忘れ物を届けることが子どもの考える力を奪う。普段の会話でできる思考力の育て方

2020年度の大学入試改革を象徴とする教育改革を控える日本では、この年を契機に「賢さ」の中身が大きく変わります。

これからの子どもたちには、親世代が経験してきたような、記憶力や知識をもとに「正解」を早く見つけ出したり、テストの点数を競ったりすることだけではなく、いろいろな人を納得させられる答えを自分で導き出す思考力が問われます。

WHO(世界保健機関)が各国の学校の教育課程への導入を提案している「ライフスキル」という考え方があります。

ライフスキルは「人生で起こるさまざまな問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な能力」とされ学力テストでは測れない「非認知能力」になります。
「ライフスキル」は、生まれ持った資質や才能ではなく、日々の接し方の中で身につけられる後天的なスキルであること、その身につけ方をまとめた「自分で決められる賢い子供 究極の育て方」(サカイク著)の内容から、先の見えない「不確実な時代」を生きる子どもたちが身につけておくべきスキルについてお伝えします。

■「忘れ物を届ける」ことは子どもの思考力を奪っている

みなさんのお子さんは忘れ物をしたことはありますか?
たとえば、子どもが宿題のノートをテーブルに置いたまま学校に行ってしまったら、あなたはどうしますか。たいていの親は「忘れ物を届ける」「先生に連絡する」などの行動をしがちですよね。
しかし、この一見当たり前に見える行動が、子どもたちから考える力を養うための貴重な機会を奪っているのです。

学校に着いて宿題のノートを忘れたことに気づいた子どもは、「忘れちゃった! 先生になんて言おう」「取りに帰る時間はあるかな」と授業までの短い時間に考えだします。それなのに親が届けてしまったらどうでしょう。親は「よかった。間に合った」と安心するでしょうが、子どもは忘れ物をしたという自覚もないままなんとかなってしまうのです。
先回りしてすべてをお膳立てしてしまう親に育てられた子どもは、自分からは何もしなくても「なんとかなってしまう」人生を歩むことになります。

そのように「なんとかなってしまう」人生を歩んできた子どもは、自ら工夫したり考えたりする事態に遭遇した経験が極端に乏しいので、考える力が身につきませんし、うまくいかなかった時に「失敗したのはお母さんのせいだ」などと他人のせいにします。

多様化・複雑化し、正解が一つとは限らないかもしれない不安定で不確実なこれからの社会において、自分で考え、答えを導き出し、納得して行動した経験は、問題にぶつかったときにどのように解決すればよいかを思考するベースにもなります。
子どものためによかれと思ってやっていることが、子どもが考えて行動する力を養う妨げになっているのは、何とも皮肉なことではないでしょうか。

小学、中学、高校と、いつまでも子どもが転ばないように親が道を整えてあげるのでは、子どもの自立心が身につきません。ケガをしない転び方を教えてあとは見守る、そんな強さが親にも必要なのです。

■考える力を身につける会話例

子どもたちの考える力を引き出すために親ができることの1つに、普段の会話を変えるということが挙げられます。

「今日のテストどうだった?」
「あんまりよくなかったかも」
「なぜよくなかったの?」

このような会話を繰り返していると考える力は育ちません。大切なのは親の問いかけ、質問ですが、ただ質問を増やしただけでは、子どもにうっとうしがられて終わりということも。
「なぜ」という問いかけは、質問する人があらかじめ答えを想定し、そこに追い込む可能性があるのです。質問形式の言葉かけであっても、言葉のチョイスによっては暗に命令を出しているのと同じになったり、子どもを追い込む尋問になってしまったりすることもあります。

質問は考える力を引き出すよい練習になりますが、聞き方にはちょっとしたコツがあるのです。考えることに不慣れな子に、何の材料もないまま、「考えろ」とだけいっても、頭がフリーズしてしまいます。
そういう子には、「遊園地と動物園どっちがいい?」「ハンバーグとトンカツならどっち?」など具体的な選択肢を与えて、自分で決めさせることからスタートしましょう。
考える方法を教えなければ、考える力は身につきません。子どもに考える力を身につけさせるには、親のほうも準備が必要なのです。

そうして考えて自分で決められるようになることが、やり抜く力にもつながります。自分で決めたことを納得するまで挑戦し追求する力を身につけるためにも、考える力は欠かせません。
過保護や過干渉は百害あって一利なし。適度な質問で子どもたちの頭を刺激したら、あとは考え出すのを待つだけです。

教育改革、学習指導要綱 文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/detail/1397733.htm
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm

ライフスキル教育
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/010/009.htm

やり抜く力——人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける(ダイヤモンド社) より

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