飛ばし読みや斜め読みをしている様子で、肝心の質問の答えを読み取り損なう[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小4女子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま
質問
普段から本はよく読むほうですが、飛ばし読みや斜め読みをしている様子です。肝心の質問の答えを読み取り損なっていたりします。注意力がなく、落ち着きのない性格もあるかもしれません。
小泉先生のアドバイス
読むスピードの出しすぎや「速読」と「精読」の使い分けに注意。
文章の読み方には、「速読」と「精読」の2つがあります。「速読」は文章全体を読む時などの読み方で、ある程度のスピードを維持しながらあらすじや筆者のイイタイコトをとらえていきます。「精読」は、問いや、問いに関連した問題文の部分を読む時の読み方で、傍線部とその前後のつながりをしっかりおさえていきます。
もちろん、文章全体を読む時でも難しい箇所では、「速読」から「精読」に切り替える必要があります。文章の展開がよく理解できていないのに、読むスピードを落とさずに進んでしまうとそれこそ道に迷ってしまうでしょう。この2つの読み方を上手に使い分けできないと、安心して文章を読み進めることはできないのです。たとえば、自動車で普通の道を時速40キロで走るのが「速読」だとしたら、カーブを曲がる時や車庫に入れる時が「精読」です。このくらいの差があるのに、その違いを実感できずにいたら、駐車場で隣の車にぶつけてしまうのもしかたないですよね。
さて、「速読」の速さですが、これは読み手によって異なります。時速40キロの人もいれば、高速道路の走行時のように、80キロで飛ばせる人もいます。読みが速ければ問題を解く時間が増えるのでそれだけ有利ですが、むやみにスピードを出せば、当然、“読みまちがい”という事故につながります。お子さまの場合も、明らかにスピードの出しすぎです。普段から本をよく読まれるので、飛ばし読みや斜め読みのクセが付いてしまったのかもしれません。
自分に適した「速度」のスピードをわからせるには、文章を「音読」することから始めるとよいでしょう。音読することによって、読みまちがえや読み飛ばしをすることなく落ち着いてしっかり文章を読む習慣を取り戻せます。声に出して読むわけですから、いくら速く読もうとしても限界がありますし、読み飛ばしたらすぐにわかってしまいます。しばらくこの音読での読みを続けてそのスピードに慣れてきたら、徐々に「黙読」に切り替えていきましょう。その際、大切な箇所に線をひく、メモをとるなどしながら読ませると読み方がまた粗くなるのを防げると思います。もちろん、あまりにも読みが遅すぎると試験では不利ですから、徐々にスピードを上げていく必要はあります。「速く」しかも「正確」にというのはなかなか難しいのですが、「集中力」を上げることにより可能になっていくと思います。
それからもう1つ。お子さまは、「速読」と「精読」の使い分けについても心配なところがあるかもしれません。「精読」ができているかどうかは、傍線部とその前後のつながりがきっちり読めているか、すなわち「文脈」をしっかりとらえているかを確かめればわかります。たとえば、傍線部における登場人物の気持ちを、そこだけで説明しようとしていませんか。それでは、文脈をつかんでいるとはいえません。文章の全体の中での傍線部、そして傍線部とその前後の流れを含めて、その時の登場人物の気持ちを理解する必要があるのです。
以上、「読み」についてお話ししてきましたが、「速読」や「精読」がしっかりできていないお子さまは少なくありません。まずは「読む力」を付けることが重要なのに、選択肢や記述問題の解き方など、設問関係の解法やテクニックばかりに目を奪われてしまっていることが多いようです。そのような皆さんは、“設問は問題文の理解度を測るためにある”くらいに考えて、問題文の理解にもっと力点をおくべきだと思います。