日本版ランキングから読む大学の「改革度」

最も権威があるとされる世界大学ランキングを作成している英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)はこのほど、3回目となる日本版ランキングを発表しました。京都大学が僅差で東京大学を抑えてトップとなるなど、国内大学の順位は気になるところです。しかし、ここでは別の側面に注目してみましょう。大学全体の教育が大きく変わっていることが、調査から垣間見えるからです。

学生にも評判を聞き教育力を評価

THEは世界ランキングだけでなく、地域別や「創立50年以内」など、さまざまなランキングを作成しています。とりわけ世界ランキングでは研究面の比重が高くなってしまうため、もっと教育力にも焦点を当てようと、米国を手始めにランキング作成に着手。昨年7月には日本に続く3例目として、欧州の教育力ランキングも公表しています。

今回の日本版ランキングでも、米国や欧州の成果も取り入れ、改善を図っています。特に注目されるのは、「学生調査」を評価に加えたことです。ランキング化に当たってTHEは研究者などの評判調査を重視してきましたが、過去の日本版では、高校教員と企業人事担当者の評判調査しかできませんでした。そこに今回、全大学を対象にした16項目からなるウェブアンケートを実施。そのうち50人以上の回答があった226大学の分を集計対象としています。これにより学生調査を全体の18%に充てるなど評価を改善し、ランキングに反映させました。
 質問項目には大学改革に関するキーワードが組み込まれており、とりわけ「あなたの友人や家族が大学に行くことを検討していたら、どの程度あなたの通う大学を勧めますか」など、学生の生の声が反映されているのが特色です。

1・2年生から変わる「学びのスタイル」

3月に大学や高校の関係者500人以上を集めて東京都内で行われた「大学改革カンファレンス」では、日本版ランキングを発表しただけでなく、「学生調査に見る大学改革の成果」を発表しました。個別大学にとらわれず、質問項目に対する回答全体を分析したものです。
 すると、大学の規模や国公私立の別にとらわれず、▽教員との交流▽協働学習▽クリティカル・シンキング(批判的思考)▽学びの関連付け▽社会との接続……など、「学びのスタイル改革」が進んでいることが浮き彫りになりました。とりわけクリティカル・シンキングや「挑戦/やりがい」のある授業は、1・2年生のうちから強化されていることもわかったといいます。

日本私立学校振興・共済事業団の2018年度集計結果を見ても、アクティブ・ラーニング(能動的学修、AL)が66.4%と私立大学の3分の2に広がるなど、大学の教育改革は急速に進んでいます。保護者が通っていた時代の大学とは様変わりしていることをしっかり認識して、子どもの大学選びを支援することが求められるでしょう。

またランキングにしても、各大学に具体的な改善を促すのが目的です。パワーアップした今回の日本版ランキン グを参考に、社会で求められる有意な人材を輩出するような努力に弾みをつけてほしいものです。そうした相乗効果により、大学に進学する子どもたちのチャンスが、ますます広がっていくことでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※THE世界大学ランキング日本版
https://japanuniversityrankings.jp/

※私立大学・短期大学教育の現状(2018年度)
https://www.shigaku.go.jp/files/h30kyouikunogenjyou.pdf

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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