中学校学習指導要領外国語のポイント(その1)語彙と文構造の理解

2012(平成24)年より、中学校の新指導要領が全面的に施行されます。指導要領の改訂は、教育の改善と生徒の学力向上を目指して行われるわけで、今回は何が改善点とされてきたのでしょうか。ここでは、中学校外国語の新学習指導要領をひもとき、現在の中学生の英語力に関する課題と解決策を考えてみましょう。


課題1:語彙(ごい)や文構造を活用する力が不足

漢字は、テストの直前に猛練習をして良い点を取っても、その後、たとえばメモや作文の中でそれらの漢字を使おうとしなかったり、思い出せなくて平仮名で書いてしまったりすると、結局は忘れてしまいます。漢字学習のプロセスは以下の通りです。

(1)漢字の形と読み方を知る
(2)たくさん練習して覚える
(3)文や文章の中で使う

英語の語句や文も同様で、(1)意味・構造を理解したうえで、(2)暗記し、(3)文や文章の中で使うことによって覚えていくものです。しかし、最近は英語の教科書本文を暗記することが減っていますし、重要文や教科書本文を応用して自分の言葉として使ってみることも、十分な時間が割かれているとは言えません。

さらに、小学校では英語活動の授業で音声を中心に学習するのですが、中学校では文字を読み書きしなければならず、その時点でつまずいている生徒も少なくありません。新しい指導要領を読むと、それらの問題に対する対応策が見えてきます。


解決策(1)発音と綴(つづ)りを関連づけて覚える

わたしは長年中学校で英語を教えていましたが、転勤した学校で2年生や3年生を担当すると、文字が読めない、書けない生徒がかなりいました。それらの生徒の特徴は、たとえばcountryは全体で「カントリー」と読むのだと思っており、cが[k]、ouが[∧](couple, touch, young, troubleなどのouも同じ読み方)、nが[n]、tが[t]、ryが[ri]であり、それが合体して[k∧ntri]と読むということを知りませんでした。つまり、countryをひとつの漢字のように読んでいたのです。「承る」の「承」という漢字のどの部分が「う」で、どこが「け」「た」「ま」「わ」かわかりませんが、英単語も同様だと思っていたようです。


英語の綴りにはルールがある!

英語の綴りには、ルールがあります。専門用語でphonics(フォニックス)と言います。わたしは西洋のフォニックスとは少し違う、日本の中学生に合ったフォニックスの指導法を開発して中学校で教えてきましたが、高2の時に1年間留学し、高3で帰国してストレートで東大に合格した中学校時代の教え子が、「自分は中学校時代にフォニックスを習っていたので、東大に一発合格できました。だから、早くフォニックスの本を書いてください」と言ってくれたので、数年前に『楽しいフォニックス』という本を出版しました。彼は、「フォニックスの知識を使うと、新出単語を見てもだいたい読み方がわかったし、発音記号で確認したあと正しく発音して口に覚えさせておくと、テストでは発音を思い出せば綴りは自然に書けた」と言っていました。

しかし、日本の大学でフォニックスの指導法を教授しているところは多くありませんし、日本の中学校現場で試行錯誤しながら生徒にわかりやすいフォニックス指導をなさっている先生は、少ないのが現実です。わたしは30年近くフォニックスを教えてきましたが、学問としてではなく、カルタで遊ぶうちに文字のルールに気が付くよう仕向けていました。


英語学習で役立ったのは、「語順の知識」と「フォニックス」

以前、わたしが中学校で担当した生徒たちが高校を卒業する時、高校での英語学習についてのアンケートを実施したことがあります。その中の、「あなたが中学校の3年間に学習した/取り組んだことで、高校に入ってからも役に立ったと思うものにチェックを入れてください。いくつでもかまいません」という設問に対する回答の上位3項目が以下の通りです。
1位: 語順の知識(88%)、フォニックス(88%)
3位: 「過去・現在・未来」×「単純形・進行形・完了形」などの、時を表す表現(82%)
このように、文字と音のつながりを知ることは、長年にわたって英語「楽」習の手助けとなるのです。


プロフィール

田尻悟郎

田尻悟郎

関西大学 外国語学部 教授。26年の公立中学校勤務を経て現職。NHK『わくわく授業』『プロフェッショナル』等に出演。2004年に「世界のカリスマ教師100人」に選ばれる。新指導要領策定や教科書開発に関わる。主な著書:『田尻悟郎の楽しいフォニックス』(教育出版)

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