子どもを犯罪者にしないために親ができることはあるの?【前編】

凶悪で動機がよくわからない少年犯罪があいついでいる。子どもをもつ保護者は「被害にあわないように」さまざまな対策をとっているが、一方でひそかに「うちの子が加害者になったらどうしよう」と思う保護者も少なくない。
 しかもわが子が、すぐキレる、パニックを起こす、衝動的、こだわりが強い、コミュニケーションスキルがない子だったら不安は大きくなるばかりだ。

「どうしたらわが子をまっとうに育てられるか」

 今回は小児専門精神科病院・都立梅ヶ丘病院、市川宏伸院長にお話を伺った。梅ヶ丘病院で受診する子どもは年々ふえているが、それはひと昔前は「ちょっと変わっている」と見過ごされてきたAD/HD(注意欠陥、多動)など軽度発達障害の子も訪れるようになったことも一因のようだ。必ずしも「心のトラブル」をもつ子が増加したとは言い切れないそうだ。

 さて、市川先生はこんなすてきなアドバイスをしてくれた。
「多動だったり、こだわりが強い子で、知的遅れのない子は、じつはすごい才能があるかもしれない。だいたい社会的成功をしている人は、ちょっと変わっている。だから変わっている子も、芸術とか研究とかの分野で才能が伸びる可能性があります。だからその子のいいところを伸ばして、得意なことができる仕事につかせてあげるといい思います」

 ところが保護者はついつい逆のことをしがちである。
「苦手なことを克服させたり矯正してもむずかしい。それより何かひとつ得意なものを見つけて、これなら自信があるというものを作ってあげることです。自信のある子は強い。その後の社会生活に大きな影響があります」

 しかし悲しいかな、私もふたりの娘を育ててきてわかるけれど、ついつい苦手なものを克服して欠点をしつこく矯正させようとやっきになる。ところがそれがどうやら事態をいっそう悪くさせてしまうようなのだ。
「どうしてみんなと同じことができないんだろう。同じことができなくてどうせみんなから相手にされないなら、ひどいことをやって目立ってやろうとなってしまうんです」

 子どもの破壊的な行動を歯止めをかけるのには、子どもの欠点を直すことでなく、ひとつでも得意で自信がもてるものを見つけることなのだ。劣等感をもたせるのは危険なのだということがお話を伺ってよくわかった。

 ところで最近にわかにクローズアップされている広汎性発達障害には、高機能自閉症やアスペルガー障害、学習障害、AD/HDなどがあるが、こういう子の特徴である、多動で衝動的、こだわり、コミュニケーションスキルの弱さなどは、じつは子どもなら誰でももっている。それが障害となるのは「ふつうの子は卒業するのに、そこにいつまでもとどまってしまう」からだという。そしてとどまらせてしまうのは、やっきになって矯正しようとした保護者や周囲の人によって固定してしまうこともありえるのだ。
「軽度発達障害には別名スペクトラムという言い方もあります。スペクトラムは連続体という意味です。つまりどこまで障害かは区別がむずかしいんです」

 つまりどの子もちょっと変わっている。その変わっているところを直すのではなく認めて、いい方向に伸ばして、自信をつけさせてあげることが、どうやら反社会的で破滅的な行動をとらせないためのもっとも賢い育て方なのだ。うーん、なかなか親としてはむずかしいが、それが正しいことは、娘たちが思春期もすぎた今、実感しているところだ。

 次回も引き続き、親としてどう対応していけばいいかを考えていきます。


プロフィール



NPO法人 孫育て・ニッポン理事長、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。「母親が一人で子育てを担うのではなく、家族、地域、社会で子どもを育てよう」をミッションに、全国にて講演、プロジェクトを行う。東京都北区多世代コミュニティー「いろむすびカフェ」アドバイザー。産後のママをみんなでサポートする「3・3産後サポートプロジェクト」発起人。著書、共著に「ママとパパも喜ぶ いまどきの幸せ孫育て」(家の光出版)。

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