子どもをかわいいと思えない……【前編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

小学6年生の女の子との二人暮しです。生活がいっぱいいっぱいで子どもがとてもかわいいと思えず乳児院に預けたこともあります。生活との両天秤で気持ちをだましだまし11年。心底憎いわけではないし、きっと、かわいいと思っているはずなのですが、だらだらとした生活態度等をとがめると「どーせ私なんか」「私なんかいらない子どもなんだ」と言う反応にうんざりして毎日けんかです。手を上げる回数も増えてきました。怒っても何も得られないとわかっていますがエスカレートしている自分が恐ろしいです。最近では「いなければいい!」「早く大きくなって出てってほしい!」と思うことも多くなりました。出口が見つかりません。(ダックス子沢山 さん)

 

【親野先生のアドバイス】

ダックス子沢山さん、拝読いたしました。

本当に大変な状況ですね。
生活面での大変さと子育て面での大変さの両方が重なって、ダブルで追い詰められている状況です。
いろいろなことが重なって、そのすべてを一人で抱え込んで、いっぱいいっぱいの状況だと思います。
母一人子一人で、お互いにストレスがたまり煮詰まっているということもあります。
このような状況では、誰がやっても大変です。
これは、相当につらい精神状態だと思います。

いろいろな方向から考えてみましょう。

まず、一人で抱え込まないことが大切です。
これは、絶対に確かです。
このまま一人で抱え込んでいたら、ろくなことはありません。
もともと子育ては複数の大人が協力して行うべきものなのですから、一人で抱え込むこと自体が無理なのです。
ですから、今このように大変な状況になっているのは、無理からぬことなのです。
いろいろな人に話を聞いてもらったり、相談に乗ってもらったり、具体的に助けてもらったりすることが必要です。

まず、思いつくのは、おじいちゃん、おばあちゃん、兄弟姉妹、親戚、友人、知り合い、ママ友達、近所の人などに手助けしてもらうことです。
家に来てもらったり、預かってもらったりということも考えられます。

この他にも、次のようなものや場所があります。
児童相談所、自治体の相談窓口、教育委員会の相談窓口、各種電話相談、学校の先生、保健の先生、学校のカウンセラー、心理カウンセラー、心療内科医、精神科医、子育てサロンや子育て広場、民生委員、児童委員……。

自分の地域で相談可能なところを調べるには、インターネットで、「子育て 相談 ○○市」「子育て 悩み ○○市」などと入れて検索するといいでしょう。
話を聞いてもらうだけでも、たまっていたものが発散されてかなり気持ちが楽になります。

私も経験があります。
教師時代に、子どもたちとの関係が非常にまずくなったときがあります。
そのとき、たまたま家に来た保険の外交員さんに、かなり長時間にわたって愚痴を聞いてもらったことがありました。
話し終わったとき、自分の気持ちがとても楽になっていることに気が付きました。
そのとき、何か具体的な解決方法が見つかったというわけではないのです。
そういうものが特に見つかったわけでもないのに、ただ話をたっぷり聞いてもらっただけで、とても楽になったのです。
私は、この経験から、精神的に大変な状況になったときは、まず、たっぷり話を聞いてもらうことが何よりも大事だと知ったのです。

心理カウンセラー、心療内科医、精神科医などは敷居が高いと感じている人も多いようですが、実際はそんなことはありません。
私も、精神科医に行ったことがありますが、普通の医者に行くのと何ら変わりはありません。
今、このような心の専門家のところに行く人は非常に増えています。
ですから、気軽にどんどん行くといいと思います。

具体的な解決の方法について相談に乗ってもらったり、何らかの具体的な手助けを得たりすることも大切です。
とにかく、母一人子一人で煮詰まっている状態を何とかする必要があるのです。
それについても、上記のようなところで具体的な方法を相談するといいと思います。

