いまどきの「習い事」事情【後編】

「習い事」について、速報版詳報版【前編】と2回にわたり「教育発見隊」アンケートの結果をお伝えしてきました。今回は、気になる「費用」のことや、習い事に通う本来の意味などについて考えてみたいと思います。

考えておきたい費用~タイム・イズ・マネーとはいうけれど~

そもそも習い事って?

 考えておきたい費用~タイム・イズ・マネーとはいうけれど~

「教育発見隊」アンケートの結果から、習い事をしている子どもの割合は全体の82.6%にのぼり、その頻度は平均すると週に2,3回であることなどをご紹介してきました。また、習い事と学習や部活をいかに両立させるかで悩む方がとても多いこともわかりました。

ところで、習い事の話になると避けて通れないのが、月謝代など費用の問題です。実際、自由回答の欄に「費用」に関する不安や悩み、難しさをお寄せくださった方が本当にたくさんおられました。以下、ごく一部ですがご紹介します。

  • 小さいうちにいろんな事を経験させて将来の選択肢のひとつにできればと思っているのですが、学費がばかになりません。何を習わせてよいか迷っています
  • (4人きょうだいなので)できれば習い事は最小限にしてもらいたいのですが、どうしてもやりたいというものを止めさせるのもどうかと思い、なんとか続けさせています。
  • いろいろなことに興味があるようだが、授業料や通うのに便利なところかどうかなどの意見がかみ合わない。特に下の子も同じように習いたがるのでお金がどうしてもかかってしまい簡単に見学などにも行けない。


また、なかには、

  • 子どもたちは習い事の年頃を過ぎました。今までいっぱい習い事をしましたが費用がバカになりませんね。ボランティアに近い形でもっと気楽に習い事ができる環境が必要だと思います。


という提案をくださった方もいて、思わずうなずかずにはいられませんでした。
では、実際どのくらいの費用がかかっているのか、気になる数字を見てみましょう。

【図1 習い事にかかる費用 男女別・学齢別】<学齢別>


<男女別>

上の【図1】のとおり、習い事にかかる費用の総額は、平均すると毎月14,000円弱でした。小学校入学前は平均9,954円で、小学4年生は14,458円、小学6年生になると16,698円という状況です。小学生のうちは、学年が上がるほど費用も上がる傾向が見られます。
小学校入学前の児童を例に、過去のデータ*1と比べたのが【表1】です。集計エリアと対象学年が異なるため単純比較はできませんが、8年前よりも増加していることがうかがえます。

【表1】習い事にかける費用(経年比較)

*1:ベネッセ教育研究所「第1回子育て生活基本調査」(1997年・幼児~小学2年生の保護者対象)。金額は塾や通信教育費などの教育費の合計

また今回のアンケートでの「費用」を男女別に見ると、男の子より女の子のほうが3,000円高い結果となりました。習い事に通う頻度自体に男女差はなかったことから、習い事の種類の差が費用の差に表れているといえそうです。一般に体を動かす習い事よりも、音楽・語学系の月謝の方が高いことや、ダンス(踊り)系は衣装や関連品に費用がかかる傾向があります。アンケート結果を見ると、男の子よりも女の子の方が、こうした習い事をしているケースが多いことが男女差につながったと考えられます。

 そもそも習い事って?

費用だけではありません。ときにはそれ以外の面でも、ご家族にとって大きな負担がかかっています。もっとも多かったのは「教室までの送迎が大変」というものでしたが、その他にもコーチ・指導者や親同士との関係などにストレスを感じている方も少なくありませんでした。

  • 私がフルタイムで働いているため、送迎を考えると可能な習い事の範囲(場所・曜日・時間)が限られてしまう。
  • 昔と比べて、親に負担が多すぎる様に思える。スポーツで交流する事を否定しないけど、(親が送迎するよりも)子どもが監督やコーチの指示で行ける方が良いと思う。
  • バレエを習わせていたが、親の付き合いが苦痛で私の方から子どもに辞めてほしいと頼んでしまった。今もバレエをやりたいと言っているが、自分で全てできるようになってからねって言っている。現在5年生です。お稽古は親と先生の付き合い方が面倒です。


