【4年生】 国語は「本さえ読めば大丈夫」? [中学受験歳時記コラム ~いま取り組むべきこと~ 第6回]

国語は「本さえ読めば大丈夫」?

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。6年生の1月~3月に行われる入試に対応するために、毎年の受験生活は○月にはこれを、と目標とするべきスケジュールがあり、それは歳時記のようにも感じられます。
このコラムでは、4年生から6年生のお子さまと保護者のかたに、毎月特に取り組んでほしい重点事項を紹介していきます。
5回目までに続き、今回は、国語が得意になる方法について取り上げます。


4年生にとって「読解」は初体験

4年生になると、国語が苦手というお子さまが増えてきます。その大きな理由は、「読解問題」というものにふれるのが初めてだから。それまでは文章を“何となく”読んでいるだけでも問題なかったのに、登場人物の気持ちなど、文章の解釈を問われ、しかも“正解”を求められる。読解問題は小学校ではあまりやらず、本来なら中学の定期テストで初めてふれる子が多いのです。ですから、4年生で読解ができないのは当たり前と考えてください。

国語の苦手について学校や塾の先生に相談すると、「ちゃんと読書をしていますか」という答えが返ってくることが多いと思います。しかし、本さえ読めば国語が得意になるかというと、そうともいえません。
国語が得意になるには、文章に描かれている内容を自分なりに再現する力が必要です。この力は「想像力」と言い換えてもよいでしょう。


「読む」ことは間接体験 実体験と結び付ける工夫を

「読む」という行為は、「間接体験」です。文章を通じて、情景を自分なりに再現し、筆者や登場人物が経験した出来事や感情、考え方を追体験すること。文章中の体験を再現するためには、ある程度の実体験の積み重ねが必要です。

たとえば、文学や映像作品では、登場人物の心情と情景がセットで描かれることがありますね。主人公がつらい気持ちの時、空にも黒雲が広がり、雨が降っているとか。雨にぬれてとぼとぼと歩いた経験があれば、「ああ、主人公はつらいんだな」と感覚でわかります。ところが、実体験が乏しいために、情景描写と感情がすぐには結び付かない子どもも多いのです。大人はつい、感情は生まれつき備わっているものだ、と考えがちですが、実は感情も経験を通じて育っていくものです。たとえば、身近な人との別れを通じて悲しみを知ったり、友達とのけんかを通じて怒りの感情を学んだり。欧米には「感情教育」という考え方がありますが、日本では近代教育が始まった際に、これが抜け落ちてしまったようです。
ですから、文章を読み取る力を付けるには、さまざまな実体験をすることと、体験と文章の内容を想像で結び付ける訓練が必要です。国語が得意な子は、これが自然にできているわけです。


五感を使って「読む」「書く」力の基礎をつくる

「本を読みなさい」と言っても、本好きでないお子さまは、自分からは読まないと思います。それよりもぜひ、寝る前に本の「読み聞かせ」や「読み合わせ」をしてあげてください。「読み合わせ」は、お子さまと交代で読むこと。お芝居のように、役割を決めて読むのも楽しいと思います。本は、お子さまが喜ぶものなら何でもかまいません。勉強の時間に、国語の問題文を使って、一緒に「読み合わせ」をするのもよいですね。

お子さまが読むのを聴いていると、内容を理解しているか、よくわからずに読んでいるかが、保護者のかたにもわかってくると思います。たとえば、大人なら主人公がつらい気持ちだとすぐわかる場面でも楽しそうに読んでいるとか。そんな時は「違うでしょ」などと否定せずに、ちょっと声をかけて、お子さまが想像力を働かせる手助けをしてあげてください。たとえば、「このシーンは雨でしょう。あなたが何か失敗しちゃった日、雨が降ってきて、自分だけ傘がなかったらどんな気持ちになる?」というふうに。
また、読んだあとで子どもたちに感想を自由にしゃべってもらうと、とてもおもしろいですよ。大人が思いつかない独創的な解釈だったりしますが、これも決して否定をせずにおもしろがって聞いてあげてください。自由な解釈の否定は、子どもの想像力そのものの否定につながります。

絵が好きなお子さまなら、文章を絵に描いてみるのも非常によい方法です。この作業を通して、語り手の視点や人物どうしの関係などを、注意深く読み取るくせが付きます。初めのうちは、特に印象に残った人物だけを描いたり、文章中に出てこないものも想像して描いたりするお子さまが多いと思います。それはそれで決してまちがっていませんが、慣れてきたら、「主人公のAちゃんは、この景色をどこから見ているのかな?」「BさんとCさんは、どこにいるのかしら?」などと声をかけて、正確に表現する手助けをしてあげてください。
逆に、絵や写真を文章にしてみるのも、「書く」力を付けるよいトレーニングになります。


読解問題は、「指示語」と「接続語」のみでOK

なお、読解ができないからといって、いきなり読解問題ばかり解かせるのは逆効果です。登場人物の心情を問われても想像がつかないまま、答えだけ丸暗記するようなまちがった問題演習をくり返していると、想像力という大切な基礎力が育たないうえ、ますます国語が嫌いになってしまう恐れがあるからです。
ただし、「これ」「その」などの指示語が指す内容を問う問題、「それで」「しかし」など、適切な接続語を選ぶ問題については、丁寧に解説してあげてください。指示語と接続語の問題は、少しのトレーニングで必ずできるようになります。

語彙(ごい)を増やすことも国語力アップに必要ですが、そのために読む本は、子どもが好きなものなら図鑑でも実用書でもかまいません。マンガも、語彙を増やすためには大いに役立ちます。「もっと読みたい」というお子さまの意欲を大切にしてあげてください。

次回は、5年生に多い「算数の伸び悩み」の原因と、その対策を取り上げます。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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