中学校学習指導要領外国語のポイント(その3)語彙の充実

前回まで、中学生の英語力の課題である「語彙(ごい)や文構造を活用する力が不足」していることについて解決策をご紹介してきました。今回からは、文章レベルの課題について考えていきたいと思います。


課題2:内容的にまとまりのある一貫した文章を書く力が不足

前回、「日本語との違いに留意して指導する」ことについて考えましたが、実は日本語と英語の決定的な違いは、その語順にあります。日本語では「太郎は花子のことが気に入っています」も「花子のことを太郎は気に入っています」も同じ意味を表しますが、英語では「Taro likes Hanako.」と「Hanako likes Taro.」では意味が変わってしまいます。日本語には、「は」「が」「を」「から」のような助詞と呼ばれる語があり、それらが文の意味を決定する大きな要因になっています。一方、英語には助詞がなく、語順が文の意味を決定する要素となっています。

英語の語順とその構成要素を知らなければ、正しい英文は作れませんし、長文もどこで区切って読めばよいかわからず、意味を取り違えたりします。英語の語順は、英文法の根幹部分であり、それを知ることが中1から中2にかけての大切な勉強となります。
〔例〕(1)わたしは(2)今日(3)学校で(4)特殊な眼鏡を使って(5)3D映画を(6)見ました。
   →(1)I (6)watched (5)a 3-D movie (4)with special glasses (3)at school (2)today.

このように、日本語と英語は主語を除くと、だいたい逆の順になっています。この文は
『だれ何が/は⇒どうする⇒だれ何を/に→どのように→どこ→いつ→なぜ』という、英語でよく使われる文型であり、この語順を知っていれば、あとはそれぞれの要素であるセンスグループ(意味の固まり、with special glasses, at schoolなど)を覚えていけばよいのです。つまり、語順を知ったうえで語句を覚えてこそ、英語力向上が望めるのです。


解決策(1)語彙を充実する(現行の900語から1,200語に引き上げ)

現行の中学校英語教科書は900語が扱われており、新指導要領下での教科書は1,200語に増えることになりました。これは、言語活動を充実させることを目指した改訂です。300語の増加ですが、小学校での英語ノートにも、音声だけとはいえ、中学校英語教科書に載せられている語のうち200語近い語が入っているという調査結果もありますので、純粋に300語増えるのではないと考えてもよいと思います。しかし、やはり単語の数が増えることは生徒にとって負担であることには間違いなく、いかにしてそれらの語を暗記するかが大きなポイントになってくると予想されます。


語句の暗記に必要なのは、その語句が使われている文を覚えること

語句を暗記するためには、ひたすら単語を書く練習をするのではなく、それらの語句が使われている文を覚えることが重要です。市販のドリルの中にも、単語の問題だけでなく文の問題もたくさんありますので、答えを書いて採点して終わるのではなく、それらをさまざまな方法で音読して、頭と目と口と耳を駆使して覚えることが大切です。
わたしは中学校で教えていた時、≪Talk and Talk≫という教材を使って生徒の語彙を増やしていました。モデルダイアログの一部を入れ替えて新しい文を作る教材なのですが、全問正解になるまで書かせ、次にそれらを徹底的に音読させ、どの問題を指されても指定された時間以内に言い切るという活動をさせていました。

ドリルで語彙を増やしたら、次にある程度自由度があるライティングの活動をさせました。たとえば、日記、週末や長期休暇中の予定、エッセー、レポートなどです。実は、我々が普段しゃべっていることを録音してみると、ほとんど中2までの英語で表すことができます。それぐらい、中1、中2の英語は日常生活に密着しているのです。ですから、上記のようなライティングをすることで、重要語句や表現を何度も繰り返して使うことになります。増加した語数に対応するためには、音読と文章の中で使うことをおすすめします。


プロフィール

田尻悟郎

田尻悟郎

関西大学 外国語学部 教授。26年の公立中学校勤務を経て現職。NHK『わくわく授業』『プロフェッショナル』等に出演。2004年に「世界のカリスマ教師100人」に選ばれる。新指導要領策定や教科書開発に関わる。主な著書:『田尻悟郎の楽しいフォニックス』(教育出版)

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