手を出しすぎていませんか?[やる気を引き出すコーチング]
先日、あるレストランで食事をしていましたら、隣の席に小学校低学年ぐらいのお子さんを連れたご家族がいらっしゃいました。和やかに食事をしている最中、お子さんがはしゃぎすぎたのか、テーブルの上に食べものを落としてしまいました。そればかりか、持っていたフォークまで床に落としてしまいました。
さて、こんな場面で、あなたならどう対応しますか? 小さなお子さんがいらっしゃるご家庭では、よくある状況かもしれませんが、わたしがこのあと見た光景は、なかなかお目にかかれないお母さんの姿でした。
子ども自身にまず考えさせる
わたしがよく見かける光景というのは……
「もう、何やってるのー? だから、『じっとして食べなさい』って言ったでしょう」と叫ぶお母さん、顔をしかめながら、親がテーブルの上の食べものを拾う、テーブルを拭く、「自分で拾いなさい」と言ってフォークを拾わせる、あるいは、「すみませーん」とお店の人を呼んで片づけをお願いする、「もう、良い子にしててよ!」とトドメをさす、こんなところでしょうか。
ところが、このお母さんの対応は、このどれにもあてはまりませんでした。
「あら、どうしたの?」
きわめて冷静に問いかけました。
「落としちゃった」
「うん、どうするの?」
(うわー! この、お母さん、拡大質問〔相手の考えを引き出す質問〕を投げかけたよ!)わたしは、こっそり観察しながら、内心、とても感動していました。
お子さんは、少し考えて、落ちた食べものをお皿に戻し、自分でフォークを拾いました。
(おお!!)と驚いているわたしの横で、フォークを持って立ちあがったお子さんは、お店の人のところまで言って声をかけました。
「すみません、落としちゃったんで、かえてください」
(す、すばらしい! そこまで自分でできるんだー!)
そんな我が子の行動を見守っていたお母さんは、お子さんがテーブルに戻ってくると、
「新しいのにかえてもらえてよかったね。これからはどうする?」
(うわー! さらに、拡大質問ですか!? お母さん!)
「落とさないように食べる」
「そうね。それだとお店の人にも迷惑かけないし、お母さんも安心」
わたしは、心の中で大きな拍手を贈っていました。
失敗こそ問題解決力を伸ばす機会
子どもが何かミスをしてしまった時、困っている時こそ、問題解決力をつけさせる絶好の機会ではないでしょうか。手を出さず、
「どうしたの?」
「どうしたら良いかな?」
と考える機会を与えたいものです。
子どもが粗相をすると、つい、手を出してしまいたくなります。たしかに、こちらが対応したほうが早いと思ってしまうこともあります。
「はい! お片づけしてー。もう帰るよー」と言いながら、子どもが出したおもちゃを親がどんどん片づけていくかたも意外に多いですね。これを続けるとどうなるでしょうか?
≪結局、後始末は誰かがしてくれるもの≫と子どもは無意識に感じるようになってしまうのです。わたしは高校生と話していて、それをとても感じます。
「どうしたいかわかんないしー」
自分の進路選択なのに、まるで他人事のようなことを言います。うまくいかないと、
「言われた通りにやってもダメだった」
と責任を転嫁します。自分の課題を自分で考え乗り越えていく力が弱いように感じます。
手を出されるとかえってやる気になれない
わたしの友人が、ついにスマートフォンを使い始めましたが、操作になじめず、もたもたしていると、隣からお子さんが指を出してきて教えてくれるそうです。
「これがもう! ほんっとにムカつく!」と友人は言っていました。せっかく自分で覚えようといろいろ試しているのに、横からあきれ顔でつつかれると、イライラするのだそうです。
日頃、逆の立場のお子さんも同じ気持ちなのかもしれませんね。しばらく、手を出さず、自分で考え、自分で試させてみる時間を増やしてみるのはどうでしょう。