速報! 2015年度 首都圏中学入試の傾向と分析 社会

2015年度の首都圏中学入試にはどんな傾向が見られ、どんな力が問われたのでしょうか。
森上教育研究所主催のセミナー「平成27年度首都圏中学入試の結果と分析」での発表をもとに、受験生の動向と、各教科試験問題の傾向についてお伝えしていきます。
文教大学の早川明夫さんによる「社会」の分析です。

※以下は同セミナーでの早川さんによる分析を抄録したものです。



速報! 2015年度 首都圏中学入試の傾向と分析 社会


■データ分析や記述など、「考えさせる問題」が増加

他の教科と同様、社会でも単なる暗記では太刀打ちできない「考えさせる問題」が増えています。問題形式別に見ると、記述問題は増加傾向にあり、約3分の2の学校で出題されています。また、表やグラフ、史料や絵画・写真などの資料を使った読み取りの問題は9割の学校で出題され、分析力とあわせて表現力も求められる問題が数多くみられます。



■時事問題は9割近い学校で出題

2015年度は、時事や周年を切り口にした問題を出題した学校が86%に上りました。
たとえば、「富岡製糸場の世界遺産登録」に関する問題は、23校で出題されていますが、その内容はさまざまです。地図上の位置はもちろん、「ユネスコの世界遺産条約」「立地条件」「養蚕業や製糸業について」「お雇い外国人について」「工女は士族の娘が多かったというエピソード」など、あらゆる角度から問われています。

また、「和食の無形文化遺産登録」についても、日本の食文化、食生活の歴史などの切り口で、桜蔭、鴎友学園女子、横浜雙葉、品川女子、吉祥女子などで出題。「東海道新幹線開業50年」や「北陸新幹線、金沢まで延伸」「リニア中央新幹線」についても、日本の交通全般に目を向けた出題が数多くの学校で出題されました。

たとえば日本女子は、東海道新幹線が通る順に、各都道府県別に並べた4つのグラフを示し、各グラフが「面積」「人口」「野菜の生産額」「鉄鋼業の出荷額」のどれに当てはまるか答えさせる問題を出題。このような問題に対しては、各県の位置や特産物といった特徴を丸暗記するだけでなく、頭を柔軟に使って推測する力が必要となります。

また、「集団的自衛権」等の時事問題と合わせて、9条などの憲法の条文や「国民主権」などの意味を問う学校も数多くありました。



 時事問題、周年問題の出題トップ5
   時事問題  周年問題
1位  富岡製糸場の世界遺産登録  東海道新幹線開業
2位  集団的自衛権  日清戦争
3位  消費税  日露戦争
4位  ウクライナ情勢  第一次世界大戦
5位  第2次・3次安倍内閣の政治  東京オリンピック


■身近な「もの」を題材に考える問題 --理科との融合も

また、「夫婦茶碗」に関して男女平等について考えさせる問題(麻布)、「エアコン」に関する理科との融合問題(渋谷教育学園幕張)など、身近なものを題材にした出題も増えています。社会科は、地理的な条件、歴史的背景、政治状況と理科的な知識を総合すると、より一層理解が深まる問題が数多くあります。

たとえば学習院では、「エゾシカ・あわおどり・いよかん・さつまいも」について共通点を述べよという問題(すべて江戸時代までの旧国名が入っている)や、「西日本と東日本の食文化の違いについて」具体例を挙げて説明せよという問題を出題しています。
また、女子学院の、現在の「サンゴ礁が発達している海を、国が埋め立てる計画」がある島の名(沖縄本島)を問う問題、「非核三原則」が決議された時期と「2010年の政府発表によって当初から事実上、原則としては機能していなかったことがあきらかになった原則」(持ちこませず)を問う問題などは、地理、歴史と時事問題の融合といえます。

知識の総合と思考力を必要とする融合問題は、今後も増えていくと考えられます。



■小学校の教科書は、地図や資料も丁寧にチェックを

小学校の教科書からの、さまざまな角度からの出題も目立ちました。たとえば開成では、源平の合戦の流れを古い順に並び替える問題を出題。教科書で習う基礎事項については、歴史の流れや用語の意味を自分で説明できるほどしっかりとおさえておくこと、地図や資料などにも丁寧に目を通しておくことが必要です。



■「社会科のアンテナ」を高く張って

今後の入試でも、ますます幅広い思考力が求められていくと考えられます。そのための基礎となるのは、小学校の教科書を基本とした知識の定着です。そして、文章や資料を正確に読み取り、そこからわかったことを表現する力を磨く必要があります。

そのためにおすすめなのは、小学生向けの雑誌や新聞を読み、社会へのアンテナを張っておくことです。気にかかったニュースについて少し深く調べたり、考えたり、ご家族と話し合ったりすることで、読解力や論理的思考、柔軟なものの見方や考え方を身に付けることができます。まずは興味を持つこと--そこが社会に強くなる入り口です。

プロフィール


早川明夫

社会科入試問題研究の第一人者。大学付属中高の教頭を経て、文教大学で社会科の教員養成にあたった。現在、文教大学地域連携センター講師。主な著書に『応用自在』『考える社会科地図』『総合資料日本史』『地図っておもしろい!』(監修・執筆)ほか多数。『ジュニアエラ』の総監修者。

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