もちろん、「不安や悩みは特になし」との意見を持つ方も少なからずおられました。たとえば、

  • プールを心から楽しんでいるのを眺めるのが至福です(待ち時間に勝手にプールにとびこんだりしているのもご愛嬌)。もちろんうまくなって欲しいけど、それは本人の自信につながるのではないかと思うから。健康と笑顔に繋がる限りはやらせてあげたい。

といった、お子さまとそれを見守る保護者の方のほほえましい光景が目に浮かぶようなご回答もお寄せいただきました。
家庭の事情や、きょうだいの人数などはもちろんのこと、学びや習い事に対する考え方は家庭によってさまざまです。幼児・児童期に「習い事」に通うことの意味とは、そもそもどんなことなのでしょうか?今回のアンケートでも、子どもの大切な成長段階で、習い事に今のような時間や費用をかけていいのだろうか?かける価値があるのかしら?という問いが多く寄せられています。

  • いろいろと(習い事を)させてやりたい気持ちと、あまり詰めこみすぎないようにという気持ちの両方が私にあり、ふとこれでいいのか考え込んでしまうことがある。そこまでしてさせる必要があるのかなあという気もなきにしもあらずです。
  • 自分が教える自信がないので、色々な事を習わせてあげたいと思う。だが実際多くの習い事に行くようになると、友達と遊ぶ時間はなくなってしまう。友達と遊ぶ時間も必要だと思うし…。ただ、学校の授業だけでは学習も運動も色々な事すべて足らないような気がして不安です。

以前、国立教育政策研究所にいらっしゃった高階玲治先生はこう話されます。「これからの子どもたちにとって、学校や地域と同時に、家庭での取り組みもとても大切です。子どもが小学生になり、さらに進級していく過程で自立させるには、小さい頃から自分のことは自分でさせ、家庭の中で何か役割を担わせるなど、自立に向けた教育も重要です。習い事にもコストがかかります。習い事だからこそできることと、家庭でできることをしっかり考えることが重要です。習い事選びも過保護・過干渉などにより子どもの自立を阻害することのないよう、子どもの判断能力を高めていくことが実は大切なのです」
例えば、習い事に通わせることで、子どもの将来に「保険」をかけた気分になって満足したり、親の期待や希望を子どもに押し付けたりしていないでしょうか?
また、習い事を通して、親と子が会話(コミュニケーション)を増やすことも大変重要です。例えば、水泳を習っていたら一緒にプールに行って親子で競い合ったり、絵を習っているのなら一緒に同じ素材を描いてみたり。もっと子どもの習い事の世界を家族で共有して、子どもに自信を与えるための時間をしっかり作ってあげたいものです。
大切なのは、子どもの成長過程において、たくさんの人や自然や本と接したり、親子のコミュニケーションを深めたりと、子どもにとって「いま」本当に必要なものが何なのかを、日常のなかで意識することかもしれません。

■コラム~「習い事デビュー」は女の子の方が早い~

今回お寄せいただいた自由回答の中で、「いつから習い事を始めればよいか」という声も多く寄せられました。「教育発見隊」のアンケート結果を見てみると、全体の7割近くが小学校入学前であることがわかりました(下図参照)。男女別に見ると、女の子の方が「習い事デビュー」の時期が早く、幼稚園・保育園の入園前に始めるケースがもっとも多いようです。一方、男の子は小学校の低学年がもっとも多く、中学年以降に始めるケースも1割以上います。

<習い事を始めた時期>


Benesse教育研究開発センター(旧:ベネッセ未来教育センター)が2003年に全国3地域を対象に実施した調査でも、習い事の開始時期を調査しています。そこでは、スイミングスクールは3歳児ですでに26.9%、4歳児で32.1%の子どもたちがスタートさせているようです。また幼児向けの音楽教室では3歳児で26.4%、4歳児で38.0%がスタートさせています。
ただ、子どものために良かれと思って始めた習い事が逆の結果を招いてしまうことがあります。それぞれの習い事を始める時期も、心身の発達段階に応じて慎重に考えたいものです。

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