経済界、使える英語力を求める

日本経済団体連合会(経団連)は、政府の第3期教育振興基本計画の策定に向けた意見書をまとめました。経済界の立場から今後の日本の教育の在り方に注文を付けるためのもので、幼児教育の無償化、学校教育におけるICT(情報通信技術)の整備促進、子どもの英語力の向上などを求めています。

課題設定・解決能力や文理越えた教養も

政府は現在、第2期教育振興基本計画(2013~17<平成25~29>年度)を実施しており、次の第3期教育振興基本計画(18~22<同30~34>年度)の策定を中央教育審議会で審議しています。経団連の意見書は、2017(平成29)年夏に予定されている中教審の「審議経過報告」を前に、経済界の立場から、同計画に盛り込むべき内容などについて提言しました。

まず、これからの時代には、「グローバルにリーダーシップを発揮し、イノベーションを起こして新たな価値を創造できる人材」が求められると提言。具体的な素質・能力として(1)課題を設定し主体的に解を作り出す能力(2)対外的発信力(3)外国語によるコミュニケーション能力(4)文理の枠を越えた幅広い知識と教養(5)情報を取捨選択して使いこなす情報活用能力(6)多様性の尊重……を挙げています。言い換えれば、これらの素質・能力が、経済界が子どもたちに求めている力だと言えるでしょう。

高等教育より幼児教育の無償化

具体的施策としては、「就学前教育の無償化を迅速に進めるべきである」とする一方、大学など高等教育に対しては、現在の給付型奨学金や無利子奨学金の拡充などを挙げるにとどめています。これは、高等教育よりも幼児教育への財政投入のほうが投資効果は高いと米国の研究などで証明されているからです。

またOECD加盟国の中でも最低クラスである教育への公財政支出の低さについて「国力の弱体化につながりかねない」と批判しながらも、教育財源は「国民から広く薄く負担を求める税財源にすべきである」として、こども保険や教育国債などの考え方に反対しています。教育の予算の充実を求めながらも、その投資の効果や効率性を重視しているようです。

一方、教育内容などについては、思考力・判断力・表現力の育成を重視するアクティブ・ラーニング(AL)の推進を強く求めており、大学入試対策などのためにALが形骸化しないよう、思考力や表現力を問うような大学入試に改革していく必要があるとしています。現在、文部科学省が進めているセンター試験に替わる新テストの導入などの改革は、経済界の要請に沿ったものだと言えるようです。
また意見書は、小学校での英語の教科化など、使える英語を目指す次期学習指導要領を高く評価しており、今後は国・地方自治体などによる明確な英語の教育目標の設定、全国学力テストへの英語の追加、外部人材の活用などにより、子どもたちの英語力の着実な向上を目指すとしています。

さらに意見書は現在、ICT環境の整備に地域格差があることを指摘し、第3期教育振興基本計画では、学校のICT環境の整備を国が主導して取り組むべきであるとしています。

今後の教育について経済界は、思考力や表現力などの育成、使える英語力の向上、ICT教育の環境整備などを強く求めていると言えるでしょう。

※第3期教育振興基本計画に向けた意見
http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/049.html

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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