九九を覚えるのに苦労したせいか、いまだに計算が遅い[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
【質問】
計算が遅いです。低学年の時になかなか九九を覚えられず、苦労したのがいまだに尾を引いているのかもしれません。あわてて間違えるよりはいいのかと思いますが、時間がかかりすぎて決められた時間内に終わりません。
相談者:小6男子(大ざっぱ・論理的なタイプ)のお母さま
【回答】
計算力は中学受験以降も欠かせないので必ず強化する
■計算が遅いのは致命的
算数や数学で計算が遅いというのは、かなりのハンディになります。試験は時間内に、いかに多くの点数を取るかという競争ですから、たとえ解き方の方針がわかっていたとしても、実際に計算して正しい答えまで導いていなければ困ります。
また、試験だけでなく、日常的な学習においてもハンディになります。1問を解くスピードが遅い子どもは、一定時間内に解く問題数がどうしても少なくなるからです。算数や数学では解いた問題数と点数が比例しますので、問題数をこなすことが必要です。他の子どもより1割計算が遅ければ、解ける問題数も1割少ないことになります。こうして差が日々開き、そのうち挽回(ばんかい)が難しいレベルの差になってしまうでしょう。
■どこで遅くなっているのかを見極める
さて、「計算が遅い」というのはどこに原因があるのでしょうか。ご指摘のように、かけ算の九九がスラスラいかないからかもしれません。あるいは計算過程でのくり上げ・くり下げがスムーズにできないとか、筆算と暗算のバランスが悪いのかもしれません。計算を速く、しかも正確にできるようになるためには問題点をチェックし、練習によりそれを克服する必要があります。
まず、問題点を見つけるために、お子さまが計算過程のどこで遅くなるのかを、保護者のかたがそばでチェックしてあげればよいでしょう。ただし、計算問題を何問か解いたのを見ただけで、結論を出してはいけません。計算の遅いお子さまは、遅くなる原因をいくつも抱えている可能性があります。すぐに結論を出さず、10数問解く作業を何回かチェックして、それから結論を出すべきだと思います。
問題点が見つかったら、その原因ごとに欠点を克服していきましょう。たとえば、九九が苦手であれば、そこから直していきます。「6年生なのにそこから?」と思われるかもしれませんが、苦手を一つひとつクリアしていく方法が結局は一番の早道なのです。
■計算の工夫で計算力アップを
計算力を付けるには、原因ごとの欠点の克服と共に、計算問題の演習量を増やすことも必要です。演習量をこなすことで集中力が増し、より速くしかも正確に計算できるようになります。自分が間違えやすいところを意識できるようになりますから、間違えたところに戻って計算をやり直すことも少なくなるでしょう。また、考えながら計算することで、より速く計算するにはどうしたらよいかなど、いろいろな工夫も生まれてくることでしょう。
たとえば、頻繁に出てくるかけ算(たとえば、12×12=144、13×13=169や円周率のかけ算<3.14×5=15.7等>)などは、暗記してしまったほうが便利だと思うかもしれません。こうした計算の工夫は、問題集や参考書に書いてある場合もありますが、自分の経験から生まれてくるものも少なくないでしょう。計算力をアップさせるためには、こうした努力の積み重ねも必要だと思います。
■中学生以降も困る計算力の不足
計算力の有無は、問題を解く時に時間がかかりすぎるだけではありません。たとえば、難問を解こうとする時、自分の考え方や立式が正しいのかわからず、不安の中でひたすら計算することになります。そして、それらしい数値が出てきた時はともかく、いかにも半端なものが出てきたらどうでしょう。計算力に自信がなければ、自分の計算間違いを疑って再度計算することになります。こうしたことは単なる時間のロスだけではなく、最終的に問題が解けるかどうか、解くまでの気力を保てるかどうかを左右することになるのです。
このように考えれば、計算力がいかに重要かということがわかります。しかも、こうした基本的な力は、中学受験だけではなく、中学・高校とますますその重要性が増していきます。時間のない6年生であったとしても、計算力のない皆さんは、今日から計算力の強化のための計算問題演習に時間を割くべきだと思います。