大学入試、まだまだ将来的に変わる!?

2021年1月から大学入試センター試験に代わって「大学入学共通テスト」が導入されるのをはじめとして、大学入試は今後、大きく変わります。直近の受験生にとっては各大学でどのような科目や問題が課されるのか、志願動向はどうなるのかなど、不確定要素も多いのが実態です。ただ、大学受験までに年数のある子どもたちにとって、浮足立つ必要はないかもしれません。新体制の入試は、数年たって修正が図られるかもしれないからです。そんな中でも今回の入試改革から、何を読み取るべきなのでしょうか。

改善が繰り返された共通試験

5月15日に行われた東北大学の高等教育フォーラムでは、センター試験や、その前身である共通第一次学力試験(共通一次)の歴史を振り返る二つの基調講演が行われました。
かつて入試時期が一期校(旧7帝大など)と二期校に分かれていた国公立大学では、学習指導要領の範囲を超えた難問・奇問の出題が横行していました。
大谷奨・筑波大学教授によると、共通一次を導入した狙いは、個別試験から難問・奇問を排し、二次試験では内申書の重視や面接なども含め多様な選抜を行うことにより、加熱していた「受験戦争」を緩和するとともに、大学間の格差もなくすことが期待されたといいます。しかし実際には、共通一次による足切りが横行したり、入試時期が一本化されたことで偏差値偏重による序列化が逆に進んだりする、という事態が起こってしまいました。

そこで、1987年度には共通一次で受験機会の複数化が導入されました。さらに、国公私立を通じて各大学が自由に利用できる「アラカルト方式」の共通試験を目指したのが、センター試験でした。
倉元直樹・東北大教授によると、共通一次の「重大な問題に対する素早い対応」によって失敗を見直しただけでなく、当時高まっていたマークシート方式に対する批判などの論点をずらすことで「不可能なミッション(使命)を負わない」という「秀逸な対応」によって、長期間続く制度になったというわけです。

しかし、多くの私大が参加したことによる受験者層の「下方拡大」や、アラカルト方式による複雑な受験パターンの広がりなどにより、制度のほころびも見えるようになりました。そうした中、2012年度センター試験で起こった問題冊子の配布ミスなどが「制度廃止に直結する大事件」(倉元教授)となり、今回の大改革につながったといいます。

予期せぬ結果に対応しながら長く続く

ここから得られる教訓は、制度改革は予期せぬ結果も招くことがある……ということです。逆に言えば改善に改善を重ねてきたからこそ、センター試験は約30年にわたって続いた制度になったわけです。裏を返せば、共通試験をもとにした入試改革は、共通一次以来40年来の課題でもあるのです。

今回の入試改革は、共通テストで思考力・判断力・表現力等を中心に測定し、各大学で主体性・多様性・協働性も含めて多面的・総合的な選抜を行ってもらおうという、野心的なものです。それだけに、まだまだ予期せぬ事態が起こり、改善が重ねられる可能性があります。だからこそ、目先の共通テスト出題傾向や各大学の入試科目などに一喜一憂することなく、各大学が受験生にどういった資質・能力を求めているのかを見据え、普段の授業や学校生活を大事にすることが肝要でしょう。それこそが大学教育改革、高校教育改革、大学入試改革を一体とした「高大接続改革」の狙いなのです。

(筆者:渡辺敦司)

※第30回東北大学高等教育フォーラム「入試制度が変わるとき」
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2019/03/event20190327-01.html

※大学入試センターと入試改善(大学入試センター)
https://www.dnc.ac.jp/about/center_gaiyou/enkaku/history.html


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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