絶滅危惧種と動物保護活動について知る

2012年4月、佐渡島で、放鳥されたトキが産んだ卵からヒナが誕生し、野生下でのふ化は36年ぶりと大きな話題になりました。また、8月には環境省から、ニホンカワウソが絶滅したことが発表されました。そこで今回は、こうした出来事を入り口に、中学入試でもよく出題される動物の絶滅や保護に関する事柄について解説していきましょう。



クイズde基礎知識

トキについて正しいのは?/「絶滅危惧種」に指定されたのは?/
「絶滅種」に指定されたのは?/1年間に何種くらいの生物が絶滅している?


時事問題を学ぶきっかけになる題材をクイズ形式でご紹介します。基本情報の整理に、親子で時事問題について話題にするきっかけに、入試・適性検査対策に、お役立てください。

Q1

トキについて述べた以下の文のうち、正しいのは?


A.トキはもともと佐渡島などの限られた地域にしか住んでいなかった
B.トキは江戸時代には、田や畑を荒らす「害鳥」とされていた
C.韓国からトキをつれて来て、人工繁殖が行われている


A1 正解は 「B.トキは江戸時代には、田や畑を荒らす「害鳥」とされていた」 です。


佐渡トキ保護センターホームページより
http://www4.ocn.ne.jp/~ibis/

トキは学名を「ニッポニア・ニッポン」といい、約100年前までは、日本の多くの地域で普通に見られる鳥でした。江戸時代の浮世絵にも、トキを題材にしたものが見られます。

しかし、田や畑を踏み荒らしたことから害鳥とされ、美しい羽が商品として取引されたこともあって、鉄砲でどんどん撃ち殺されていきました。その結果、急速に数が減っていき、佐渡島でしか見られなくなってしまいました。その後保護活動が始まり、1952年には特別天然記念物に指定されます。1981年には、生き残った5羽がトキ保護センターで飼育されるようになりましたが、次々に死んでいき、2003年、最後に残った「キン」が死んで、日本産のトキは絶滅しました。

その一方で、再びトキが日本の空をたくさん舞う日が来るようにと、中国からトキを連れて来て人工繁殖が行われ、2008年から自然な環境への放鳥が始まりました。そして、2012年4月、放鳥されたトキどうしのつがいからひなが誕生したことが確認されたのです。

このように、日本では絶滅してしまった動物を外国から連れて来て人工繁殖する取り組みは、以前、コウノトリでも行われました。以前、日本各地で普通に見られていたコウノトリは、人間によって捕まえられたりすむところが奪われたりしたため、1986年に絶滅してしまいました。しかし、中国やソ連などから譲り受けたコウノトリの人工繁殖に成功し、豊岡市のコウノトリの郷公園で2005年には自然に放たれて、その後、野生で産卵し、巣立ったことが確認されています。


Q2

2012年8月、レッドリストで日本の「絶滅危惧種」に指定されたのは?


A.ハマグリ
B.アサリ
C.ホタテ


A2 正解は 「A.ハマグリ」 です。


レッドリストとは、姿を消してしまった「絶滅種」や絶滅の恐れのある「絶滅危惧種」などをまとめた一覧のことで、IUCN(国際自然保護連合)が作成する世界規模のレッドリストをもとに、世界各国でもレッドリストが作成されています。日本では環境省が専門家でつくる検討会の意見に基づいて取りまとめ、約5年ごとに見直しています。

2012年8月の見直しによって新たに加わった絶滅危惧種のひとつにハマグリがあります。ハマグリは日本各地の河口などに生息し、昔から日本人は食材として利用してきました。しかし、埋め立て工事などで環境が悪化したことから数が急減してしまったのです。現在は食用として売られているハマグリの多くは中国や韓国から輸入したシナハマグリや、国内の外洋にも生息するチョウセンハマグリで、潮干狩りでもそうした外来種を放しているケースが多いといわれます。


Q3

2012年8月、レッドリストで日本の「絶滅種」に指定されたのは?


A.ニホンカモシカ
B.ニホンカワウソ
C.イリオモテヤマネコ


A3 正解は 「B.ニホンカワウソ」 です。


ニホンカワウソは、川や砂浜などの近くに生息する哺乳類で、かつては日本各地に生息し、魚やカニなどを食べて暮らしていました。人間にとって身近な存在で、河童(かっぱ)伝説のもとになったともいわれています。


1974年に撮影されたニホンカワウソ
写真提供・高知新聞社

しかし、毛皮が保温力に優れていることなどから、明治時代から大正時代にかけて人間の手でどんどん殺されて数が減り、昭和の初めころには捕獲禁止となり、1965年には特別天然記念物に、後には絶滅危惧種に指定されました。それでも数が増えることはなく、北海道では1955年、本州より南では1979年を最後に目撃情報が寄せられることはありませんでした。そこで2012年8月に、絶滅種に指定されたのです。

この他、日本では1905年に、ニホンオオカミが人間に捕まえられたことなどが原因で絶滅しています。また、世界中を見渡すと、フクロオオカミ、ペルシャトラ、オオウミガラスなども人間の活動によって絶滅しました。インド洋のモーリシャス島に生息していたドードーは、16世紀初めに人間によって島が発見されてから、わずか200年足らずで絶滅してしまったといわれます。


Q4

1975年以降、1年間に何種くらいの生物が絶滅しているといわれる?


A.4百種
B.4千種
C.4万種


A4 正解は 「C.4万種」 です。


地球はこれまで何度か、生物の大量絶滅に襲われました。その原因ははっきりとわかっていませんが、気候の変化などによって引き起こされたと考えられています。ただし、こうした自然の影響による絶滅は数万年~数十万年もかけて進んだため、絶滅する生物の数は、平均すると1年間に0.001種程度だったと考えられています。

しかし、近年、トキやニホンカワウソなどのように、人間の活動によって引き起こされている生物の絶滅は、以前とは比べものにならないほど急速に進んでおり、環境省調べでは、1975年以降、1年間に4万種程度の生物が絶滅しているといわれています。


環境省ホームページより
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h22/html/hj10010301.html#n1_3

また、国際自然保護連合(IUCN)発表のレッドリストによると、世界では今、絶滅危惧種(絶滅しそうな種)が2万以上あるとされています。それは、私たち人間の危機でもあります。私たちが生きていくために必要な酸素は植物によってつくり出され、その植物が育つための栄養は、動物たちの死骸が微生物によって分解されることでつくり出されます。地球上の生物は、互いにつながり合って生きているのです。生物の絶滅が進むと、こうしたたくさんの生物のバランス(生物多様性)が崩れ、私たちも生きていけなくなってしまいます。生物を絶滅の危機から救うのは、私たちのためでもあるのです。


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