大学に求められる変化 ~企業や社会が求める人材を育成する大学の事例紹介~

 今回は、『語彙・読解力検定』を用いて、社会への関心を高め、社会で活躍するために必要な思考力や知識を養成することに対し積極的な取り組みをしている大学の事例を2つ紹介します。

大正大学~時事ネタで思考力向上~

 大正大学(東京都豊島区)は2013年度から、「基礎社会」の講義に、新聞の記事を使った大学生向け教材を取り入れている。2期連続で受講する「リピーター」も多い人気講座だ。

 

「消費税が8%に上がったね。なぜ日本の消費税は上がり続けるんだろう?」

 

教育開発推進センターの吉田俊弘特命教授が問いかけると、資料を読んでいた80人ほどの学生たちが一斉に顔を上げた。「社会保障費が増えている、から?」「高齢化だから」。ポツポツと声があがる。税金の話から少子高齢化、アベノミクスまで話題は広がった。

 

若者はネットばかりで新聞を読まない、そう思われがちだが、吉田教授は「世の中で起きていることへの関心は高い」と話す。時事的な教養や思考力を身につけるのが目的だ。成果を確認するため、『語彙・読解力検定』の受検を勧めている。

 

これまで新聞に接する機会が少なかった学生も、ニュースへの興味が強くなった。「知識が増えることで、一見関係のない事象が結びついたり、社会的背景が見えたりして、どんどん面白くなるようです」。

 

※2014年5月9日朝日新聞夕刊より

 

 


北星学園大~記事を切り抜き仲間で議論~

 50年を超える歴史を持つ北星学園大。経済学部経済学科では、1年生全員が自宅で新聞を購読し、紙面を徹底的に読み込む必修講義を始めている。

 

「日々のニュースへの関心なしに経済を学ぶことはできない。新聞を読む習慣は必須」と考える経済学部長の原島正衛教授と勝村務准教授が企画。朝日新聞社の北海道支社と教育総合センターが協力している。

 

新聞を活用する講義は週1回あり、年間で30コマに及ぶ。新聞購読費用は大学が負担し、経済学科の1年生約180人全員の自宅に、朝日新聞の朝夕刊が毎日届けられる。

 

学生は日々の紙面から気になった記事をスクラップして要約したり、自分の考えを書いたりする。記事を起点に調べたことをまとめる学生も多い。教室では5人ほどのグループで、各自が選んだ記事を発表しあって議論。同じ紙面を読んでも着眼点は異なる。他の学生の関心や発想を知ることで視野が広がり、コミュニケーション能力も鍛えられる。記事の切り抜きは、夏休み中も続ける日課だ。

 

一連の講義は、新聞記事をはじめとする様々な情報やその背景を読み解き、自らの頭で判断する「メディアリテラシー」の育成も目的としている。原島教授や勝村准教授らが毎週、様々な記事について丁寧に解説するのが基本。一方で、新聞協会賞を受賞した、福島原発事故を巡る長期連載「プロメテウスの罠(わな)」を企画した依光隆明編集委員をはじめ、朝日新聞の専門記者たちの話を聞く機会も設けられている。学生たちに新聞の取材、執筆、編集の過程を知ってもらい、ニュースをより深く理解してもらおうというものだ。 こうした学びの成果は、毎週の小リポート提出、講義の冒頭に取り組む朝日新聞の大学生向け教材「時事ワークシート」、『語彙・読解力検定』の受検で確かめる。6月の検定では、1年生全員が準2級に挑戦し約6割が合格した。

 

金融関係の仕事に関心があるMさんは「最初は新聞を読むのが面倒にも感じたが、今は毎日30分ぐらいは読むようになって、世の中の動きについていけるようになった感じ。検定にも合格でき、語彙が身についた実感がある」と話す。勉強の成果は、塾講師のアルバイトにも生かされているという。

 

アナウンサー志望のTさんは、最初は1面を中心に読んでいたが、講義が進むにつれ、読みたいページが増えていったという。「どんな表現をすれば分かりやすく伝えられるのかを学ぼうと、記事内の気になる表現に印をつけ、自分の文章に生かしています。事実を掘り起こす記者の思いを生で聞けたことも勉強になった」と話した。検定にも合格した。

 

後期の講義でも、新聞学習は続く。勝村准教授は「前期は学生が書くものの内容が週ごとに充実していくのが分かって、めざましい成長がうかがえた」と話し、今後に期待している。

 

※2013年9月17日朝日新聞朝刊より

 


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『語彙・読解力検定』公式サイト

http://www.goi-dokkai.jp/

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