地方大学の役割も重要!

大学入試もたけなわです。どの大学を受けるかということに負けず劣らず、どの地域で学生生活を送るかは、進学希望者にとって大きな関心事でしょう。一方で、年々進む18歳人口の減少は、大学の経営にとっても深刻な影響をもたらしています。とりわけ地方にとっては、個々の大学にとどまらず、地域全体の高等教育機関が維持できるかどうか、ひいては、その地域が活性化できるかが懸かっています。地方大学の問題を、どう考えればよいのでしょうか。

地域の定員縮小が志願者減も招く

日本学術会議の分科会は2月3日、公開シンポジウム「地域と世界に生きる大学—地域社会における知の創造と発展のために」を開催しました。折しも昨年11月に中央教育審議会が「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」を答申しており、それを受けて2月1日には文部科学省が、教育の質を保証できなかったり単独で改革が行えなかったりする大学に撤退を促すことも含めた「高等教育・研究改革イニシアティブ(柴山イニシアティブ) 」を公表しています。

シンポジウムでは、高等教育を研究する白川優治・千葉大学准教授が、地方大学をめぐる動向を報告しました。日本私立学校振興・共済事業団の調査 をもとに、北海道や甲信越、四国といった地域では、入学定員の縮小により地域で高等教育を受ける機会が縮小しているばかりでなく、大学の志願者や受験者も減少していることを指摘。一方で各大学の公表資料を見ると、関東や関西の有名大学では、立地地域の出身者が半数以上を占める「大学選択のローカル化」が進んでいると伸べました。

そうした中でも各地域では、地域課題である看護・保健医療・福祉分野などを中心に公立大学を設置したり、私立大学を公立化したりする動きが進んでいます。一方で、学生募集に苦慮する大学は少なくありません。白川准教授は、人口変動を含めた構造的な変化の中で、地域の高等教育機会はもとより、各学問分野を維持していく重要性を訴えました。

「市民の公器」としての役割も

がんばっている地方大学は、多々あります。大分県別府市に2000年に開学した立命館アジア太平洋大学(APU)の牧田正裕教授は、89カ国・地域から来日した約3,000人の国際学生と47都道府県から集まった約3,000人の国内学生を「混ぜる教育」によって、学生にも地域にも良い影響を与えている事例を報告しました。

2016年度に私立大学を公立化した福知山公立大学(京都府福知山市)の井口和起学長は、学生だけでなく教員も積極的に地域に入って地域協働型教育研究を行う「市民のための大学・地域のための大学・世界とともに歩む大学」を目指しているとしました。さらに、福知山市にもキャンパスを持つ国立の京都工芸繊維大学(本部・京都市)や、兵庫県豊岡市にもキャンパスがある兵庫県立大学(同・神戸市)はもとより、52の民間企業・団体も参加した「北近畿地域連携会議」を組織しており、中教審答申が提唱した「地域連携プラットフォーム」にもつながるとの展望を語りました。

パネルディスカッションで吉田文・早稲田大学教授は、大学には職業への準備というだけでなく、市民の育成という重要な役割があると強調しました。このような「市民の公器」(吉田教授)としての地方大学の在り方に、保護者・地域住民としても関心を寄せる必要がありそうです。

(筆者:渡辺敦司)

※地域と世界に生きる大学—地域社会における知の創造と発展のために
http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf2/272-s-1-1.pdf

※2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1411360.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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