算数の難しい応用問題を最初から投げ出そうとします[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

算数の簡単な問題はすらすらと解けますが、難しくてわからない応用問題だと最初から投げ出そうとします。ヒントを出すとすぐ理解しますが、同じような問題を再度、出題しても引っかかります。また、落ち着きがないのか、簡単な計算ミスをよくします。

相談者:小3女子(大ざっぱ・弱気なタイプ)のお母さま



【回答】


小学3年生の今だからこそ、がんばってやり遂げたという経験をさせたい


■難しい問題に粘り強く立ち向かおうとする意欲が足りない

「簡単な問題だとすらすら解ける」が、「応用問題だと最初から難しくてわからないと投げ出そうと」する。こうした態度は、弱気なタイプによく見られる特徴です。「ヒントを出すとすぐ理解できる」わけですから能力的には問題ないのですが、難しい問題に粘り強く立ち向かおうとする意欲が少し足りないようです。

一般的に、算数が得意な子どもは、難しい問題でも何10分も考え続けることができます。時には1時間を超えることもあるでしょう。そんな子どもたちは、算数が得意だから考え続けることができるのでしょうか。もちろんそんなお子さまもいるとは思いますが、考え続けることができるようになれたから、算数が好きになったということも少なくないでしょう。粘り強く考える面白さ、そして問題が解けた時の喜び。そうした算数の楽しさは、がんばって取り組んだあとでしか味わえないものなのです。

■例題を覚えてしまえばある程度の得点はとれるようにはなる

算数をある程度できるようにするには、いくつかの方法があります。たとえば、受験参考書における各単元の考え方を指導するために挙げられている例題を集め、それらの解き方を覚えてしまえば平均点以上はとれるようになります。例題といっても基礎・基本問題だけではないので、やさしい問題ばかりではありません。単元によっては、応用レベルの問題も含まれる場合もあるでしょう。また、単に覚えるといっても、例題の数は少なくありません。意味もわからず暗記してもすぐに忘れてしまいます。しっかり定着させるためには、解き方を理解する必要はあります。とはいっても、解法の流れを理解して覚えればよいのですから、うんうんとうなりながら難問を考えるよりは楽だとは思います。実際、算数が不得意な多くの子どもたちが、この方法で算数の苦手を克服しています。

■なぜ難しい問題を長時間考える必要があるのか?

しかし、それだけの勉強では、偏差値55を超えることはなかなか難しいでしょう。超えるためには、覚えたことを活用できる力を養う必要があるのです。そして、そのためにはやはり難しい問題を長時間集中して考えられる姿勢が必要になります。

難しいこと、よくわからないことを集中して考えることは、確かになかなか骨の折れる作業です。しかし、そうした姿勢は算数ばかりでなく、すべての教科で必要です。たとえば、国語。中学入試における国語の問題は、非常に難しくなっています。特に、論説文は抽象的な言葉や概念も多く、しかも長文化してきています。場合によっては高校受験か大学受験といってもよい問題文をなぜ学校側は出すのか? 恐らく、そんな難しい文章を完全にはわからないまでも、なんとか最後まで諦めずに読み通せる受験生の読解力や意欲を見たいのだと思います。事実、そんな問題文に比べて、問いはそんなに難しいものではありません。すべてを読み通して問題文の大体の内容が理解できれば、ある程度の点数(すなわち合格点)がとれるようになっていると思います。諦めずに考えるという能力がいかに大切かということがわかります。

2020年度から一新される大学入試でも、この「意欲や物事を成し遂げる力」を問うような問題が出題されるようです。現在行われている大学入試を見直し、これからのグローバル社会で活躍できる人材を育てるための教育改革です。論理性や主体性と共に、粘り強さを問うような問題が出題されるのは、社会がそうした人材を求めているということなのでしょう。

■実力より少し上の問題で成功体験を重ねる

算数から現代の社会が求める人材の話になってしまいましたが、これは決して大げさなことではありません。大切なことは、その問題を解けるようになることだけではないのです。それと共に、長い時間諦めずに考え続けられる頭や気力を養うことです。そして、小学3年生の今だからこそ、そうした姿勢を養える時間があると思います。

なお、難しい問題を解く時には、最初から超難問ではなく、がんばれば解けそうなレベルのものから出してあげてください。実力より少し上の問題なら、応援してあげることできっと解けると思います。解けてしまえばきっとその喜びを感じられ、そうした成功体験は、より難しい問題に立ち向かう原動力になっていくことでしょう。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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