水泳【前編】:選手の才能を伸ばす教室はどんなところ?[習い事入門]

人気が高い習い事のひとつである水泳。
習っている子は、「小さいときに始めた」というケースが多いのではないでしょうか。
今や全国各地でスクールが開設され、自治体も教室を開いています。
そんななか第一線で活躍する選手を育てている教室があります。
今回、前編ではアテネオリンピック金メダリスト北島康介選手や、同銅メダルの中村礼子選手らを育てた東京スイミングセンターに、後編では選手育成で有名なイトマンスイミングスクールにお話を伺いました。
小さいときから習い始めて才能を伸ばしてきた選手たちは、いったいいつごろからどんな訓練をしてきたのでしょうか。

毎日来ても週1回でもOK。地元の子が多い東京SC
「今日は雨だから来る子が少ないかもしれません。多い日は300人も来るんですけどね」。
東京スイミングセンター(SC)のシニアコーチ杉田光一さんはそう言うのです。
たしかに取材したその日は小降りの雨が降っていて少し肌寒さを感じました。
でも雨の日は少ない?
けげんな顔をした私に杉田さんはとってもユニークな東京SCのやり方を教えてくれました。
「月4回の子が多いけれど、6回・8回・10回のコースもあって11回以上は何回来ても同じ月謝。毎日開いているのでいつ来てもいいんです。毎日来ている子もいますが、毎日来る子は楽しそうですよ」。
月謝は回数ごとに異なりますが、月4回で9,135円。11回以上でも1万2,390円。
3歳から小学6年生までの幼児・小学生教室は毎日午後3時と4時15分からの2回、土日は昼間それぞれ3回と2回開いています。
今日は雨だからやめた、夏だから今月は毎日通おう、今月は学校の行事があるから月はじめに集中して通おう、ということも自由にできる仕組みです。
「だから通いやすい地元の子が多いですよ。上達が早いのは毎日来る子です」。
あくまで杉田先生は鷹揚(おうよう)です。
ところで東京SCは東京都豊島区駒込にしかありません。
地元密着型なのに、どうしてこんなに選手が育ったのでしょうか。

選手コースに入る子が半数以上
「50Mプールという設備の良さを生かして教えてきたんですよ」。
幼児・小学生教室では、24段階に細かく等級分けされた子どもたちが、同じ時間に同じプールで練習します。
初級1は「顔つけ」。ここをクリアすると「呼吸」「浮身」「けのび」とクラスが上がります。プールの右半分では幼児がビート板の上でキャッキャッと水遊び。片やプール左半分ではクロールやバタフライをどんどん泳ぎまくる子たちがいます。
「初級・中級・上級があって、そのなかでまたクラスがあります。級ごとに帽子の色が違い、さらにクラスごとに帽子に付けるリボンの色が違います」。
24段階をクリアすると200メートル個人メドレーができます。
「早いと幼稚園でクリアして選手コースに入る子もまれにいますが、その後の上達はそれぞれですね。だいたい小学3、4年生になれば24段階をクリアして200メートル個人メドレーができます。
そうなれば選手コースに入れます。今、幼児・小学生教室に1,700人いて選手コースに900人いますから、半数は継続して選手コースに入っていることになりますね」。
なんとこの教室にいれば、ふつうに選手コースに行けるらしいのです。
これはすごい。

毎日楽しく泳ぐこと
「北島康介くんは5歳から来ていましたね。彼は体が固かったけれど、順調に上達していきました。負けん気が強くて競争が大好き。家が少し遠かったから、お母さんが毎日送迎して熱心に見守っていました。親の熱心さも上達に必要かもしれませんね」。
北島くんも始めから抜きんでた英才だったわけではなく、顔つけから始まってクロール、背泳ぎ、バタフライ、平泳ぎをマスターしていき、選手コースに入ったのです。

なお東京SCの級の昇級テストは毎時間あります。
コーチがレベルに達したと判断したら昇級します。
「なかなか上がらないこともあります。つまずくところはそれぞれの子で違いますが、30回を目安に指導しています。30回受けても上がらないのは例外中の例外ですね」。
コーチが細かく目配りして、できるように指導してくれます。
グループ分けはその日来た人数で異なりますが、数人ずつの小グループにしているので、その子がどういう状態か察知しやすいのです。
それにしても、いつ来てもよくて、昇級テストが毎時間あるというのはユニークです。こういうやり方だと継続して続けやすいうえ、上達しやすいだろうと感心しました。なお選手コースは毎日コースのみになります。


【習い事リサーチ】 お子さまが水泳を習い始めたのはいつですか?
〔習い事入門〕「水泳を習い始めた時期」
(2007年2月:Benesse教育情報サイト)

プロフィール



NPO法人 孫育て・ニッポン理事長、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。「母親が一人で子育てを担うのではなく、家族、地域、社会で子どもを育てよう」をミッションに、全国にて講演、プロジェクトを行う。東京都北区多世代コミュニティー「いろむすびカフェ」アドバイザー。産後のママをみんなでサポートする「3・3産後サポートプロジェクト」発起人。著書、共著に「ママとパパも喜ぶ いまどきの幸せ孫育て」(家の光出版)。

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