子どもの気になる性格にどう対応すべき?【後編】短所は子どもの長所になる

「なぜ、この子はこんなに頑固なの」「どうしていつものんびりなのかしら」など、子どもの気になる性格に保護者の皆さんはどのように接していますか。前回に引き続き、白百合女子大学の秦野悦子先生に上手なお子さまへの関わり方を教えていただきました。



短所を長所だととらえる発想の転換を!

お子さまには長所と短所、それぞれたくさんあると思います。ただ、お子さまの短所は特に気になってしまうのではないでしょうか。しかし、保護者が気になる短所というのは、保護者の発達期待とのズレであることが多いと思います。「もう○歳なのだから静かに話を聞けるようになってほしい」「年長だから誰にでも大きな声であいさつできるようになってほしい」など、保護者のこんな子どもであってほしいという願いと現実がかけ離れていることに、焦りやイライラを感じているのです。次第に、「うちの子は、こういう性格だから仕方ない」と考えるようになり、その一面しか見えないようになり、親子関係が知らないうちに固定化してしまう可能性があります。たとえば、保護者が「うちの子はわがまま」という枠組みを持ってしまうと、友達とのケンカのシーンが印象に残るのに対し、小さい子に本を読んであげている優しい姿が目に入らなくなるようなことが起こります。

そこで、提案したいのは、発想の転換です。お子さまの短所は、長所でもあるととらえてみましょう。たとえば、頑固すぎる子であれば、粘り強く、諦めない強い心を持っている子という風に考えることができます。また、おしゃべりが止まらない子は、意見をはきはき伝えられる子だと考えられます。気になる点にもよい面があると発想の転換をし、お子さまに接してあげることで、個性や性格をより深く理解することができるはずです。



よいところはほめ、自信を与える

一方、お子さまの長所は、言葉に出してほめてあげることが大切です。子どもは、自分のよいところには、なかなか気付けません。人からほめてもらうことで自信がつき、ほかのこともがんばろうという意欲がわいてきます。ほめる際にはできるだけ具体的に伝えてあげるとよいでしょう。たとえば、自分で意見を伝えるのが上手なお子さまなら、「○○ちゃんの意見はとても面白いね。お母さんびっくりしちゃうわ」と言ってあげるのです。お子さまは、「自分の意見を言うことは、人から認められることなんだ」と気が付くことができます。また、ほめるのは、お子さまの能力でなくても構いません。洋服のコーディネートが素敵、笑顔が格好良いということでも構いません。

お子さまをほめる際に注意したいのは、幼児期以降は、その年齢ならできて当たり前のことをほめても、お子さまの心には響かないことです。やっとできたことをほめてあげると、子どもの心に届きます。お子さまの長所は保護者には案外見えにくいので、周囲の人に聞いてみるとよいでしょう。祖父母やママ友、保育園・幼稚園・学校の先生に聞くとよいですね。視点が変わると、子どもの違う面が見えることがあります。



子育ては答えがないから気長に対応を

子育てには唯一の正解がないため難しく、不安になることも多いと思います。今日はよくできたのに、次の日はまた一からなんてこともありますよね。「今はこんな感じかなー」とお子さまの性格に気長に付き合っていってほしいですね。お友達のお子さんと比較して「うちの子は○○だ」と思ってしまうこともあるかもしれません。でも、発達には個人差があり、ある程度、そろってくるのが小学4年生くらいです。幼ければ幼いほど差があるため、あまり心配しすぎないでほしいですね。

お子さまの気質を無視した押しつけになってしまうと、お子さまはとても生きづらくなってしまいます。お子さまは、保護者の願いに敏感で、保護者の望むような子になろうと、無理にそのように振る舞うことがあります。しかし、本来の自分の特性にそぐわない行動には無理があり、思春期に大きな反動となって表れてしまうこともあります。

ただ、周囲のお子さまに迷惑を与える場合や、気になることへの対処法に困る場合は、幼稚園や保育園の先生など子育ての専門家に相談するとよいでしょう。


プロフィール


秦野悦子

白百合女子大学教授。専門は発達心理学(言語発達、障害児のコンサルテーション、子育て支援)。臨床発達心理士。わかふじ幼稚園副園長。主な著書に『心と体が育つ親子遊び』『最新しつけ大百科』(以上ベネッセコーポレーション、編著)などがある。

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