学校で皆が大切に育てている金魚を殺してしまった息子[教えて!親野先生]

今週の相談

 

小学2年生の男子です。学校で、友達と高学年が大切に育てている、金魚を殺しました。網を使って違う水槽に移したり、棒でつついたり、孵化させた卵や稚魚を大きい金魚の水槽に入れて、食べるのを見ていたりしたようです。聞いた時、あまりの残酷さに、耳を疑いました。言葉も出ない状態でした。どちらかと言うと、幼くて、活発なほうではありません。したことにも悲しかったのですが、先生や高学年の生徒の皆に怒られ、注意された時、子どもが、そのことの重大さが分からず、皆の気持ちもわからず、どうしたら良いのかもわからず、謝ることもできないことに、私もどう接して行けば良いのか、分からない気持ちでした。今は毎日、金魚のお墓に手を合わせて、人に対して良いことをしようと、声を掛けています。それでも子どもの前と変わらない態度や笑顔に、やはりまだ重大さが分かっていないのでは、と思っています。(いちはるさん)

 

【親野先生のアドバイス】

いちはるさん、拝読いたしました。

ただ金魚を殺したというわけではなく、棒でつついたり、卵や稚魚を大きい金魚に食べさせたりして、それを見ていたわけですね。その話を聞いて、親であるいちはるさんは、あまりにも残酷だと感じたのですね。そして、先生も他の高学年の子たちも、その場で同じように感じてみんなで怒ったのでしょう。それでも、本人はそれほど悪いことをしたと思っていない様子なので、親としては余計に心配になるのです。
「このまま残酷に育ったらどうしよう?」という気持ちも大きいのだと思います。

でも、それは、はっきり言って全くの杞憂ですから安心してください。
このことをもって、この子が残酷な子だと思う必要は全然ありません。それどころか、この子は、子どもが当然踏むべきステップを踏んでいるのです。この子のしたことは、子どもの探求心の現れです。命とは何か? 死とは何か? 生き物とは何か? 生き物が生き物を食べるとはどういうことなのか? そういうことを、この子は体験を通して五感を働かせて探求していたのです。
もちろん、本人がそれを探求しようという目的を明確にもって意識的にやっているわけではありません。でも、無意識のなかに隠れていても、この行為の目的はそこにこそあるのです。

大人は、それまでの経験をとおして、命や死について概念的な理解ができます。でも、子どもにはそれがありません。子どもにとって、命や死はとても不思議なものなので、というよりこれ以上不思議なものはないと言っていいくらいのものなので、それを探求せずにはいられないのです。
そして、命とは何か、死とは何かを知るために、殺してみることも必要なのです。殺して動かなくなったのを見て、食べさせて消えるのを見て、命のはかなさを実感するのです。人に教えられてとか、本で読んでなどではなく、自分の五感を使った体験でそれを知るのです。こういう経験が全くないまま大人になっていくとすれば、逆に怖いのではないでしょうか?

以前は、みんなけっこうこういうことをやったものです。もっともっとすごいことを、これよりはるかに残酷なことを、よくやったものです。トンボの目玉を指でつまんでむしり取ったり、毛虫をすりつぶしたり、バッタの脚をはさみで切ってジャンプできるか調べたり、アリの巣をほじくり返して水を流し込み溺れるアリたちを見ていたり……。
今大人になって普通に暮らしている人たちも、けっこうやっていたのです。ただ忘れているだけです。私ももちろんやりました。

繰り返しますが、このことをもって、この子が残酷だと思う必要は全くありません。
「そうは言っても人よりほんの少しは残酷なのではないか」などと思うかもしれませんが、一切そんなことはないのです。これはそういうこととは無関係の、次元の違うことがらなのです。もし、お母さんがそう思うとしたら、そのこと自体の影響のほうが心配です。

それでも、もしどうしても気になるようでしたら、小動物を飼うといいと思います。たとえば、ハムスター、モルモット、うさぎ、猫、犬などです。こういう動物は、抱いて温かみを感じたり、撫でて愛しんだり、世話をしてかわいがったりすることができます。愛情を感じたり、命の大切さを実感したりするうえで、とてもいい経験になるはずです。


だいじょうぶです。
この子はとても順調です。
命の大切さを実感として知っている、優しい大人になるのは間違いありません。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。少しでもご参考になれば幸いです。いちはるさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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