中学校学習指導要領外国語のポイント(その2)文法と言語活動

前回に引き続き、中学生の英語力の課題である「語彙(ごい)や文構造を活用する力が不足」していることについて解決策をご紹介していきます。


解決策(2)文法を言語活動と効果的に関連付けて学習する

明治以降、日本は欧米の先進諸国に追いつくため、情報を取得する手段として英語を学習しました。当時は欧米人と頻繁に交流していたわけではありませんので、書物から知識や情報を得ることが中心で、英語教育も「読む」「書く」「聞く」「話す」という4技能のうち、「読む」に特化された学習が行われていました。日本語と構造が違う英文を理解するためには文法の知識が必要で、まるで漢文のように返り点やレ点を打ち、英文を読解しました。
その文法訳読式の授業から、最近はコミュニケーション中心の授業に変わってきたことは、周知の通りです。しかし、コミュニケーション活動が単なるゲームになったり、通じることを優先しすぎて文法学習が疎かになったりしました。その結果、生徒の学力は下がり、高校の先生方からは、「最近の新入生はコミュニケーション活動やゲームは好きだが、高校のように正確さを求める座学の授業にはついてこられない」という声がよく聞かれるようになりました。


新指導要領では、文法の知識を利用してコミュニケーションを行うことを重視

新しい指導要領は、文法訳読式から口頭のコミュニケーション活動へと、振り子が両端に揺れてしまった大改革から、文法の知識を利用してコミュニケーションを行うという、両者を融合した英語学習を求めています。これは当然と言えば当然のことで、文法の知識なくして英文は作れませんし、読解もできません。文法は英文を作る設計図であり、設計図を取得することが目的ではなく、手に入れた設計図を使って品物を作ってこそ意味があります。つまり、設計図を持つことと、それを使って品物を作ることと、どちらが欠けてもいけないのです。「文法を言語活動と効果的に結びつけた指導」とは、文法の知識を使って、意味のある情報の授受をするなかで、英語という言葉の操作に慣れていくことを意味しているのです。


解決策(3)関連のある文法事項はまとまりをもって整理する

教科書を1ページずつ進める授業形式を取る先生は、ひとつの文法事項を授業で練習させたら次の文法事項へ移り、さらにその次のページへと進むので、既習事項が教科書で再度出てこない限り、生徒はそれらの文法事項をその後ほとんど使うチャンスがないというケースが多々見られます。そのことが定着を妨げているわけであり、新指導要領では、既習事項をいくつか集めて統合的な活動を折々に行うことによって、繰り返し使わせて定着を図るよう求めています。

たとえば、willとifとwant toを学習したら、旅行会社から不要になった海外旅行パンフレットを種々大量にもらってきて、生徒に自分が行きたい国のツアーを選ばせ、「夢の旅行」というテーマでエッセーを書かせます。すると、生徒はwillとifとwant toを必然的に使うことになります。さらに、添削指導を受けたのちに清書したエッセーを暗記し、外国人英語指導助手の先生に語ると、定着度が高まります。
また、海外の学校と日本の学校の違いを調べて感想を書かせたりすると、must, mustn’t, have to, don’t have to, want to, don’t want toが頻出します。自分の思いを英語で表す時、生徒はそれぞれの表現の意味や違いを体感するようになりますし、間違いが明らかになり、それを訂正する過程で深く理解し始めます。一度学習したあと、時間をおいて学習し直すことは、語学ではとても大切なことです。「関連のある文法事項はまとまりをもって整理する」という提案は、教師が黒板に整理して書くことではなく、生徒が使う中で整理し始めることを期待しているのです。


解決策(4)日本語との違いに留意して学習する

たとえば、am, is, areは「~は…です」と教えると、「わたしは英語が好きです」を「I am like English.」と書いてしまう生徒が出てきます。be動詞は「イコール」に当たる機能を持っており、「I am a student.」は「わたし=1人の生徒」というふうに、左右の語句をつなぐ役をします。
また、be動詞は「いる、ある、入っている、おいてある、来ている、行っている」など、存在を表すこともよくあります。「It’s in my bag.(それはわたしのカバンの中に入っています)」や、「Your bag is on your desk.(あなたのカバンは机の上に置いてありますよ)」、「Your mother is here.(あなたのお母さんはここに来ておられますよ)」、「My father has been in London since last month.(父は先月以来、ロンドンに行っています)」など、下線部はすべて存在を表しており、be動詞で表します。get into(入る)、put(置く、入れる)、come(来る)、go(行く)などは移動を表す語であり、上記の文では使いません。

このように、日本語と英語の違いを知り、英語を感じることによって正しく使う力を身に付けていかなければなりませんが、be動詞ひとつとっても、生徒がちゃんと理解しているかどうか不安なところです。だからこそ、学習した英語表現を使ってみて、間違いを知り、学習し直すことで伸びていくことが大切なのです。


プロフィール

田尻悟郎

田尻悟郎

関西大学 外国語学部 教授。26年の公立中学校勤務を経て現職。NHK『わくわく授業』『プロフェッショナル』等に出演。2004年に「世界のカリスマ教師100人」に選ばれる。新指導要領策定や教科書開発に関わる。主な著書:『田尻悟郎の楽しいフォニックス』(教育出版)

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