スマホ普及で? 犯罪に無防備な子ども増える-斎藤剛史-

いわゆる「出会い系サイト」に起因する子どもの犯罪被害が減少する一方、一般のコミュニティーサイトで犯罪被害に遭う子どもの数が増えているという警察庁の調査結果を以前お伝えしました。その後の分析で、スマートフォン(スマホ)の普及が犯罪の手口だけでなく、子どもたちの意識や行動にも変化を及ぼしていることがわかりました。従来型の携帯電話からスマホへの移行は、どんな変化をもたらしたのでしょうか。

2014(平成26)年の上半期(1~6月)に出会い系サイト以外の一般のコミュニティーサイトに起因する事件の検挙件数が948件(前年同期比10.4%増)、被害に遭った子どもの数も698人(同16.7%増)と増えていることは、お伝えしたとおりです。その後、警察庁は各事案の内容を詳しく調査し、その結果(外部のPDFにリンク)を公表しました。
それによると、犯罪被害に遭った子どもたちのコミュニティーサイトへのアクセス手段は、スマホを含む携帯電話が89.8%(前年同期は90.8%)に上り、しかも携帯電話使用者のうちスマホ使用者は86.6%(同50.5%)を占め、過去最多となりました。どうやらコミュニティーサイトによる犯罪被害の増加とスマホの普及は無関係ではないようです。

次に、携帯電話使用者に占めるスマホの割合が0%だった2010(平成22)年上半期(前期)と、スマホ使用者が最多となった14(同26)年上半期(後期)とを比べると、逮捕された被疑者が子どもたちのメールアドレスなどを知るために利用したのは、前期はサイト内の「ミニメール」が94.6%とほとんどを占めていました。ところが後期は、「サイト内の掲示板等」が57.7%、「チャット・トーク等の機能で連絡(会話)」が22.7%、「ミニメール」が15.2%などとなっており、子どもたちの連絡先を知る手段が多様化し容易になったことがうかがえます。
一方、犯罪の場となったコミュニティーサイトに対するイメージを被害に遭った子どもたちに聞いたところ、前期は「友達・メル友を探すサイト」が28.5%、「ゲームサイト」が24.3%、「出会い系サイト」が15.9%などだったのに対して、後期は「友達・メル友を探すサイト」が34.1%、「出会い系サイト」が28.1%、「コミュニティサイト」が27.2%などで、最初から出会い系と認識してアクセスした子どもが約3割もいます。他人と知り合うためのサイトに対する警戒心など意識の壁をスマホは低くしたようです。
また、サイトの利用などについて「一般的な注意を受けていた」「具体的な注意を受けていた」など何らかの注意を保護者から受けていた子どもの割合は、スマホがなかった前期は23.4%でしたが、後期は47.1%となっています。保護者の意識は徐々に向上しているようです。しかし、注意を受けていても被害に遭う子どもが増えているとも言えます。スマホはサイトへのアクセスを容易にしただけでなく、ネットで他人と知り合うことについての意識も変化させていることを保護者はもっと知っておくべきでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

子育て・教育Q&A