中学受験人口増加にみる、中学時代に考えておくべきこと

近年、首都圏・関西圏を中心に、中学受験人口が増え、小学校受験者も増加しています。
受験の低年齢化が進む今、高校受験生の保護者に知っておいていただきたいこと、中学時代に考えておくべきことについてお話しします。

受験の低年齢化の背景にある「学力観の変化」

2019年、首都圏の国立・私立中高一貫校受験者が小学校卒業予定者全体に占める割合は約16%、4年連続の受験率上昇となりました。また、私立小学校に通う児童は全小学生の2%未満ですが、増加の一途をたどり、国立小学校を受験する子どもも増加傾向にあります。とはいえ、日本全国で見れば多くの子どもたちにとって、最初に経験する受験といえばやはり高校受験です。

受験の低年齢化の背景には、大学入試改革や学力観の変化があると思います。今後、大学入試はAO入試や推薦入試の割合が大きくなり、学力や主体性、適性などを総合的に評価する選抜方法が主流となっていきます。その学校を志望する生徒と、こんな生徒に入ってほしいと望む学校との「マッチング」という考え方がその根底にあります。AO・推薦入試で大切なのは、学習だけでなく部活動や行事、ボランティア活動や外部コンテストなどを含む高校時代の全生活であり、「何を学びたいか」という主体的な意思です。
このような流れを受けて、探究型の授業がさかんに行われている、海外研修が充実しているなど、学習環境に恵まれた学校に早く入れたいと考える保護者が増えているのではないかと思います。

「学びたいこと」に合わせた学校選びへ

大学入試改革の方向性を受けて、中学受験の入試方法も多様化しています。たとえば、私が今年見学に行った首都圏の私立中高一貫校では、アクティブ・ラーニング型の授業を受けた後、グループディスカッションやプレゼンテーションを行う協働学習型の入試や、スポーツ、芸術など自分の得意分野についてやってきたことをプレゼンテーションする自己PR型の入試などが行われていました。パソコン等を駆使して堂々とプレゼンテーションを行う小6生の姿とともに、校長先生が控室で待つ保護者のかたたちに伝えていた、次のような言葉が印象に残りました。

「今日行った入試ははっきり点数が出るペーパーテストではありません。このような入試では、お子さん一人ひとりの良さを我々がキャッチできるかどうかが問われています。ですから、たとえ不合格だったとしても、決してお子さんを責めないでください。あの学校にはあなたを見る目がなかった、学校のほうがあなたに合っていなかったのだと伝えてください」。これはまさに「マッチング」の考え方です。

「中学受験してよかった」とおっしゃるご家庭に共通しているのは、最初の段階では保護者がリードするものの、しだいに子ども自身の意思がはっきりしてきて、親子で納得して志望校を選んでいるという点です。逆に、勉強法から志望校選びまで保護者がお膳立てしすぎ、子どもがいつまでも受け身なままの場合、せっかく入った学校になじめないといった問題が起こりやすくなります。これは高校受験でもまったく同じです。

ここまで述べてきたような動向を受けて、高校受験を目指す中学生の保護者のかたには、ぜひ以下のことを意識していただきたいと思います。

●「好き」が学びのエンジンとなる!
部活動、習い事、趣味、学校行事やボランティアなど、お子さまが好きなこと、興味を持っていることがあれば思う存分やらせてあげてください。何かに夢中になった経験はお子さまらしい思考力や表現力の源泉になります。「~したい」という意欲こそ、学びの原動力なのです。
たとえば最近、北海道の旭川市で素晴らしく英語が上手な高校生に出会い、英会話学校に通っているのかと尋ねたところ、学校に大好きなALTがいて、放課後、毎日のようにその先生と話すようになり、そこまで上達したと聞きました。お金をかけなくても、意欲さえあればできることはたくさんあるとつくづく感じました。

●中学時代の人間関係が、社会と自分について考えるきっかけに
家庭環境も、保護者の職種もさまざまな生徒が集まる公立中学校は、「地域の縮図」といえます。他人と自分の違いを意識し始める思春期はきつい面もありますが、「自分とは考え方や感じ方の違う人とどうつきあうか」を学べる時期でもあるのです。皆と同じである必要はないことや、友達関係で考えたり、悩んだりした経験が、すべてこの先かけがえのない財産になることを、ぜひ折に触れて伝えてあげてください。社会に出れば、有能であることより、さまざまな立場の人から信頼され、共感してもらえる人であることのほうが大切になってくると思います。

●「ひとり立ち」をイメージした子育てを
現在は、未来が見通しづらい時代といえます。子どもがどの高校に進み、大学で何を学べば「得」かを保護者が予測し、そこまでレールを敷いてあげる、といったことは不可能です。たとえ保護者がいなくなっても生きていける、「ひとり立ち」が子育ての最終目標だと思います。中3での進路選択は、「ひとり立ち」に向けた第一歩といえます。

定期テスト、部活動、学校行事……と中学生活は忙しく、進路決定の時期が迫ってくると、保護者も子どもも「行けそうな高校」「通いやすい高校」に目が行きがちです。ときどきちょっと立ち止まって、お子さまの遠い未来について考えたり、話し合ったりしてみてはどうでしょうか。

プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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