速報! 2015年度 首都圏中学入試の傾向と分析 理科

2015年度の首都圏中学入試にはどんな傾向が見られ、どんな力が問われたのでしょうか。
森上教育研究所主催のセミナー「平成27年度首都圏中学入試の結果と分析」での発表をもとに、受験生の動向と、各教科試験問題の傾向についてお伝えしていきます。
小川理科研究所主宰の小川眞士さんによる「理科」の分析です。

※以下は同セミナーでの小川さんによる分析を抄録したものです。



速報! 2015年度 首都圏中学入試の傾向と分析 理科


■暗記だけでは太刀打ちできない「思考の理科」へ

2015年度の傾向として、小学校の教科書に載っている基礎事項を確認しつつ、さらにそこから掘り下げて思考力を問う問題が多く、データ分析中心の「思考の理科」へという方向性が見られました。
また、実験データや観察記録などの読み取りが多いため、問題文の字数も、全体的に国語に近付いてきています。



■教科書に出てくる基本事項を「掘り下げてたずねる」傾向

生物・地学・物理・化学の分野別に見ると、4分野からまんべんなく出題されています。

●生物分野
タンポポ、アゲハチョウ、スズメバチ、メダカなど、教科書に出てくるおなじみの動植物や人体を扱いながら、実際にそれらをよく観察していないと解けない問題、実験データを絡めて解釈させる問題が数多く出題されました。
たとえば栄東・Aでは、アサガオの成長の様子や害虫などについてたずねる共に、光を当てた時間のグラフを提示し、光周性への理解を問う問題、吉祥女子では、エンマコオロギの活動時間に関する実験データを示し、分析させる問題を出題しています。

●地学分野
天体では、基礎事項である太陽・月・星の動きは確実におさえておく必要があります。たとえば女子学院では赤道、北緯23.4度、北緯60度から見た太陽の動きについて、鴎友学園女子では宇宙船から見た月の見え方についての問題が出題されました。これらの問題では、観測者の視点の変化と天体の動きについて、論理的に理解していることが求められています。

気象では、天気図や湿度、前線などの問題が増えています。たとえば浦和明の星では、日本付近の4つの気団と湿度や温度、天候の関係を問う問題、青山学院や立教女学院では、空や生物の様子などから天気を予想する「観天望気」について出題されました。

地震や火山に関する問題も増加しています。たとえば麻布では、地層柱状図と地震波による地下の構造調査に関する問題が出題されています。

●物理分野
「てこ」や「ばね」の問題は例年頻出していますが、今年はそれに浮力を絡めた問題が目立ちました(駒場東邦など)。振り子や、斜面を使った物体の運動の問題、光・熱・音の問題は、データの読み取りや計算が中心となります。早稲田実業の光速の測定に関する問題、鴎友学園女子の「ピタゴラス音階」に関する問題などは難易度が高いものの、光や音の性質について基本理論をおさえながら、実験の流れを追いかけていけば解ける問題といえます。

また、手回し発電機やLED、コンデンサーに関する問題も増えています。桜蔭の手回し発電機の問題は、基本の理解と共に、ハンドルを回す手応えなどについてもたずねており、実際に実験で確認しているかどうかが問われています。

●化学分野
水溶液・物質・気体の性質などの基本事項は、難関校、中堅校を問わずよく出題されています。気体の発生や中和に関しては、グラフや表の解釈が中心となります。たとえばサレジオでは、酸素の発生の仕方について正しいグラフを選ぶ、酸素発生量の計算と、瓶の中の酸素量とろうそくの火の燃え方を問う共に、マグネシウム火災の消火法について問う記述問題を出題。白百合学園では、「中和と中和熱」についてデータを使って計算をさせると共に、実験結果のグラフをどう解釈するかを説明する記述問題が出されています。

また、ガスバーナー、顕微鏡、上皿てんびんなど、実験器具の扱い方も数多くの学校で出題されています。



■身のまわりのものを題材にした「生活の中の理科」問題

2015年度、特徴的だったのは身近なものを題材にして、科学的なものの見方を問う問題です。たとえば渋谷教育学園幕張の、よく食卓に上るサンマ・アジ・サバの問題。これは日頃これらを食べたり、観察したりしているかが問われる食育を絡めた問題といえます。住宅のしくみや排水管にちなんで、物理や化学の知識を問う慶応普通部の問題、三叉スイッチを扱った暁星の問題など、「生活の中の理科」問題はさまざまな学校で出題されました。



■時事問題を題材に、基礎を掘り下げる

例年、時事問題は数多くの学校で出題されますが、2015度年は2014年の出来事だけでなく、過去の自然災害や事件に関する問題も目立ちました。トピックとしては、月食、火山、気象災害、デング熱、富岡製糸場の世界遺産登録などが挙げられ、社会との融合問題も多くなっています。



■さまざまな題材に対し「科学する心」を

このように、中学入試の理科は確実に「思考力を問う」方向にあります。教科書に出てくる基礎事項は確実にチェックする必要があり、そのうえで、身のまわりのものや時事問題など、さまざまな題材に目を向けて観察・観測、考察を行うことが求められています。表、グラフなどで与えられる数値やデータを読み取り、提示される観察記録などの文章をしっかり理解したうえで、科学的に考察する力が必要とされているのです。

ご家庭でも、「科学する心」を十分に養っていただければと思います。

プロフィール


小川眞士

東京都練馬区立の中学校で理科を教えたあと、四谷大塚進学教室理科講師。四谷大塚副室長、理科教務主任を勤めたカリスマ講師。2009(平成21)年に小川理科研究所開設。

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