文武両道を貫く・広島県立祇園北高校

我が国の高等学校において、「文武両道」という価値観は、長らく普遍的な教育目標として考えられてきました。校訓・校是として多くの学校で掲げられているのはもちろん、先生方の意識においても、そして生徒にもその価値観は正論として広く受け入れられていると思います。

今回は、その正論に真正面に取り組み、普遍的な教育目標としての「文武両道」を成し遂げてきた広島県立祇園北高校の取り組みを紹介します。



「文武一貫」を掲げ、進学・部活動に顕著な実績

2005年度で創立23年目を迎える広島県立祇園北高校は、毎年100名を超える国公立大合格者が輩出する、地域を代表する公立進学校です。

広島県教育委員会が指定する「進学指導重点校」でもある祇園北高校は、ここ数年「土曜補習」や「学習合宿」「生徒の進路観育成」などに積極的に取り組んできました。また、2学期制65分授業の導入や研究授業・公開授業の実施なども積極的に手掛けるなど、様々な取組みを行っている学校です。一方で祇園北高校は創立以来一貫して「文武両道」を校是として掲げてきました。特に、運動部の活躍は目覚ましく、インターハイに出場した陸上部、県大会の上位常連の野球部、バレーボール部などは、広島県内でも強豪との評判が高いようです。

そんな祇園北高校の「文武両道」観は、部活と学習を不可分なものとして捉え、『部活があるからこそ勉強にも打ち込める』『勉強で成果を上げるためには部活が必要である』という考え方にあります。

多くの中学生、高校生が悩む「文武両道」・・・。どんな様子なのか、少し具体的に見てみましょう。

部活動を通して「自己管理能力」を育成する

祇園北高校の高校3年間は、「1,2年生の間は部活に集中させ、3年生で一気に学習に切り替える」という構想に沿って組み立てられています。大学進学を目指す学校でこうした指導を行おうとした場合、一般的には、1,2年次の家庭学習時間の維持が大きな課題となるはずです。しかし、祇園北高校における各学年の家庭学習の目標時間は、「1年次が週15時間、2年次が週16時間、3年次が週35時間」と敢えて抑え気味に設定しているというのです。

とはいえ、単純に学習時間を減らしただけでは、肝心の「文」の面が疎かになります。そこで祇園北高校では、授業に集中して授業の質的向上を図ると共に、「部活の中で学力を養う」という発想に基づいて、部活動の運営方法を工夫しています。

例えば、注目されるのは祇園北高校の多くの部活動が、生徒主体の運営方法を採り入れていることです。インターハイへの出場実績もある陸上部では、大学スポーツなどで積極的に採り入れられている目標管理的な手法を特に重視しています。たとえば、練習メニューの設定から、練習中の時間管理、更に大会前後のスケジュール管理まで、部活の運営はできるだけ生徒自身の手に委ね、生徒が自ら主体的に部活動をつくり上げることで、自己管理能力の育成を図っています。

しかし、中学校までメニューを与えられる活動に慣れてきた生徒の中には、適応できないケースもあります。そこで祇園北高校では、部活動の中に生徒に「書かせる指導」を積極的に採り入れています。

進路指導部長の松崎親男先生は次のように語ります。

「部員全員に『活動日誌』を書かせて、目標が達成できたのかどうか、自分の取り組み状況がどうだったのか、振り返りの機会を与えています。また、大会前などには特別にプリントを用意して、生徒の自己管理能力をしっかり身に付けさせます。その際には簡単ですが、家庭学習の状況を記入させる欄も設けて、学習と部活の両立を意識させます。自分の行動を逐一文章化することで、意識を高めていくわけです」

学校経営の視点でも文武一貫は不可欠な価値観

以上のようなプロセスを通じて、祇園北高校の生徒たちは、3年夏の引退までに「部活を通して」自己管理の手法や自律的な学習姿勢を身に付けていきます。

その一端は、「生徒の学習時間調査」で出て見えてくるといいます。
例えば、朝練習をやっていた生徒は部活を引退しても早朝に登校して、朝練習に使っていた時間をそのまま自主学習の時間に充てるなど、部活を引退した後それまで部活に充てていた時間を、そのまま学習時間に転換できる生徒が多いといいます。部活と授業の切り替えを通して確立したメリハリのある生活習慣、そして、自己管理能力があるからこそ、このような切り替えがうまくできているのでしょう。

「3年次に部活を引退した途端、驚異的な成績の伸びを見せる生徒が多い」(松崎先生)と言われますが、それも2年次までの徹底した部活動での指導があればこそ・・・・。大学受験に向かう力も、実は日常生活の工夫、部活動と学習のメリハリある時間の工夫で、養われていくことが分かります。

進学指導一辺倒でもない、スポーツエリート校でもない、一見して特別な公立高校でもない祇園北高校の取組みは、「文武両道」のあるべき姿を目指す高校の、一つのモデルとしたい取組みです。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A