改革さらに迫られる国立大学

文部科学省が「国立大学改革方針」を発表しました。2022年度以降の各大学の在り方について、今秋以降に「集中的対話」を行うとしています。法人統合や他の公私立大学などとの連携はもとより、学部や入学定員の見直し、卒業認定の厳格化などが進むことは避けられないようです。

2022年度からの計画期間を控えて

国立を含む大学の在り方をめぐっては、中央教育審議会が昨年11月に「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」を答申し、国立大学法人の再編・統合や、地域の高等教育機関が国公私の枠を越えて連携する「地域連携プラットフォーム(仮称)」の創設などを提言。

文科省はこれを受けて今年1月に「高等教育・研究改革イニシアティブ(柴山イニシアティブ)」を策定しました。国立大学法人法も改正され、来年度から「大学等連携推進法人(仮称)」の第1号として岐阜大学と名古屋大学の法人が統合した「国立大学法人東海国立大学機構」の創設が決まっており、同機構が両大学を傘下に置く格好になります。
一方で、人工知能(AI)技術の進展をはじめとして国全体でSociety(ソサエティー)5.0と呼ばれる新たな時代への対応が求められる中、あらゆる「知」が集積している大学に対しての期待が、ますます高まっています。

各大学を運営する国立大学法人は、6年ごとに中期目標・中期計画を策定して文部科学相の認可を受けることになっており、そろそろ第4期計画(2022~27年度)の議論を始める時期にさしかかっています。そこで文科省は、各大学と今後の在り方を徹底的に話し合うため、改革方針を打ち出したわけです。

文系学生にも数理・データサイエンス

改革方針では、持続可能でインクルーシブ(包容的)な社会や多様性にあふれる社会の実現には、世代を越えてあらゆる知が集結している大学にしか果たせない役割があり、とりわけ国立大学は長い年月を掛けて築き上げてきた「知のプラットフォーム(基盤)」だと位置付けています。しかも、産業の拠点になり得る地域の中心に大学が存在することが必要だとして、全国に配置されている国立大学の役割に期待を掛けています。
その上で、各大学の教育に関しては、▽数理・データサイエンス教育を全学部学生に展開するなど、文理横断的・異分野融合的な人材の育成を実現する教育組織改革とカリキュラム編成▽高大接続システム改革を踏まえた大学入学者選抜と大学教育の改革▽学修時間の確保や厳格な成績評価など、より厳格な出口管理により学生の成長を確実なものとする方策の徹底……などを求めています。これからは、文系学部だから数学や理科は「捨てる」とか、入学後は単位さえ取れればいいといった安易な考えは、許されそうにありません。

改革方針は、グランドデザイン答申などに基づき、地域連携プラットフォームの中核となることや、大学等連携推進法人の活用はもとより、各大学の規模の在り方についても「徹底して議論し、適正な規模を設定する」としています。

今後、各大学は文科省から、徹底した改革が求められるとみられます。今ある国立大学の姿が、今後も続くとは限りません。少なくとも入学後の教育が厳しくなることは、間違いないでしょう。もちろん、そんな厳しい教育を経て卒業すれば、社会からも高く評価される人材として、今まで以上に期待が掛けられることになります。

(筆者:渡辺敦司)

※国立大学改革方針について
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/1418126.htm

※国立大学法人等(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/houjin.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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