夏休みは、苦手克服に集中! [中学受験 5年生]

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。
5年生を対象に、夏休みの重点課題について取り上げます。



■「苦手」は、ほとんどが「食わず嫌い」

5年生になると、苦手な教科や単元が相当増えてきているお子さまが多いと思います。その単元を習った時、少し理解が足りなかったり、何か失敗したりして「何か、これ嫌いだな」「嫌だな」と思ってしまっている。初めて食べた時においしくなかったので、それっきり食べない「食わず嫌い」と一緒です。ですから、この夏休みの間に、おいしく食べさせる工夫をしていただきたいんですね。
まずは、過去のテストの答案などを見るか、ご本人に聞いて、どの分野に苦手意識があるか洗い出してください。理科のてんびんとてこ、社会の地形図、算数の倍数と約数……など、苦手な単元を洗い出したら、そのうちのどれをこの夏休みに克服するか、ご本人と一緒に決めてください。不得意が5つあったら、そのうち2つでも3つでも、とっつきやすいところからでかまいません。
苦手単元は、考え方のステップを細かくして、ゆっくりと教えること。そして、わかりやすい解説のしかたを工夫する必要があります。親御さんが自信のない単元であれば、教え方の上手な人に頼んで教えてもらうのがおすすめです。



■苦手克服に大切な「三つの目」

苦手を克服するためには、自分がどこでつまずいているかを、自分で把握する必要があります。つまり、自分の頭の中を自分で眺めてみる。そして、そこで見えたもの=自分がどう考えたかを、先生や保護者に伝えられるといい。伝えようとすることで、自分がどこまでわかっていて、どこがわからないかがはっきりしてきます。自分を振り返って、そこで見えたものを相手に「見せる目」を持つことが、とても大切なのです。

もう一つ、大切なのは「見られる目」。第三者から「見られている」という意識です。できなかったことができるようになるためには、通常よりかなりのエネルギーが必要ですが、保護者のかたやあこがれの先生に認められている、目をかけられていると思えば、「がんばろう」という気持ちが自然にわいていきます。第三者のまなざしを感じることでモチベーションが上がるんですね。
ただし、このまなざしが「監視」や「強制」と受け取られては、逆効果になります。つまり、教える側には「自分は目をかけられている」と感じさせる努力が必要なのです。
また、その単元や問題の要点や説き方のポイントを見抜く「見る目」も重要です。

子どもの間違いを叱ったりはせず、「どういうふうに考えたのか教えてくれる?」というふうに問いかけて、自分の頭の中を観察させ、説明させて「見せる目」を育てる。そして、その説明に応じて、間違いやすいポイントや着眼点を示し、子どもの「見る目」を育てる。そして、「あなたならできる」「応援しているよ」という気持ちを常に伝えていくことで、「見られる目」を意識させる--教え方は先生によってさまざまですが、よい教師はこの「三つの目」の要素は外さずに教えているようです。
思春期は、「見せる目」「見られる目」の意識が育ち始める時期でもあります。特にこの時期、子どもにとっても、保護者のかたにとっても「三つの目」の意識を持つことは大切です。

参考:佐藤綾子著『非言語表現の威力 パフォーマンス学実践講義』(講談社現代新書、799円=税込)



■教科ごとのバランスに気を配って

「算数が苦手」というお子さまは多いと思います。それでなくても算数は難しい問題が多く、粘り強く考えることが大切なので、国・理・社の倍の時間は必要でしょう。ただし、算数に2時間割いたら、必ず国・理・社に各1時間は割いてください。特に国語で大切な言語能力は、使わないと衰えてしまいます。理・社は若干少なめの0.7時間でもかまいませんが、ほったらかしにしないこと。今は得意でも、放っておくと苦手に転じがちです。教科の学習時間のバランスを取り、極端な苦手をつくらないことが大切なのです。

特に算数の苦手克服においては、先ほど紹介した「見せる目」が大切になります。解く過程でのあるポイントが、正解と不正解の分かれ目になる。どこでつまずいているか自分でわかったら、その問題の解き方を、ご本人に教えてもらいましょう。一度誰かに「こうやって解くんだよ」と説明すると、考え方はご本人の中でしっかりと定着します。
国語が苦手な子は、「とにかく文章が読み取れない」ケースが多いので、短い文章を使って、指示語が指すものや接続詞を尋ねる、だいたいの内容をしゃべってもらうといった簡単なトレーニングをしてください。「これは、誰がどこから見た景色?」というふうに視点に注目させるのもよいし、役を決めてお芝居のように「読み合わせ」をしたあと、文章を材料におしゃべりするだけでも読む力は付いてきます。

苦手克服は、ご本人はもちろん、保護者のかたにとっても骨の折れる課題ですが、やり遂げれば必ず自信が付きます。焦らずに、じっくりとお子さまの挑戦を応援してあげてください。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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