最近の教育に関する話題から 理系志向、実学志向というけれど……[高校受験]

何を学び、どんな職業に就くか

大学で学ぶ内容と将来の職業選択についてお話しします。

■理系のほうが高い就職内定率

新聞を開くと、「リケジョ」「工学女子」といった言葉が盛んに紙面に登場しています。男子だけでなく、最近は女子の間でも理系志向が強くなっています。その大きな背景は、理系のほうが文系よりも就職状況がいいことです。2か月に1回新聞で発表される「内定率」は、常に理系のほうが高くなっています。2014年3月に文部科学省と厚生労働省から発表になった数字を見ると、下の表のように9.5ポイントも理系のほうが高いのです。

■文理別就職内定率

  文系 理系
 大学全体 81.2% 90.7%
 国公立大学 82.7% 90.3%
 私立大学 80.8% 90.9%
(2013<平成25>年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査<2月1日現在>)

ただし、この数字は就職希望者のうちの就職内定率で、最初から就職をあきらめていた学生や、就活中に就職を断念してしまった学生は含まれていません。大学卒業予定者数全体からすると、この内定者の比率は63%(※文系・理系合わせた数字)まで大きく落ち込みます。

大学卒業予定者数の中には大学院進学希望者がいるにしても、およそ37%の学生が2月までに(3月発表の数字は2月の調査分)就職が決まっていないのです。そして、この数字のほうが、「氷河期」といわれる大学生の就職実態を表しているといえるでしょう。
とはいえ、新聞等で発表されるのはこの就職内定率なので、受験生はもちろん保護者のかたも「理系に進んだほうが就職には有利なのではないか」と考えるのです。また、「正規雇用者」として採用される比率も理系のほうが高いのが現状です。

■学生が増えている学部系統は実学系

では、近年どのような分野の学生が増えているか、見てみましょう。
理系志向と同様に、資格や技能を身に付けたいという実学志向が強くなっています。教育系統では幼稚園教諭や小中学校教諭の免許の取得、医歯薬以外の医療分野も、看護師・保健師・診療放射線技師・臨床検査技師などの資格の取得、家政系統(家政学部、栄養学部、生活科学部)では管理栄養士などの資格の取得ができるということで、これらの実学系の分野も年々人気が上昇しています。

薬学部、医学部の学生数が増えているのは、学歴と収入が比較的リンクしているからなのです。例外は歯学部で、供給過剰になったために都会では歯科医師が余りの状態になっています。

■全体の志向がどうあれ、自分に向いたことを

以前お話ししたように、「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就く」--アメリカのデューク大学のキャシー・デビッドソン教授がニューヨーク・タイムズのインタビューを受けた時に答えた予測です。この世代の子どもたちの大学卒業は2026年ごろ。日本もまったく同じではないでしょうか。

今、新聞等に出てくるカタカナ職種の多くは16年前にはなかったものが多かったように思うのです。職種だけではなく、現在成長している企業を見てもそのようにいえるでしょう。これからの16年はさらに変化が激しくなります。現時点で就職に有利か不利かや、どの業界が発展しそうかどうかということは、考えてもあまり意味がないような気がします。

私は一般的には定年を超えた年齢ですが、長い人生の中で多くの友人たちを見ていて思ったことがあります。それは、大社会や他人の評価ばかりに振り回されず、たとえ報酬は少なくても、自分が好きなこと、自分に向いたことをすることが大切なのではないかということです。そういう意味でも現在の大勢の志向に左右されず、お子さんがやりたいことをやらせてあげていただきたいと思います。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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