速報! 2015年度 首都圏中学入試の傾向と分析 国語

2015年度の首都圏中学入試にはどんな傾向が見られ、どんな力が問われたのでしょうか。
森上教育研究所主催のセミナー「平成27年度首都圏中学入試の結果と分析」での発表をもとに、受験生の動向と、各教科試験問題の傾向についてお伝えしていきます。
平山入試研究所の小泉浩明さんによる「国語」の分析です。

※以下は同セミナーでの小泉さんによる分析を抄録したものです。



速報! 2015年度 首都圏中学入試の傾向と分析 国語


■「論理的な文章をいかに読みこなすか」が問われている

「2020年度から実施される新しい大学入試の方向性を踏まえ、中学入試でも論理的な思考や応用力を問われる問題が増えるのではないか」--多くの教育関係者がこのような予想を立てましたが、実際はどうだったのでしょうか。

まず、文章の種類で見ると、物語文+説明的文章で9割、韻文(詩・短歌・俳句)+随筆が1割という比率に大きな変化はなく、特に説明的文章の出題が増えたわけではありません。今回目立ったのは、「哲学」を扱った問題文が多く出題されたことでした(聖光学院、世田谷学園、本郷、明大附属明治、実践女子学園)。2003年度に『14歳からの哲学 考えるための教科書』(池田晶子著)が話題になって以降、哲学をテーマにした文章は毎年数校で出題されていますが、今年は上位校・中堅校で広く取り上げられていることが特徴です。

文章をテーマ別に見ると、例年どおり友人・友情をテーマとしたもの、自然環境や動植物を扱った文章がよく出題されています。身近な人間関係や文化習慣など、出題されるテーマは多様化の傾向にあります。
その中で伸びが目立つのは、言語・コミュニケーションや文芸論です。「ことば」という抽象度の高いものについても、論理的に考える力が求められているといえそうです。



■テーマの多様化に伴い、「頻出作家」は見えにくくなっている

2015年度は、森絵都さんの『クラスメイツ』が学習院、高輪、学習院女子、田園調布学園、日本女子大附属で、『子供は眠る』が渋谷教育学園幕張と計6校で出題されたのが目立ったほかは、さほど「頻出」といえる作品はありませんでした。ちなみに、2014年度はあさのあつこさんや重松清さんの作品が多く出題されています。これらは、いずれも子どもたちにとって親しみやすい小説を書いている現代作家です。同時代の作品を取り上げる傾向は、今後も続いていくと考えられます。

とはいえ、テーマの多様化に伴い、「これを読めば受験に役立つ」といった考え方は通用しなくなってきています。むしろ、読解問題で出合う文章を入り口に、興味・関心を広げていくことのほうが大切です。



■増えている「表現・効果」を問う問題

文章表現について選択肢で問う問題も近年増えており、攻玉社、田園調布学園、鎌倉学園、駒場東邦、世田谷学園など9校で出題されました。表現の特徴をとらえるには、会話文や比喩の使い方、情景描写や言葉のリズム、説明的文章なら論理展開の仕方等に注意を払いながら丁寧に読んでいく必要があります。いわば「批評的に読む」力が問われているといえます。



■記述問題は増加、字数も増えている

長文記述や作文は、特に成績上位校で増加しており、字数も増加傾向にあります。たとえば駒場東邦や聖光学院、鴎友学園女子などでは120字の記述問題を、慶応湘南藤沢は150字以内、フェリス女学院は180字以内の小論文、桜蔭は200字の長文記述を出題。これらの問題では、文章の内容を踏まえて「自分の考えを書く」ことや、「自分の言葉で説明する」表現力が求められているといえます。



■「長い選択肢」が今後増える可能性も

今年度多く見られたのは、一つが120字を超える長い選択肢です。たとえば桐光学園では物語文に出てくる「ごめんね」という言葉の解釈や、そこに込められた登場人物の気持ちについて述べた約170字の選択肢が4つ示され、どれが最も適切な説明か選ぶ問題が出題されました。この他、渋谷教育学園幕張では約210字、中央大学附属では約150字、鎌倉学園、聖光学院では約120字の選択肢を出題。このような問題では、問題文だけでなく、選択肢一つひとつを精読する集中力が問われていると考えられ、今後増えていく可能性があると見られます。



■応用力や発想力を問うパズル的な問題も

また、空欄に共通する漢字や言葉を入れるパズルのような問題(慶応湘南藤沢、聖光学院など)や、慣用句や言い伝えなどから連想される動物を答える問題(鎌倉女学院)など、豊かな語彙(ごい)や発想力が求められる問題も数多く見受けられました。慶応中等部の問題は、狂言、わらべ歌、俳句などに使われている動物の鳴き声を推理して選択肢から選ぶものでした。このような問題には、単なる知識では歯が立ちません。広くさまざまな言葉にふれ、やわらかく考える力が必要だと考えられます。



■まとめ --「読む」「書く」の基礎力を

今後、大学入試で求められる「論理的思考」や応用力、表現力を問う問題は、中学入試においてたしかに「増えている」といえます。それらはすべて、国語の基本である正確に「読む」、言いたいことを人に伝わるように「書く」ことで伸ばすことができます。読んで、書いて、考える--それが結局、志望校合格への近道ではないでしょうか。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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