【6年生】 苦手教科の棚上げ&棚卸し法 [中学受験歳時記コラム ~いま取り組むべきこと~ 第8回]

苦手教科の棚上げ&棚卸し法

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。このコラムでは、4年生から6年生のお子さまと保護者のかたに、毎月特に取り組んでほしい重点事項を紹介していきます。
前々回は「国語」、前回は「算数」の克服法をお話ししました。今回は、全カリキュラムをひと通り学んだ6年生に特に必要な、苦手教科・苦手単元の「棚上げ・棚卸し法」について取り上げます。



苦手の「棚上げ」「棚卸し」法は教科ごとに違う

6年生は7月くらいまでに、小学校の全カリキュラムをひと通り学び終えます。この時点で、苦手な分野や単元をチェックしておきましょう。苦手はとりあえず「棚上げ」し、適切なタイミングで「棚卸し」を行うことが大切です。
なお、苦手対策のしかたは、理社国と算数で分けて考えましょう。苦手対策というと、算数にばかり時間をかけてしまい、逆に理科・社会の苦手は「覚えればいい」、国語は「日本語だから大丈夫」などと考えてなかなか取りかからないかたが多いのですが、むしろ理社国の苦手対策に、より早く取りかかるべきです。

●算数--むしろ棚上げする勇気を

現状では、どの単元はどこまでできるかをきちんと把握しておくだけでOKです。「割合」は基本問題ならできる、「比の値」は基本も少しあやしい、といった具合にチェックし、基本問題まではなるべくできるようにしておきましょう。
正直に申し上げますと、算数の苦手は時間をかけても完全に克服できるとは限りませんので、今はむしろ「棚上げする勇気」が大事です。受験が迫ってくる夏休み以降になると、どの単元やどのレベルの問題に優先して取り組むべきか見えてきますし、塾の先生が志望校に応じて優先順位を付けてくれる場合もあります。

●理科・社会--「先生」を選んで早めに解消

特に理科・社会の苦手は、積み残しのないよう、早めに棚卸しをしておく必要があります。なぜなら、理科・社会は全単元の8割以上はできないと、難関校に合格するのが難しくなるからです。
理科・社会は分野によって好き嫌いが分かれます。理科で苦手になりやすいのは、てんびんとてこ、水溶液の性質、天体の動きなど。社会では、地形の成り立ちと市街地の関連といった地理分野が苦手なお子さまが多いようです。いずれも論理的な思考を必要とする分野なので「理屈がわからない」から苦手になるのです。
また、歴史上の出来事など、扱うテーマに「興味が持てない」から嫌い、というかたも多いですね。

理科・社会の苦手克服には、一般に算数ほど時間がかかりません。教え方の上手な人に、一定の時間をかけて教えてもらえば必ずできるようになります。保護者のかたが教える場合は、あらかじめ複数の参考書を下読みして、どのような解説のしかたがいちばんわかりやすいか研究しておいてください。ご自身で教えるのが難しければ、その分野が好きで得意な人に頼むのがいちばん。「誰に」「どのタイミングで」教わるかを、保護者ご自身でマネジメントすることが大切です。これについては、あとで詳しく述べます。

●国語--日々の学習の中で克服を

国語も同様に、「説明文は苦手」「心情の読み取りができない」といった苦手意識は早めに払しょくしておくことが必要です。特に必ず問われる「指示語の指す内容」や「段落どうしの関係」などは、おのおのきちんと時間をとって解説してあげましょう。
国語の苦手克服については、第6回の内容も参考にしてください。



苦手だからこそ、ベストの指導者にベストタイミングで教えてもらう

お子さまの苦手な単元は、たいてい誰もがつまずきやすいところです。つまり、通り一遍の指導では、皆と同じようにつまずく。苦手だからこそ、ベストの指導や教材を選ぶ必要があります。
また、受験対策のカリキュラムは、必ずしも子どもが理解しやすい系統的な教え方になっているとは限りません。ですから、習ってすぐ理解できなかったとしても、お子さまを責めるべきではありません。まずは苦手克服のために、お子さまにどんな体験をどのタイミングでさせるのがよいか、保護者ご自身で考えてみてください。

たとえば算数の「比」が苦手だったので、理数系の得意なお父さまに何日か早く帰宅してもらい、丁寧に教えてもらったらわかるようになった、というかたもいらっしゃいました。「てんびん」がわからなければ、理系の大学に通う親戚のお兄さんに来てもらって、実物を使って遊びながら教えてもらう、歴史好きのお友達に、そのかたが好きな時代の流れやおもしろいエピソードを話してもらうといった方法もあります。そこで得た知識が、たとえ受験に直接役立たなくても、お子さまの中に「歴史の流れってこういうものか」という実感さえわけば、苦手意識はかなり払しょくされるはずです。また、優れた科学番組や教養番組を一緒に見るのもおすすめです。好きになるとまではいかなくても、その分野についていきいきと話す人の姿にふれるだけで、子どもの意識は変わってきます。

なお、学校でその単元を習う前に苦手克服をしておくと、学校ではその単元の授業で手を挙げたりでき、子どもたちを「得意」がらせることができます(笑)。このように、塾と学校の学習タイミングのずれを、うまく利用するのもおすすめです。



適性検査風の総合問題で苦手克服!

その単元の学習内容に、まったく興味が持てないから嫌いという場合は、中高一貫校の「適性検査」によく見られる総合的な問題から入る、という方法もあります。地理が苦手なら、地形図や産業構成のグラフなどからその町の事情を読み解かせるような総合問題に取り組ませてみる。その際、参考書や辞書などの資料は自由に参照してよいことにしましょう。課題に当たり、自分で調べたり考えたりする習慣が付くと、自然に興味関心もわいてくるものです。

苦手意識は、6年生のころに固定しがちです。「とっつきにくいから嫌い」であれば、とっつきやすくなる機会を提供してあげればよいのです。子どもの意欲が喚起されるように、ぜひ工夫してあげてください。

次回のテーマは「ほめる? しかる?」。家庭での学習指導法について取り上げます。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

子育て・教育Q&A