この夏は「子どもが笑顔になれる」瞬間をたくさんつくろう 何気ないできごとが一生の思い出に[スーパー保育士のお悩み相談]

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「子どもにはいい思い出をたくさん残してやりたい」……親なら誰もが思うことですよね。
子どもたちの今年の夏休みは全国的にかなり短くなってしまったようですが、短いからこそ「いい思い出を」と考えるパパやママもきっと多いはず。でも、新型コロナウイルスの影響で、「どこへも行けない」「外に出るのは怖い」と言う人も多く、中には「今年は楽しい夏休みの思い出作りはあきらめた」という人も。あきらめることはありませんよ。今回は、時間もお金もかけずにつくることができ、子どもはそれを一生忘れないという、「楽しい思い出」のつくり方をご紹介しましょう。

この記事のポイント

子ども時代に楽しかった思い出は?

ある子育て講演会で、参加したパパやママに「子ども時代、パパやママとの楽しかった思い出としてすぐに思いつくのは?」というアンケートがありました。子ども時代の思い出というのはよく覚えているのか、参加者全員が、昨日のことのようにして書いていきました。そのとき、その答えとしてそこに書かれていた一部をご紹介してみましょう……。

  • ・夜、寝るときにお母さんが枕元で昔ばなしを読んでくれたこと
  • ・おやじの配達の車に乗っけてもらい、ジュースやお菓子をもらったこと
  • ・保育園の帰り道、お母さんと手をつないで毎日スーパーに立ち寄ったこと
  • ・夜、会社から帰ってきた父を玄関に迎えに行くと、その場でたかいたかいをしてくれたこと
  • ・食堂で、お子さまランチが来るまでの間、店員さんにもらったおもちゃで父がずっと一緒に遊んでくれたこと
  • ・おもちゃ売り場でなかなか選べなかった私に、母が「いいよ、ゆっくり選びなさい」と言ってくれたこと

面白いのは、ほとんどのかたが、ごく瞬間的な思い出を書いていたことです。「○○を買ってもらったこと」とか「一緒に▲▲へ旅行に行ったこと」といった、親がお金や時間をかけてつくったような思い出を書いた人は、とても少なかったのです。
どうやら、子どもが「楽しかった思い出」としてその後何十年も覚えているのは、当の親が覚えていないような、日常のささいな出来事の中にあるようです。
迎えに来た子どもを玄関で「たかいたかい」をしたお父さんは、自分がしたいからしただけで、それを子どもが、まさかそこまで喜んでくれていたとは思わなかったでしょう。
保育園の帰りに子どもとスーパーに立ち寄ったお母さんは、「子どもの思い出づくりに」なんてこれっぽっちも考えておらず、毎日のルーティンとして立ち寄っただけでしょう。
子どもを配達の車に乗せたパパも、まさかその程度のことを我が子が何十年後も覚えているとは思ってもいなかったでしょう。

大人になっても覚えている楽しかった思い出の共通点

それらの思い出には3つの共通点があります。
まず1つは、それをするのに親はお金も時間も手間もほとんどかからない、ということ。
2つ目は、親はそんなことがあったことさえ覚えていない場合が多い、ということ。
そして3つ目は、その行為には、親の愛情がたっぷりと含まれている、ということ。

たとえばさっきの例で言えば、今も昔も、寝る前の絵本読みというのは我が子への愛情がたくさんこもっているもの。枕元で聞く子どもにとっては、その愛情がお話のストーリーよりもよく伝わっていくのです。
保育園の帰り道、子どもと毎日スーパーに行ったあのお母さんも、そこで手をつないでいたのは、我が子が大好きだったからこそ。それが「楽しかった思い出」として彼女の心の中にずっと残っていたのは、その握った手に、お母さんの愛情を感じ取ったからでしょう。
迎えに来た子どもと玄関先で遊んだお父さんも、父親の義務として遊んだのではなく、我が子への愛情がそうさせたのです。そしてその愛情は、ちゃんと子どもに伝わっていたというわけです。
いずれのパパもママも、まさかそれが子どもの心の中に一生の思い出としてずっと残っているとは、そのときは思いもしなかったことでしょう。

この夏は「子どもが笑顔になる」瞬間をたくさんつくろう

さあ、みなさんも今年の夏休みは、「お金も時間も手間もかからないのに、子どもは一生覚えてくれる思い出」をたくさんつくってみませんか。
ポイントは、「たとえ瞬間でもそのときに子どもが笑顔になる」ということでしょうか。
例えば、台所でラップが芯だけになってしまったなら、ポイっと捨てずに、その芯を望遠鏡のようにしてリビングにいる子どもをのぞき込み「●●ちゃん、見~えた」と言ってみましょう。それだけでも、子どもはもう笑顔になります。「僕(私)もする~」と言ったときはさせてあげてください。「ママ、見~えた」と、同じ言葉を言いながら同じことをきっとします。子どもはおそらくすぐ飽きて、ゴミ箱にポイと捨てるかもしれません。でもそれでいいのです。
そうやって遊んだのは瞬間的な出来事であっても、子どもはそれを何十年も覚えていて、自分が親になり同じようにラップの芯が余ったとき、「よくこれでママと望遠鏡にして遊んだなあ」と、そのときのことを思い出すかもしれません。「よく遊んだ」と言っても数十秒のはずです。楽しかった思い出というのは時間はまったく関係ないものです。

その嬉しい瞬間を子どもが一生覚えているかもしれない

「ただいま~」と家に帰ったとき、もしもお子さんが「おかえり~」と玄関先まで来てくれたなら、「お迎えありがとう」と言いながら、大げさにぎゅっと抱きしめたり、さっきのパパのように、たかいたかいをしてみてください。もしかしたら、それを一生覚えているかもしれません。
子どもと買い物に行ったときは、手をつないだまま突然「走れ~」と言って、ほんの数メートル走ってみてください。子どもは必ず大笑いするとともに、お母さんとの楽しかったエピソードとして、きっといつまでも心の中に残ることでしょう。

まとめ & 実践 TIPS

「親からもらった笑顔になれたかかわり」は、子どもは一生忘れません。その時間は短くてもOK。極端に言えば10秒でもいいのです。たとえば子どもは、さっきのような触れ合いは仮に10秒だったとしても、「楽しかった」という印象が残ります。そんな「笑顔になれる10秒」が1日の中にたくさんあればいいのです。
今年の夏は、そんな「子どもが笑顔になれる10秒のかかわり」を、おうちの中で、あるいはちょっとしたお出かけの中で、たくさんつくってほしいと思います。
すると、こんな夏だったのにも関わらず、子どもにとっては「楽しかった夏」として、この夏が、一生忘れられない夏になるかもしれませんよ。

プロフィール


原坂 一郎

KANSAI こども研究所所長。23年間の保育所勤務時代には、どんな子どもも笑顔になるユニークな保育が注目され「スーパー保育士」と呼ばれた。現在は「こどもコンサルタント」として、子どもおよび子育てに関する研究・執筆・講演活動を全国で展開している。

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