給食を食べきれないことが原因で、学校が嫌になってきています[教えて!親野先生]
教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。
【質問】
小学4年生の娘のことです。もともと食が細いので、これまでは自分の食べられる量を考えてあらかじめ減らしてもらい、残さず食べられるようにしていました。
4年生になってからの担任の先生は、掃除の時間や休み時間になっても、食べ終わるまで席に残します。最近では、給食のことが気になって、学校に行くことが嫌になってきているようです。
様子を見ながら指導していただけるように伝えてはあるのですが、食べられないとすごく怒られるようです。良いアドバイスをいただけたら嬉しく思います。
(tomoさん)
【親野先生のアドバイス】
tomoさん、拝読いたしました。
食事の量というものは、個人によって大きく違います。いわゆる食の細い人もいますし、大食いの人もいます。同じ年の子どもでも、食べられる量には大きく個人差があるのです。それは、生理的な問題なのですから、他人がとやかく言えるものではないのです。
ですから、親にしろ担任にしろ、子どもに「これだけの量を食べなさい」と強制することはできないのです。できないというより、してはいけないことなのです。それは一種の拷問です。
学校給食が始まって以来、どれほどたくさんの人たちがこのような「指導」という名の強制で苦しめられてきたかわかりません。
それが原因で、学校嫌いになり、登校できなくなり、人間嫌いになったという人が大勢いるのです。食べられないことで叱られ、自分に自信を失い、自分が嫌いになったという人も大勢いるのです。
給食が原因で精神的トラウマをうえつけられた人は、驚くほどたくさんいます。ためしに、検索サイトで、「給食」「苦痛」「残さず」などという言葉をいくつか組み合わせて「アンド検索」をしてみてください。そのような実例がいくらでもでてきます。文部省はこういう実態を調べて対策を施すべきだと思います。
体質や生理的な個人差を無視して、一律に一定量を食べることを強制するなどということは、あってはならないことです。
そもそも、その一定量というのは平均値的な発想ですから、個人差を無視しているのです。「これが4年生の食べるべき量だから食べなさい」という発想です。同じ4年生といっても、食べられる量は倍ほども違うのに、その個人の事情は一切無視されているのです。
また、たとえ平均より少ない量にしているといっても、その量がその子に適当な量かどうか他人にわかるはずがありません。本人にすらわかりません。
食べ始めたら意外と食べられなかったとか、またはその逆の場合とか、大人でもよくあることです。
もし、大人がどこかで食事をするときに思いがけずたくさんの量がでたとして、それを「全部残さず食べなければいけない」と言われたらどうしますか?
食の細い大人が、「これが大人の平均量だから残してはいけない」と言われたらどうしますか? 「そんなことを強制されるいわれはない」と断るはずです。
それでも無理矢理食べさせられたらどうしますか? 子どもはそういうことをさせられているのです。
もし、「全部食べるのが健康のためですよ」と言われたらどうしますか?
もし、「残したらもったいないですよ」と言われたらどうしますか?
もし、「全部食べるのが礼儀ですよ」と言われたらどうしますか?
もし、「食べ物がなくて困っている人もいるのですよ」と言われたらどうしますか?
「そんなことを強制されてたまるか」と、断るはずです。私なら、断固拒否します。でも、子どもだったらどうでしょうか? 子どもには、断固拒否する力はありません。
食べられないからといって、先生がすごく怒るなどということがあっていいはずがありません。これほど人権を無視した非人間的な発想が、いまだにまかり通っていることに私は怒りを感じます。これは、はっきりいって人権問題です。
それに、休み時間にも遊べずに食べていなければならないなんて、本当に気の毒です。
子どもにとって、心を開放して過ごせる休み時間は、精神衛生のうえからもとても大切な時間です。また、人間関係を勉強するための大切な時間でもあるのです。
このままでは、お子さまが気の毒です。私は、親の力でお子さまを救い出してやるべきだと思います。そのための方法を考えてみましょう。
私は、この件に関して、担任ときちんとした話し合いをもつことをおすすめします。その場で、次のようなことを担任に伝えてください。
・我が子はもともと食が細いこと
・給食のことが気になって学校に行くのが嫌になってきていること
・家でも元気がなくなってきたこと
・食事の量を減らしてもらいたいこと
・「残してもいい」ということにしてもらいたいこと
・掃除の時間や休み時間に食べさせないでもらいたいこと
でも、けんかに行くのではありませんから、その辺は大人としてのうまさが必要です。
目的は、「子どもの幸せ」という一点です。担任に「文句を言いに来られた」と思われては、やはり得なことはありません。担任とのいい関係を保ちつつ交渉しなければなりません。
そのためには、下手にでるということも大切でしょう。まず、担任がいい気持ちになる話をするといいと思います。「先生のおかげで……」とか、作り話でもいいのです。できたら、話し合いの申し込みをする1、2週間前にそういう話を一度伝えておくといいですね。
電話でも、手紙でも、連絡帳でもいいですから。そこで一度、いい雰囲気を作っておくことです。そのときには、給食のことは一切触れずにおくのです。
いい雰囲気になったところで、「ご相談したいことがあります」と言って、相談の約束を取り付けます。そして、当日も、まずは、いい雰囲気になるような話から始めることです。そうすれば、相手の心が開いて、受容的になります。そこで、本題に入るわけです。この手順を踏まないと、関係がこじれることになりやすいのです。
もう一つ、大事なことがあります。それは、学校へ行く際は一人で行かないで夫婦で行くようにするということです。
人数が多い方が断固とした決意を示すことができますし、相手にプレッシャーをかけることができるからです。
もしどうしても夫婦そろって行けないのなら、おじいちゃんでもおばあちゃんでも親類の誰かでもいいのです。一人で行くのと二人で行くのとでは、明らかに違いますから、人数は大切です。
さらに、服装も大事です。買い物のついでという感じではなく、フォーマルなしっかりした服装で行くことです。
男性なら、絶対にネクタイをして行ってください。このようなことで、ことの重大さを感じ取ってもらうことができるのです。
このようなきちんとした話し合いの時間をもてれば、改善される可能性は高いと思います。でも、もし効果がなかったらどうしたらいいでしょうか?
次は、その上のかたということになります。順番としては、学年主任、教頭か校長、教育委員会ということになります。急ぐ場合は、学年主任は飛ばしてもいいでしょう。力があり、頼りになる学年主任なら話は別ですが。
話は少し戻りますが、担任と話す場合もその上のかたと話す場合も、PTAの学級役員さんに代わりに話をしてもらうという方法もあります。
つまり、学級役員さんに代表になってもらって、「クラスでこういう悩みをもっている人がいる」と言ってもらうわけです。
これなら、似たような問題で悩んでいる子が複数いる場合は、誰が言い出したのか学校側にはわかりません。該当者が少なければわかりますが。
ただし、この場合の成否は学級役員さんの人間性と力量にもよります。うまくいくも失敗するも、その学級役員さん次第ということになります。
一つ忘れましたが、元の担任に相談するということも考えられます。元の担任は、給食について今の担任とは別の考えがあるはずです。ですから、元の担任から今の担任に言ってもらうという方法もあり得ます。
私ができる範囲で、せいいっぱい提案させていただきました。少しでもご参考になれば幸いです。tomoさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。
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