私大の「機能別分化」にグローバル対応を追加 求められる役割とは‐斎藤剛史‐

私立大学などの改革を推進するため文部科学省は、2014(平成26)年度「私立大学等改革総合支援事業」の選定校を決定しました。私学補助金などを上乗せして交付するものですが、その内容を見ると、文科省が私立大学全体をどのように再編したいのかという狙いをうかがうことができます。私立大学の役割は今後、どのようなものになっていくのでしょうか。

大学改革のため文科省は「スーパーグローバル大学」や「大学教育再生加速プログラム」などを指定していることは当コーナーでも紹介してきました。しかし、スーパーグローバル大学が世界に通用する大学を選定し、大学教育再生加速プログラムが教育改革の先進的な取り組みを支援しているのに対して、「私立大学等改革総合支援事業」は主に地方や中小規模の私立大学などを中心に据えて、数種類のタイプに機能別分化を図ることで、私立大学全体を再編していこうという取り組みと言えます。実際、同事業には私立大学505校、私立短期大学238校が応募しました。2014(平成26)年度の私立大学数は603校、私立短大数は334校などですから、ほとんどの私立大学・短大が同事業に応募したことになります。これに対して、大学319校、短大92校、高専1校が同事業に選ばれました。選定された大学などには、私学補助金が1割程度増額されるほか、施設・設備などの整備にも補助金が出ます。

同事業は、私立大学を機能別にタイプ分けしています。2013(平成25)年度は「大学教育質転換型」(大学教育の質向上)、「地域特色型」(地域の発展を支える)、「多様な連携型」(産業界・他大学などとの連携)の3タイプで募集が行われました。さらに2014(平成26)年度は「教育の質的転換タイプ」「地域発展タイプ」「産業界・他大学等との連携タイプ」に加えて「グローバル化タイプ」を新設し、計4タイプとなっています。私立大学全体を、学生の教育に重点を置く大学、生涯学習など地域との連携に重点を置く大学、産業界などとの連携に重点を置く大学など、各大学の特色に応じて私立大学全体の機能別分化を推進しようという狙いがうかがえます。また、グローバル化への対応も新たな機能別分化の柱の一つとしようとしているようです。
選定された学校(複数選定されている学校があるため延べ数)は、「教育の質的転換タイプ」が231大学・82短大、「地域発展タイプ」が127大学・28短大、「産業界・他大学等との連携タイプ」が55大学、「グローバル化タイプ」が100大学・3短大などとなっています。このうち「グローバル化タイプ」では、国際基督教大学などスーパーグローバル大学にも選ばれたような大学や大規模大学だけでなく、地方の私立大学や定員3,000人未満の中小規模の私立大学も多く選ばれていることが注目されます。

選定された私立大学・短大は、それぞれのタイプを自校の特色として打ち出していることになります。大学志望者やその保護者にとって、どのような私立大学が選定されているか、どのようなタイプに位置付けられているかを見れば、志望校選びの参考にもなるのではないでしょうか。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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