「話せる! 伝わる!」 英語をやる気にする第一歩[こんな先生に教えてほしい]

毎週のように学校を訪ね、たくさんの授業を見ています。そして、先生方から授業への想いを聞いています。「NHKデジタル教材」という番組とWebを組み合わせた教材作りや、全国のとびきりの授業を伝える番組を制作するためです。そのなかで、「こんな先生に教えてほしい」と思った先生方のことを書かせていただきます。

今回は、埼玉県で中学2年生に英語を教えていたe先生の授業をご紹介します。
e先生の授業が「いいな」と思うところは、「英語は実技教科」と捉えている点です。言葉を換えれば、「学んだことがすぐに役立つ」ことを目指しているところです。
e先生は、理想の授業を次のように話しています。
「『理解する』よりも『使って身に付ける』を優先させる。そのために、『英語が使えた』と実感できる機会を教室の内と外に提供する。そして、『英語を使うと、とっても楽しい』『もっと英語を使いたい』と思って卒業する生徒に育てること」
このような理想の授業を実現するためのe先生の授業のキーワードが「基礎トレーニング」「日常会話」「晴れの舞台」です。

1)基礎トレーニング
表情豊かに声を出す。そのために、トレーニングする。
前にも書きましたが、相手に伝わるように話すことは、トレーニングを積むことで身に付けられます。でも、日本では、意識してトレーニングを積む機会は少ないのが現実です。
だから、e先生は、授業の始めに、みんなで歌います。声を出す機会を作るのです。でも、ただ歌うだけではありません。歌うことで気分も盛り上げる。教師と生徒で共有している到達目標に向かって声を出す、というねらいを込めて歌うのです。
ここでの目標とは、先生が用意した晴れの舞台です。トレーニングは、晴れの舞台があるから気合いが入ります。
「基礎トレーニング」には、「言葉の学習をとおして生徒の成長を応援できたら幸せ」というe先生ならではの思いが込められています。

2)日常会話
普段使っている言葉を使って、自分の気持ちを英語で表現できるように……。
これがe先生が目指しているところです。そのために先生は、副教材にラジオ番組「新基礎英語」を使っています。理由は、恋愛や学校生活のほか、日常会話で使う内容が扱われているからです。
たとえば、
がんばれ……Go for it.
いいかがげんにしてよ……You’re kidding.
まさか ありえない……No way!
など身近で、すぐに使える感情表現です。
授業を終えたあと、生徒たちが、つい声に出してみたいと思うような表現です。
そして、ここで学んだことを使って、晴れの舞台である寸劇作りへと授業は展開していきます。

3)晴れの舞台
e先生は、半年に1回、学んだことを活かして、寸劇作りを行い、みんなの前で発表しています。
「新基礎英語」で学んだ表現を元に、ストーリーやセリフは、生徒自身がグループで考えます。生徒たちは、「まさか!」「冗談じゃないわ!」「マジ?」など学んだ言葉を盛り込んでいきながら、思い思いにストーリーを考えます。
たとえば、1万円を拾った女の子に天使と悪魔がささやくという設定。
決断を迫るセリフ「どっちなの?」では、テキストを見直し、「which」を使うことを思いつきました。また、「Like」を使わないほうがよいのではと「choice」という言葉を見つけ出しました。
できたのは、「Which is your choice?」です。
 
日本語と英語の違いを実感しながら、創造する楽しさに気付いていきます。
インプット、インタラクション、アウトプットの活動が有機的に結びついた授業になっています。

e先生は、こうしたスキットを活用した授業のあとは、実際に自分たちを取り巻く現実の世界のものに発展させるそうです。
「学んだことがすぐに役立つ」という根っこがしっかりしたe先生の授業は、生徒のやる気がわき出す授業です。

プロフィール

桑山裕明

桑山裕明

NHK編成局編成センターBSプレミアムに所属。これまでに「Rの法則」、「テストの花道」、「エデュカチオ」、「わくわく授業」、「グレーテルのかまど」「社会のトビラ」(小5社会)、「知っトク地図帳」(小3・4社会)「できた できた できた」、「伝える極意」「ひょうたんからコトバ」などの制作に携わる。毎週のように学校を訪ね、たくさんの授業を見ている。

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