抱っこの取り合いまでします。さらに、自分の残した食べ物をお兄ちゃんにあげることさえだめだという状態です。それと太っているお兄ちゃんに「ぶた、ぶた」とからかうため、それがうっとうしくて長男もやり返したり、弟が何もしていなくてもわざとそばに行きからかったりと、常にけんかが絶えません。長男ばかり注意せず、弟を怒ったりもしているつもりですが、長男は、自分ばかり怒られていると思っているようです。仲の良いときもあるのですが、お互いにやりだすとしつこいので、親のほうまでイライラしてついにキレてしまうという状況です。何とかうまく対応できるようにとは思っいるのですが、なかなかうまくいきません。ご指導よろしくお願いします。(まさのまま さん)

 

【親野先生のアドバイス】

まさのままさん、拝読いたしました。

親としては、兄弟げんかは悩みの種ですね。
仕事や家事で疲れているところに、子ども同士のけんかを見せつけられては、休むどころではありません。
また、自分の接し方がまずいのかと反省したり、このままでは大人になっても仲良くできないのではないかと心配になったりもします。
それらが相まって、イライラしてキレてしまうということになりがちです。

でも、子どもは兄弟げんかで多くのものを学ぶというのも事実です。
たとえば、自己主張の仕方、妥協点の探し方、交渉の仕方、けんかのやり方、謝り方、許し方、仲直りの仕方などです。
自己主張しすぎたときの後味の悪さ、妥協点を探すことの大切さ、自分の言い分がとおらないときの悔しさ、けんかの後味の悪さ、謝ることの大切さ、許してもらううれしさ、仲直りの大切さなども、また然(しか)りです。

それに、ご相談にある下の子の負けん気の強さは、やる気と向上心の表れでもあるのです。

とは言っても、兄弟げんかの度が過ぎてはいけませんし、親の対応によってはそのまま大人になっても仲良くできないということにもなりかねません。
親の対応が的を射ていれば、兄弟げんかも良い経験として子どもたちの栄養になりますし、大人になってからもずっと兄弟として仲良く助け合っていくことができるのです。

まず、大事なのは、兄弟げんかがあったとき怒ったり注意したりするのではなく、お互いの言い分をたっぷり聞いてやることです。
2人一緒のところではなく、別々にして話を聞いてやってください。
2人一緒では「そうじゃない」などと、またけんかが始まってしまいます。

話を聞くときは、受容的共感的に聞いてやってください。
もちろん、子どもたちは、自分に都合の良いことばかり言います。
相手の非難ばかりして、自分がいけなかったことなど絶対に言いません。
それで、大人は、すぐ「人のことばかり言って、自分はどうなの?」と言ってしまいがちです。
でも、そこはぐっと我慢して、まずは受け入れて共感してやってください。
「うん、うん、そんなこと言われたの?」「そうか、それは頭に来るよね」などという感じです。

たっぷり受容的共感的に聞いてもらうと、子どもは「わかってもらえた」という気持ちになります。
自分にも非があるのに相手だけを非難しすぎた場合は、やましさを覚えます。
それで、自分から「でも、ぼくもいけなかった」「ぼくが先にたたいちゃった」「謝ろうかな」などと言い出すこともあります。

自分から言い出さなくても、少し水を向けてやると言い出すこともあります。
たとえば、「お兄ちゃんはどう思ってるかな」「弟は今どんな気持ちかな」「自分はいけないところなかった?」「ずっとけんかしてるのもつらいね」「どうしたら仲直りできるかな?」などというように水を向けてやるのです。

でも、このときの水の向け方で大事なのは、その子を非難する感じで言わないということです。
そうしないと、それまで受容的共感的に聞いてきたことが水の泡です。

また、いくら水を向けても、親が望むような反応をしてくれないことも多いと思います。

それは、まだけんかの余韻が残っていて、すぐに切り替えられないだけのことです。
親としては、たっぷり受容的共感的に聞いてやったのだから、そろそろ自分への反省もしてほしいと思ってしまいます。
それに、「最後は何とか反省の言葉を引き出したい。それでないと自己中心的な考えのままでよしにすることになる」と考えます。
それで、水の泡にしてしまうことが多いのです。

大人はその場で一応のまとめをすることで、自分がすっきりしたいのです。
でも、その場で無理に口に出させなくてもいいのです。
その場で口に出さなくても、そぶりに出さなくても、子ども自身の内面ではいろいろと感じているのですから、それでいいのです。
それは信じてやればいいのです。

受容と共感に心がけていれば、子どもはだんだん変わっていきます。
気持ちが満たされて、自分の存在に対する自信と他者への信頼の両方が育つからです。

受容と共感が子どもをわがままにするということはありません。
受容と共感がないとき、子どもは自分を守るためにわがままにならざるを得ないのです。


多くの家ではその反対になっています。
つまり、けんかの当事者である子どもたちが両方とも、「自分はわかってもらえていない」「自分の方が多く叱られている」「自分だけ叱られている」と思っていることが多いのです。

特に上の子は、ほとんどの場合そう感じています。
親には、どうしても、「上の子なんだから」という意識があって、それが言葉の端々に、また目つきや態度に出てしまうからです。

お兄ちゃんらしくしてほしいという願いから、つい「お兄ちゃんなんだから○○しなきゃ、ダメでしょ」という言い方をしてしまいます。
こういう言い方は一切やめて、ほめることから始めたほうが効果があります。
ほんの少しでもお兄ちゃんらしいことをしたときや、ほんの少しでも弟を思いやる気持ちが感じられたときは、「さすがお兄ちゃんだね」「やっぱりお兄ちゃんだね」などと必ずほめてやってください。
実際はそれほどでなくても、あたかもそうであるかのように言ってやればいいのです。

叱るところから入るより、よほど効果的です。

・・・・・・この続きは次回で紹介します


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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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