AI時代、女子も理数系進学を!

10月に入り、大学受験の生徒は勉強にスパートが掛かってくるころでしょう。大学教育をめぐっては「人工知能(AI)に負けない人材になろう」というのが最近の注目点になっており、政府もAIを使いこなせる人材の飛躍的な育成を目標に掲げています。
そのカギを握るのは、女子かもしれません。というのも現状では、大学院まで理数系を専攻する割合が、あまりにも低いからです。

大学院への進学、諸外国に出遅れ

経済協力開発機構(OECD)は毎年、加盟国の教育データを比較した「図表でみる教育」をまとめています。
先ごろ公表された2019年版について、日本向けに中継で記者会見したアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は、大学院で自然科学・数学・統計学を専攻する女子の割合が低い問題点を指摘しました。修士や博士の修了者に占める女性の割合は、諸外国がいずれも40%を超えており、男子よりも多い国さえあるというのに、日本では修士で23%、博士で21%にとどまっています。

しかもシュライヒャー局長によると、「過去10~15年前は、日本と同じような国が多かった」といいます。OECDが実施するPISA(生徒の学習到達度調査)の成績で見れば男子と遜色がないのに、女子が理数系進学を避ける傾向は、かつて世界的な傾向でした。しかし各国は努力して近年、女子の進学を後押ししており、日本だけが取り残されている、というわけです。

そもそも日本は男女問わず、学部段階でこうした分野への進学率を上げる必要がありました。「図表でみる教育」2017年版によると、「工学・製造・建築」は加盟国平均と同じ16%でしたが、「自然科学・数学・統計学」は3%(加盟国平均6%)、「情報通信技術(ICT)」は2%(同5%)と出遅れています。

ただ、女子の占める割合は「工学・製造・建築」13%(同24%)、「自然科学・数学・統計学」25%(同50%)、「ICT」21%(同19%)と、ICT分野で加盟国平均を超えているのが救いかもしれません。

小学校プログラミング教育を契機に

政府は6月に策定した「AI戦略2019」で、数理・データサイエンス・AIを現代の「読み・書き・そろばん」と位置付け、2025年までにすべての高校卒業生が基礎的なリテラシー(活用能力)を身に付けるとともに、毎年(1)データサイエンス・AIを理解し、各専門分野で応用できる人材(約25万人) (2)データサイエンス・AIを駆使してイノベーションを創出し、世界で活躍できるレベルの人材(約2,000人、そのうちトップクラス約100人) (3)再教育を受けた社会人(約100万人)……を育成するという目標を掲げています。

来年度から全面実施となる小学校の新しい学習指導要領では、いよいよプログラミング教育が必修化されます。どの学年や教科で実施するかは各学校に任されていますが、小さいうちからプログラミングによって生活が便利になることを体感するとともに、意図した活動の実現に向けて論理的に考える「プログラミング的思考」の力を育むのが狙いです。

プログラミング教育を弾みとして、女子にも早くからSTEAM(科学・技術・工学・芸術・数学)分野の関心や憧れを培う必要があるでしょう。それが、出遅れた日本を救う手立てとなるかもしません。少なくとも理数系に進学すれば、今まで以上に活躍の場が広がっていることは間違いないでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※図表でみる教育2019年版
http://www.oecd.org/tokyo/newsroom/higher-education-needs-to-step-up-efforts-to-prepare-students-for-the-future-says-oecd-japanese-version.htm

※AI戦略2019(統合イノベーション戦略推進会議)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tougou-innovation/

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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