国語の問題で深読みをすることがよくあります[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6男子(性格:強気タイプ)のお母さま


質問

国語の問題で深読みをすることがよくあります。深読みをするのが大事な時もありますが、考えすぎて違う方向に行くこともあり、難しさを感じます。


小泉先生のアドバイス

「細かい読み」と「大きな読み」という2つのアプローチで修正をはかる。

国語でよく言われる「深読み」とは、筆者が設定した登場人物の心情や物語展開とは違った方向で、生徒が物語を理解してしまうことです。いわば生徒が勝手に物語を作ってしまうことですから、わたしはこれを「妄想」と呼んでいます。物語文を「深く読む」ことは大切ですが、自分勝手に「深読み」するのは禁物で、点数が伸びない大きな原因になります。しかしながら、どうしても「深読み」してしまう生徒(「深読みクン」)は多く、「へー、そんなふうに考えるのか!」とこちらが驚くほどの迷解釈をする者もいます。

先日も、おもしろい「深読み」がありました。
物語のあらすじとしては、「A君は仲良しのB君に、お古のシャープペンをあげる。家が貧しいB君は大いに喜ぶが、その姿を見てA君はある思いを持つ。哀れみを感じたのだ。そして、B君もA君の気持ちを感じて、二人の間はぎくしゃくする。しかし、ここでA君がB君を『勇敢な友人』として見直す出来事が起こり、二人の仲は元に戻る。」というものでした。典型的な「友人・友情」の物語です。

さて、ここでの設問は、「『ある思い』とはどんな気持ちですか」というものでした。ここでの正解は「哀れみを感じた」ですが、我が生徒の「深読みクン」は、「シャープペンをあげて惜しいと思った」と答えました。おそらく「自分なら惜しいと思う」という気持ちにより、そのような迷解答が出たのでしょう。そして、一旦そう思い込むと、あとで仲良くなることも「B君を見直したので、シャープペンをあげるのが惜しくなくなった」などと、つじつまを合わせてしまうのです。

このような深読みをする生徒には、もっと文脈に沿った「細かい読み方」を教えたり、逆に「大きい読み方」を教えたりして正しく読めるように指導します。まず、文脈に沿った読み方ですが、たとえば今回のA君とB君の話であれば、その時のA君の視点がどこにあるかを考えることで、A君の気持ちの移ろいを探ることが可能です。つまり、その時のA君の視点(注意)がシャープペンにあれば、それをあげたことを惜しむことにつながるでしょう。しかし、B君の喜ぶ姿に視点(注意)があれば、やはりB君に対する何らかの気持ちであると類推できます。この物語でも、確かにA君はB君の様子に注目しているように書いてありました。やはり、B君に対する「哀れみ」がこのときのA君の気持ちになるのです。

もう一つの考え方としては、もっと大きく「友人・友情」のテーマから考えることです。つまり、「友情」とは、お互いが「対等」でなければ成り立ち得ないものであり、それが崩れた瞬間にどちらかがどちらかを「うらやんだり、さげすんだりする」ものであるということです。この「対等」という感覚は、今回のように「一方は金持ち、一方は勇敢」という、質的に違ったそれぞれの優位性でもかまいません。物語文に頻出するこのようなテーマは、普遍的なものでありひとつの「真理」といえます。そして、物語とは人間社会における「真理」を読者に伝えるためのものでもありますから、これらを知識として持つことは、自然と国語力のアップにもつながることになります。まだ知らなかった生徒にはそれを教えることで、次からは同じような「深読み」が避けられるようになると思います。

以上、「細かい読み」と「大きな読み」という2つのアプローチは、いずれもマスターすべき読解法であると思います。「深読み」をしてしまった場合は、これら2つのアプローチで修正をはかってください。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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