【中学入試】2022年度教科別問題傾向分析(国語・算数編)

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2022年2月18日に森上教育研究所が主催する「2022年入試 首都圏中学入試の結果と分析」セミナーがオンラインで行われました。今回は、セミナーで発表された今年の教科別の入試傾向分析と必要な対策についてお伝えします。今回は国語と算数です。

この記事のポイント

教科を通じて新学習指導要領に沿った出題が増加へ

2022年度は全体にやや難化傾向

2022年度の中学入試では、難関校を中心に合格最低点があまり伸びなかった学校も多く見受けられました。そういう意味ではやや難化傾向であるといえるでしょう。ただし、難化傾向自体はそれほど深刻にとらえる必要はありません。

問題が難化すればみんながその問題を解けないわけですから、その教科が不得意な人にとっては有利に働くことになります。また、今年難しかった場合はその翌年揺り戻しで易しくなることも多々あります。過去問を解く際に、この年は難化傾向にあったということに気を付けておけば十分です。

新学習指導要領に沿った、より思考力を重視した問いが増加

教科を通じての入試傾向としては、高校で新学習指導要領が実施され、大学入学共通テストがスタートしたことで、中学入試においてもその影響を受けた出題が増加しているということが挙げられます。

たとえば、国語では2つの問題文が課され、より高度な読解力が問われる出題が増加しています。算数では文章題の文章が長くなり、受験生がどれだけ考えたかという思考力を問う方向へとシフトしつつあります。こうした傾向は今後も続くと考えたほうがよいでしょう。

国語:より読解力、思考力が問われる出題が増加

読みにくい問題文や2つの問題文で読解力が試される

次に教科ごとに詳しく2022年度の出題の特徴を述べていきます。国語では上でも述べたように読む力がより問われる傾向が強くなっています。平山入試研究所の小泉浩明先生の分析によると、最新科学用語や、経済・哲学などを扱った読みにくい問題文や、2つの問題文からの出題が増加しており、今後も増加が考えられます。

読みにくい問題文の場合、言葉の難しさ、問題内容に関する知識不足などで「わからない」と挫折してしまうことなく読みこなす読解力が要求されます。また、2つの問題文が課される場合は、2つの文章の関係性に気を付けつつ読む必要があります。

こうした読解力をつけていくには、最初から難問に取り組むのではなく短くて良い文章を扱った問題を丁寧にこなしていくことです。入試の形式に対応した問題に取り組むのは最後でかまいません。

思考力が問われる複数選択肢問題と記述問題

また、選択肢問題では正解を1つだけではなく複数選ばせる複数選択問題が増加しています。こうなると選択肢問題とはいえかなりの思考力が要求されます。同時に記述問題も増えており、思考力をより重視する傾向が強まっています。

思考力を鍛えるためには、基礎的な問題に数多く取り組むことが出発点となります。また記述力を付けていくうえでは、短い文章を要約したり、それに賛成もしくは反対する文章を書く練習をするなど、書くことに抵抗がなくなるような練習もしておくとよいでしょう。

なお、2022年度の国語の問題では最頻出作家と出題された作品は以下の通りでした。問題文に採られる作家は多様化が進みつつありますが、参考にしてください。

伊藤亜紗『「うつわ」的利他——ケアの現場から』『記憶する体』『目の見えない人は世界をどう見ているのか』
佐倉統/古田ゆかり『おはようからおやすみまでの科学』佐倉統『科学とはなにか』
重松清『バスに乗って』

算数:粘り強く試行錯誤する力が求められる

文章題を読みこなす読解力も必要に

算数では、先に述べたように文章題の文章が長くなる傾向があり、読解力がより問われる問題となりつつあります。一見難化したようにも見えるのですが、文章が長くなることで、読めば何が問われているかが理解しやすくなり、良い方向の変化ともいえます。

これまでは中学受験の算数特有の「この問題ではこの解法」ということを知っていないと解けないような、解く速さを競うような文章題も多く出題されてきました。今後は、より本質的な算数の力が問われると思っていいでしょう。

こうした問題に対応できる力を付けるには規則性を見つける問題などの基礎的な問題にしっかりと取り組み、徐々にレベルを上げていくことが必要です。すぐに答えや解説を見るのではなく、親子で「こうじゃないかな?」「そう考えるとまずくない?」といった会話をしつつ粘り強く考え抜く力をつけていくといいですね。

場合の数は難化、図形問題のバリエーションが広がる

みんなの算数オンライン主宰竹内洋人先生の分析によると、2022年度の算数問題では、場合の数が難しくなりつつあることと、図形問題のバリエーションの幅が広がりつつあることが指摘されています。場合の数は基本的な計算力に加え、「場合分け」をする力が問われますが、さらに「書き出してもれなく見つける」「精密に調べ上げる力」も求められます。

また図形問題では、単純に砂時計型(チョウチョ型)の相似を活用するだけでは得点しづらくなっています。補助線を引いて「相似を作る」、または角度や長さ情報から「合同を見つける」などの処理も求められます。

こうした問題の場合「書き出す」「試行錯誤する」その経験量が問われます。入試問題特有の言い回しや複雑さに早くから慣れるとともに、やはり粘り強く取り組む姿勢を身に付けておきましょう。

まとめ & 実践 TIPS

全体的に、新学習指導要領や大学入学共通テストの影響を受けた出題が中学入試においても増加し、より思考力を問う方向へと問題がシフトしつつあります。国語はより読解力が問われる読みにくい問題文や2つの問題文の出題、複数選択肢問題と記述問題で思考力が問われる出題が増加しています。算数では、文章題の長文化、場合の数は難化、図形問題のバリエーションの拡大などが傾向として挙げられ、より粘り強く試行錯誤する力が問われます。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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