小学校英語はどこへ向かうのか(6)必修化の先にある小学校英語の姿とは[英語レポート]

小学校英語の目標とは?

これまで、「小学校英語はどこへ向かうのか」というタイトルのもと、日本における小学校英語必修化についてさまざまな側面から考えてきました。そのようななか、2月に新しい学習指導要領案が公表され、小学校英語(外国語活動)については次のような目標が示されました。
「外国語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う」
この目標はその先の中学校・高校での「英語教育」とどのようにつながるのでしょうか。最終回となる今回は、日本の英語教育全体において、必修化で求められる小学校英語の役割や、その先にある小学校英語の姿について考えてみたいと思います。

日本の英語教育の目標は「仕事で英語が使える人材の育成」

学校での英語教育について考える前に、日本全体で英語教育政策がどのように立てられているのかについて見てみましょう。現在の日本の英語教育は、「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」(2003(平成15)年3月)に沿って改革が進められています。この中で示されている最終目標が「大学を卒業したら仕事で英語が使える」人材の育成です。政治・経済はもとより、現在の日本はさまざまな分野・領域で世界の国々と深く関係し合っています。今後もより一層、多くの分野で世界の人々とのコミュニケーションができる人材が必要になってくるでしょう。
現在、多くの国では英語教育は国家戦略の一つとして考えられていますが、日本でも専門分野に必要な英語力や、国際社会で活躍する人材に求められる英語力を身に付けた人材育成は、国家的な課題であり、前述のような行動計画が立てられたのです。

各学校段階での英語教育の目標とは?

この大学卒業段階での目標に向かい、高校、中学校、さらに小学校で段階的に教育を進めていくことが求められています。行動計画の中では、中学校卒業段階で「英検3級程度」(身近な話題について平易なコミュニケーションができるレベル)、高校卒業段階で「英検準2級から2級程度」(日常的な話題について通常のコミュニケーションができるレベル)が目標として掲げられています(いずれも卒業者の平均)。これに対して、実態はどうなのでしょうか。文部科学省が行った調査によれば、中学校・高校ともにこの目標をクリアしていると思われる生徒は全体の3割程度にとどまっているようです。
この現状を踏まえ、2012(平成24)年度より中学校では各学年週1時間授業が増え、他教科に比べても英語の授業時数が最も多くなる見通しです。また、高校でも2013(平成25)年度からは英語の科目が再編される予定で、中学校・高校の英語教育を強化していく方向性が強く打ち出されています。

小学校英語の果たす役割とは?

このように、中学校では英語の基礎力を、高校ではこれを発展させて通常のコミュニケーションに困らない英語力を、そして大学では専門領域の高度な英語力を身に付けさせるという流れの中で小学校英語が始まるわけですが、そこにはどのような役割が求められるのでしょうか。
新しい学習指導要領案によれば、これまで中学校段階での目標にあった、英語を聞いたり話したりすることに「慣れ親しみ」という表現が中学校の目標からは削除され、小学校英語の目標に掲げられています。これまで中学校で担っていた英語教育の一部(主に「聞く」「話す」といった音声面)を小学校に移し、中学校では「読む」「書く」まで含めてバランスのよい英語力を育てて次につなげる、という方向です。

しかし、冒頭で紹介した小学校英語の目標は、「…外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う。」というように抽象的な表現にとどまっています。小学校英語の授業時数(小5、小6合計)は70時間。音声面中心とはいえ、この時数の中でどこまで子どもの「素地を養う」ことができるのかは議論の分かれるところでしょう。
今後、小学校から大学まで一貫した英語教育で高い目標に向かうのであれば、その素地を養う小学校英語に求める役割も大きくなっていくものと思われます。そうなれば、小学校においても英語が国語や算数のような教科になる時代がやってくるのかもしれません。すべては、これから必修化される小学校英語の成否にかかっていると言えるでしょう。

<参考>
調査データクリップ! 子どもと教育(Benesse教育開発センター)

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