いろいろなところで、いろいろな人に相談してみてください。
1カ所とか1人とかでは、いい相手に巡りあえないかもしれません。
何カ所にも何人にも当たってみることです。
数を多くすれば、それだけ良い知恵が出てくる可能性は高くなります。
自分でずっと思い悩んでいたことが、人の知恵によって一気に解決するというのは、けっこうあることです。

これらの人たちに支援を要請するのが恥ずかしい、人の世話になりたくないと考えてしまう人もいるようです。
でも、決してそんなことはありません。
もともと、子どもというものは多くの大人が関わって育てるべきなのです。
それを、無理に一人で抱え込まされていることがそもそも問題なのです。
何よりも、支援を受けることで親も子も共にかなり楽になることができます。
ぜひ、支援を求めてください。

経済的な面での支援も必要です。
そのためには、使える制度や支援はどんどん使うことが大切です。
ぜひ、要保護や準要保護の指定を受けることをおすすめします。
これについても、恥ずかしい、人の世話になりたくないと考えてしまう人もいるようですが、そんなことはまったくありません。
自治体の児童手当やさまざまな支援も大いに活用しましょう。
使えるものはどんどん使って、親も子も共に楽になることが大事です。
おじいちゃん、おばあちゃん、兄弟姉妹、親戚などにも援助してもらうといいと思います。

「だらだらとした生活態度等をとがめると『どーせ私なんか』『私なんかいらない子どもなんだ』という反応にうんざりして毎日けんかです。手を上げる回数も増えてきました。怒っても何も得られないとわかっていますがエスカレートしている自分が恐ろしいです」

今、ここで、親としての一大決心が必要です!!
もう同じことを繰り返さないという一大決心です。
このままでは、親子共々つらすぎます。

一大決心は、親がするのです。
子どもが先に変わるよう求めても、絶対に無理です。
子どもには責任はないのです。

今一番苦しんでいるのは子どもです。
もちろん、親自身も苦しいのですが、でも、一番苦しんでいるのは子どもです。
「どーせ私なんか」「私なんかいらない子どもなんだ」と言わないではいられない子どもの気持ちを、想像してみてください。
こんなにつらく寂しい気持ちがあるでしょうか?

だらだらした生活態度が気になっても、叱ったりとがめたりするのはやめたほうがいいと思います。
今の状態で、今の親子関係で、親が叱ったりとがめたりしても逆効果になるだけです。
親が精神的に参っている以上に子どもは参っているのです。
そこで、また親から非難されても素直にはなれないのです。
それどころか、反抗的な言葉が出てくるに決まっています。
そして、それでまた親子でいやな気持ちになるに決まっているのです。
いわゆる悪循環です。

もう、叱ったりとがめたり非難したりは、一切やめるべきです。
そうです、「一切」やめるのです。
それが悪循環を断ち切る唯一の方法です。
そういう思い切った変化が必要です。

気になることがあっても、そこは目をつぶってやってください。
だらだらしていても、もう叱ったりとがめたりしないことです。
何か目についても、一切言わないことです。
そして、もしほんの少しでも良いところがあったらほめることです。

たとえば、物を片付けないところを見つけても、そこでは一切言わないことです。
親が黙ってやってやればいいのです。
そして、もし子どもがほんの少しでも片付けたり物を元に戻したりしたら、ほめてやることです。
つまり、叱るところからではなくほめるところからスタートするのです。

もし、どうしても何か言いたいときは、プラスイメージの言い方で言ってください。
「○○しなきゃダメでしょ」ではなく、「○○すると気持ちがいいよ」という言い方です。
または、アイ・メッセージも有効です。
「5時までに帰らなきゃダメでしょ」ではなく、「帰ってこないと、お母さん、心配だよ」という言い方です。
これらは、相手を非難する要素がないので、子どもも素直に聞けるのです。
とにかく、何かを伝えるときに、非難する要素を入れないで伝えることが大事です。

こういう一見地道に見えるようなところでの変化が、とても大事です。

・・・・・・この続きは次回で紹介します


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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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