義務教育費国庫負担制度の存廃をめぐる論点

現在、中央教育審議会は義務教育費国庫負担について、その一部を地方に移すかどうか激しい論戦を行っています。移すべきでないという文部科学省側と移すべきだという地方代表委員の間の意見の対立は容易に決着がつきそうにありません。

国庫負担制度とは何か

現在、義務教育費は国の財源でまかなう国庫負担になっています。義務教育である小・中学校は市町村に設置する義務がありますが、その規模や財政力は多様です。市町村にすべて負担させるとしたら、大きな格差が生じます。そこで都道府県が教職員を採用し、その給与を国が半分、都道府県が半分負担しています。その都道府県の財政事情はまちまちですから、きちんと教育費を負担できるように国庫負担をこれまで続けてきました。

その役割分担は、おおよそ次のようです。

「国」は、学級編制や教職員の定数の「標準」を決めたり、公立学校の施設費を国庫負担したりします。教育課程の基準を制定し、教科書を無償配布しています。「都道府県」は盲・ろう学校などを設置しますが、その学級編制の基準や教職員の定数、任用を決め、給与を負担します。「市町村」は、小・中学校を設置し、教職員を服務監督し、また施設や教材を整備します。

このような仕組みにある国庫負担制度をこれからも維持したい、というのが文部科学省(以下:文科省)の考えです。

なぜ存廃が問題になったか

現在、国として2004年度から3年間で、国から地方への補助金削減と税源委譲、地方交付税の抑制を同時に進める政策が進行しています。いわゆる「三位一体改革」と言われているものです。

地方への補助金削減額は4兆円で、一方3兆円規模の税源を地方に移すとされています。

その税源のうち、義務教育国庫負担金の削減は8,500億円に上ります。もとより、義務教育国庫負担金は約2兆円あるのですが、そのうちの中学校分に相当する金額を削減しようという動きです。

将来はすべてを地方に委譲してはどうか、という考えもあります。

地方代表、存続派それぞれの立場

さて、国庫負担金削減の推進役は総務省ですが、文科省が反対し、そのため中央教育審議会の特別部会で審議をすることになりました。委員の大方は文科省寄りですが、全国知事会などは税源委譲に賛成していて、地方代表は反対意見に反論しています。

その理由は、例えば、義務教育費が地方の一般財源になれば自治体の義務教育の責任が明確になる、地方分権が一層進んで地方に合致させたよい教育が実現できる、地域の実情に応じた弾力的な学級編制や教員配置ができる、などという考えに立っています。地域の教育責任を一層強め、地域に即した教育を充実できるとする考えです。

それに対して反対派は、義務教育は国の存立にかかわる重要な問題なので国が教育責任を負うべきだ、現行制度でも地域の教育の活性化は可能、義務教育費を公共事業などに回すおそれがある、などの危機感を持っています。

実は義務教育国庫負担を委譲しようとする総務省などの動きには、自民党や公明党の文教族といわれる議員も反対していて、中教審で決着がつけられるか疑問の声も上がっています。総務省や地方6団体の委譲賛成の勢いも強く、決着が政治的な問題になる可能性は大きいと考えられます。

審議の日程では、7月に特別部会の中間報告、それを受けて秋までに中教審としての結論を出す予定です。

審議の先が非常に注目されています。

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