イスラエル人のお友達 第12回 [Oh,my Gooodness!]

親子で英語圏に住み、現地の学校に行きながら英語を学ぶ……。3歳の娘と母親である筆者は、夫のアメリカ転勤のために、そんな理想的な環境に飛び込むことになりました。果たして本当に「子どもは英語にすぐ慣れるから大丈夫」? アメリカに住みながら英語を学ぶメリットとデメリットとは? 筆者のアメリカ生活をとおして、日本に住むご家庭では、どんな取り組みができるのか考えていきます。
※「Oh,my Gooodness!」とは、「あらまあ!」という驚きを表すことば。

ある朝、保育園の前に車を止めると、イスラエル人のクラスメイト、レイ君親子と一緒になった。ふさふさのこげ茶の髪をマッシュルームカットにし、くりっとした目。スパイダーマンやスーパーマンの衣装みたいな洋服がお気に入りでよく着ているレイ君。男の子にしては落ち着いたタイプだ。

彼の送り迎えをしているのは、お父さん(といっても、別に珍しいことではないのだが)。髪を長く伸ばして一つにしばっていたり、ポンチョを着ていたりと、周囲のアメリカ人とはちょっと違った雰囲気のファッションをしている。そしてお父さんとレイ君がしゃべっている言葉は、英語ではない。「What language do you speak?」と聞いてみると「ヒブルー」、つまりヘブライ語だという答えが返ってきた。

いつもは「お母さん、行かないで」と言って別れ際にぐずる娘なのだが、レイ君と登園が一緒になったときだけは、別人のようにさわやかだ。レイ君のほうをちらちら見ながら、手をつないで一緒に歩き、「あ、お母さん、バイバイ」とあっさり手を振る。レイ君もうちの娘と一緒に登園すると、すんなりパパとお別れできるようで、その様子を親たちはにんまりと眺めるのだった。 

ふたりはクラスで一番の仲良しなのだが、それぞれ母国語はヘブライ語と日本語だし、英語はほとんど話せない。担任のミス・ジェニーに「あの子たちはどうやって話をしているのかしら?」と質問すると「I don"t know. It"s the mystery.」と苦笑していた。ふたりは黙々と遊んだり、お昼ご飯のときには隣に座って一緒に食べたり、ふたりでくっついているだけで楽しそうだ。まあ日本人同士でも、なんとなく波長が合う友達とはそういうものかもしれない。

もちろんアメリカ人のお友達だって、積極的に「遊ぼうよ」などと声をかけてくれたり、別れ際には「Give me a hug.」と言って両手を広げて待ち構えてくれたりと、優しく接してくれている。ただ、アメリカ人の子どもは、次から次へと英語でいろいろ話しかけてくるので、ほとんど英語が話せないうちの娘にとっては、会話が一方通行になってしまいがちで面白くないのだろう。レイ君と一緒にいるほうが、居心地がいいのかもしれない。

レイ君と娘の様子を見ていると、「言葉がそんなに流暢にしゃべれなくても、波長が合えば友達になれることがあるのだな」とわかる。外国人の子どもだって、うれしいときには笑うし、眠いときにはぐずり、おやつには目の色を変えて飛びつく。当たり前だ。同じ人間なのだから。

プロフィール

山本美芽

音楽・ノンフィクションライター。中学校教諭、養護学校教諭からライターに転身。現在は音楽と教育をテーマに執筆活動を行う。著書に「りんごは赤じゃない 正しいプライドの育て方」「子どものセンスは夕焼けが作る」など。2006年3月より米カリフォルニア州在住。1児の母。

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