公立高の入試もスピーキングの時代に?

東京都教育委員会が、公立中学校の全3年生を対象にした英語のスピーキングテストを2021年度に開始することを決めました。2022年度の都立高校入試(18年度の小学校6年生が受験)から、結果を活用する方針です。
入試英語をめぐっては、2020年度から「大学入学共通テスト」(現在の大学入試センター試験を衣替え)の一環として民間の資格・検定試験を活用した4技能(聞く・読む・話す・書く)の評価が始まります(21年度大学入試から活用、対象は18年度の高校1年生から)。都教委の取り組みは全国からも注目されており、公立高校入試でもスピーキングの力を測ろうとする動きが広がる可能性があります。

4技能測定にペーパーテストの限界

英語教育をめぐっては、4技能をフルに活用したコミュニケーション能力の育成が重視されています。
2020年度から全面実施となる小学校の新学習指導要領で高学年の英語が教科化されるのも、小学生のうちから4技能を導入して、中学校・高校でのコミュニケーション能力育成につなげたいからです。
しかしペーパーテストが中心の入試では、「読む」「書く」に加えてヒアリングで「聞く」は測れても、「話す」力を十分に評価することができません。そこで国も共通テストの枠組みの中で、民間の資格・検定試験(現在、7団体の23種類 を認定)の結果を情報提供する仕組みを導入することにしました。

一方、高校入試では、調査書を通して中学校時代の英語4技能の成績が評価されているというものの、一斉入試ではスピーキング力を測るのは限界があります。
そうした中、大阪府の公立高校入試 では資格・検定試験を換算した点数と当日の学力検査のうち高いほうを評価している他、福井県立高校入試 では資格・検定試験で取得した級によって加点する方式を取る(いずれも資格・検定試験の種類は教委が指定)などの取り組みもあります。

都内私立や他県にも広がる可能性

公表された実施方針によると、スピーキングテストは、ヘッドセット付きのタブレット端末から出題を聞き、解答音声を録音する方式で行います。実施団体は民間の資格・検定試験実施団体から公募し、会場も大学などの外部施設を利用しますが、あくまで都教委が監修した独自のテストとして開発するものであり、出題内容は学習指導要領に準拠することはもとより、検定教科書や都教委指定の教材にも基づくとしています。
受験対象は都内の公立中3年生全員と、都立高校の受検を予定する者ですが、都内私立高校はもとより、他の道府県にも活用してもらえるよう情報提供・交換を行っていくとしています。テストは独立採算で、都内の公立中生徒の受験料は都教委が負担しますが、受験者が広がれば受験料も安くすることができます。

新しいテストが導入されることで「子どもが大変だ」「何でウチの子の学年から?」などと疑問に思う人もいるかもしれません。しかし現在でも、英語の授業ではスピーキングも含めた4技能によるコミュニケーション能力の育成が重視されています。テストのためというよりも、国外はもとより国内にいても異文化・異言語を持った人とのコミュニケーションが求められるグローバル時代に必要な力を、子どもたちに身に付けさせる大きな弾みとしたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※「東京都中学校英語スピーキングテスト」について
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/press_release/2019/release20190214_04.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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